
映画月刊誌「映画秘宝」の編集長が、自身の出演したラジオ番組の内容へ否定的な投稿を行ったTwitterユーザーに対して"恫喝DM"を送信したことが問題となった。被害者がDMのスクリーンショットを公開したことで「映画秘宝」への批判が高まり、同誌公式アカウントは25日、事実を認めTwitter上で謝罪した。
問題の発端になったTBSラジオ「アフター6ジャンクション」では26日の放送で、パーソナリティーの宇多丸とフリーアナウンサーの宇垣美里が自身の見解を語った。問題のDMについて、宇垣アナが「あれは脅迫」などと痛烈に批判する場面もあった。
「あれはまごうことなき脅迫」宇垣アナが厳しく指摘
「映画秘宝」編集長の岩田和明氏は、5日に「アフター6ジャンクション」にゲスト出演したが、あるリスナーが、女性ゲストがいないことなどについて否定的な意見をツイートした。岩田氏はこのリスナーのTwitterアカウントに対して、「今、心の底から深く深く心が傷付き、胸が張り裂けそうなほどショックを受けて、死にたいです」「あまりのショックの大きさから、何も手が付けられない状態にいます。死にたい」とするDMを送信。被害を受けたユーザーがDMのスクリーンショットを撮ってTwitter上で公開したため、「映画秘宝」への批判が集まっていた。
【お詫び】
— 映画秘宝 (@eigahiho) January 25, 2021
この度は、大変お騒がせしてしまい、誠に申し訳ございません。
添付のあるまじき悪質なDMを、本誌公式ツイッターアカウントより、いち個人の方へ送付した件につきまして、心よりお詫び申し上げます。 pic.twitter.com/1XbEbWdTW7
「アフター6ジャンクション」では26日の放送冒頭でこの件に触れ、宇多丸が経緯を説明しつつ、「擁護できない」と岩田氏を非難した。さらに宇多丸がDMの内容について「一見、下に出るようでいて一種の脅し」ではないかと説明した場面では、宇垣アナが「あれは脅迫です」と明言。さらに自身の経験談も踏まえながら以下のように語り、岩田氏に苦言を呈する場面があった。
幾度か私はああいう、「もう死んでしまうかもしれない、あなたのせいで」っていうようなものを受け取ったことがあるんですけど。すごい怖いですよ。「殺してやる」より怖いと思います。なぜなら、止められないから。その人の命なんて責任とれないから。僕が死んでしまう、私が死んでしまうという方は(大抵)死なないんだけど、でも今回も同じように死なないとは限らないから、こっちは下手に出るしかなくて。あれはまごうことなき脅迫です。
また、端緒となった番組への批判的なツイート投稿について、宇多丸は省みるところがあるとし、自身や番組が常に変わっていかなければならないという考え方を示した。
“DVでよく見る表現”という指摘「身体的暴力以上のダメージも」
Twitter上では自死をほのめかすような岩田氏のDMの内容について、DVでよく見る文言という指摘があった。恋人間の暴力、いわゆる“デートDV”について認定NPO法人エンパワメントかながわなどが全国規模で学生を対象に調査した「デートDV白書vol.5」(平成29年)によると、交際経験のある女性の11.4%、男性の5.5%が「別れたら死ぬと言う」という精神的暴力の被害経験があると回答している。
同法人理事長の阿部真紀さんによると、この数字はデートDV予防講習を受けた学生を対象としているため、必ずしも正確とはいえないものの、自死をほのめかす精神的暴力の被害が多いことは間違いないと指摘した。
阿部さんは、このような問題は「ケースバイケース」であり、今回の件について具体的な評価はしかねるという前提で、一般論として、「死んでやる」という言葉は宇垣アナの言うように「殺してやる」より強いといっても過言ではない表現だという。デートDVのような交際関係にある場合では、そのような表現について、相手をコントロールする力が強く、身体的暴力以上に恐ろしいダメージを与える可能性があると、自身も説明することがあると明かした。
「別れたら死ぬ、と言われた」という被害相談を受けた際には、法人としては、別れるのに相手の承諾は要らないという考え方を啓発していると説明。ケースの内容にはよるが、デートDVの精神的暴力の被害者に対しては、「本当に万が一のこと」だと前置きしつつ相手が亡くなるようなことがあっても、「あなたの責任ではない」と伝えるとのことだった。