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コロナ禍における「学校」、そして「不登校」「ひきこもり」〜ステイホームで突然「フロントランナー」となった在宅人たち。の巻 - 雨宮処凛

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 コロナ禍で変わったことはたくさんあるが、もっとも変わったのは、「在宅」をめぐるあれこれだろう。

 「ステイホーム」が呼びかけられる中、多くの企業が在宅勤務を実践し、そのうちのかなりの割合が意外とできること、問題ないことを知った。

 「これまでの長い会議はなんだったんだろう」「満員電車に乗らないことが生活の質をこれほどあげるなんて」「リモートの方がずっと効率よく仕事ができる」

 そんな声を聞いた一方、「家が狭い上、子育て中だから在宅ワークどころじゃない」という意見もあれば、「テレワーク中なのに、ハンコひとつもらうために出社しなくちゃいけない」という、令和の時代に昭和が紛れ込んだような話も聞く。一方で、「正社員はテレワークできるけど、派遣社員は全員出社させられている」などの待遇格差も耳にする。

 私自身、取材や打ち合わせ、会議の多くがリモートとなり、最初は少し戸惑ったものの、今はその便利さの恩恵を受けている。しかし、コロナ以前は取材や会議、打ち合わせのあと、気心の知れた編集者や活動仲間らと食事をし、いろんな話をすることで「今度こういうことをしよう」と新たな企画や活動が生まれてもいたわけで、そういう時間がないことは、やっぱり少し、寂しい。

 寂しいけれど、そういう時間そのものが、わずか一年でもはやリアリティがないくらいに「過去のもの」なってしまっている感覚もある。

 そんなふうに日本中、世界中の人々が「在宅」になる中、「ほっとした」「自分がおかしいと思わなくなった」「時代がやっと俺に追いついた」と口にする「在宅のプロ」たちがいる。それは不登校やひきこもりの人々だ。

 これまで、外に出ないこと、学校や会社やバイトなど、「子どもなら/大人なら行くべき場所」に行かないことで、時に白い目で見られ、時に「問題視」されていた人々が、コロナ禍で突如「見習うべきライフスタイルの人」となったのだ。しかもこの一年間は、在宅しているだけで「感染拡大」を防ぎ、「医療崩壊」を防ぐ活動をしていることとなる。能動的に「社会貢献」している形になったわけである。同じことをしてただけなのに、ある日突然、「コロナ時代を先取りしたフロントランナー」となったのだ。

 このことを寿ぐ人もいれば、戸惑っている者もいる。外に出られないだけでイライラしている「在宅の素人」の家族に、ストレスをためる者もいる。また、これまでは日中、家にいるのは自分だけだったのに、突如として家族全員が自宅のパソコン前でバリバリ仕事をする姿を見せつけられて劣等感を刺激され、「家にいたくない……」と吐露する人もいれば、「平時でも何もできないのに、コロナ禍でも何もできない自分」を責め続けている人もいる。

 そんな中、昨年3月には突然の全国一斉休校。これにより、学校も子育て世帯も大パニックになったわけだが、子どもの休校のために仕事を休む親への給付がまた混乱に拍車をかけた。フリーランスへの給付がなぜか企業に勤める人の半分だったり、当初は風俗業などを除外するという職業差別つきだったり。親が仕事に行けなくなるだけでなく、子どもが家にいることで食費が増えて家計が大変、家族が狭い家で顔を突き合わせていると喧嘩が絶えないなどの悲鳴も聞こえた。

 休校で浮き彫りになったことがある。

 それは通信環境の格差だ。

 コロナ禍で世界的にオンライン学習が推進され、海外ではかなり早い段階から環境が整備されたところもあった。日本でも、大学でオンライン授業が始まった。

 「大学だけでなく、小中学校、高校の授業もオンラインでやればいい」という声があちこちから上がった。

 が、自宅にパソコンとネット環境があり、オンラインでいくらでも勉強できる子がいる一方で、この国にはパソコンやネット環境がない家庭の子もいる。

 NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむと専門家による調査チームが2020年7月に実施した調査によると、中学生以上の子どもがいるシングルマザー家庭の36.8%が自宅にパソコンやタブレット端末がなく、ネット接続のできない世帯や通信量が制限されている世帯は合わせて30%を超えるという(朝日新聞2020/9/11)。

 そんな家庭があることに想像もつかない人が「オンラインで」と言う時、貧しい家庭の子どもたちは排除されている。こんなことが繰り返されることで、学力には歴然たる差がついてくる。塾や習い事もそうだ。勉強できる、できないは本人の努力という前に、環境的に努力することもできない子どもたちがいることを、決して忘れてはいけない。コロナ禍は、ある意味でより格差を増大させているのだ。

 さて、この一年で不登校やひきこもりの立ち位置が変わったように、「学校」そのものの意味合いも変わっていると私は思う。

 在宅で仕事をする大人が増えたように、子どもだって在宅で学習するという選択肢があっていいのだし、それはコロナ禍における「ニューノーマル」になっていく可能性がある。

 「いや、勉強以外に人間関係や集団行動などの学びがあるからこそ、リアルに学校に行くことは必要なのだ」という声もあるだろう。

 が、その人間関係でいじめに苦しみ、あるいは教師からの暴言暴力に傷つけられ、自ら命を絶つ子どもたちは後を絶たない。何も学校をなくせと言っているわけではない。だが、しんどいと思った時に在宅に切り替えられるようなシステムがあったら、どれほど救われる子どもがいるだろう。要は選択肢の問題なのだ。

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