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グリーン成長戦略 原発/地熱で政権は覚悟示せ

米カリフォルニア州の地熱発電所 出典)David McNew/Getty Images

石井正(時事総合研究所客員研究員)

【まとめ】

政府が「カーボンニュートラル」計画を柱とする「グリーン成長戦略」を発表

再生可能エネルギー比率を引き上げていくために原子力発電は無視できない

・「地域に任せる電源構成」議論が政権の覚悟を示す意味でも必要

新型コロナウイルスの世界的流行によりあらゆる分野で「ニューノーマル・新常態」への動きが加速している。政府も、2050年に温室効果ガス排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」計画を柱とする「グリーン成長戦略」を発表した。50年の電源構成に占める再生可能エネルギー比率を、19年実績の2割弱から5~6割に高める方針を打ち出すなど、現政権の看板政策である脱炭素に向けた動きを鮮明にした。

コロナ対策のもたつきなどで批判にさらされる菅政権にあっては、同成長戦略は一定の評価が得られる政策となっている。温室効果ガス削減に取り組む欧州各国や米国のバイデン新政権などの動きに遅れを取るまいとする意欲もうかがえる。

同戦略について加藤勝信官房長官は、グリーン戦略を討議した成長戦略会議で「並大抵の努力では実現できない」と強調、経済団体からも簡単に実現できる目標ではないとの声も上がっており、目標の達成には相当の覚悟が求められる。

無視できないのは電源構成だ。同戦略では、50年の電源構成に占める再生可能エネルギー比率を5~6割に高める方針が示された。簡単に実現できる目標ではない。同戦略では、洋上風力の発電能力を40年までに原発30~45基分に引き上げることが明示されたほか、水素の活用方針なども挙げられた。

しかし、経済成長に見合う向こう30年間の電力を確保しながら再生可能エネルギー比率を引き上げていくためには原子力発電は無視できない。原発について同戦略では、「可能な限り依存度を低減しつつ、最大限活用」すると明記された。だが、政府は今後の原発の新増設に関しては「現状は考えていない」(梶山弘志経済産業相)などと言うにとどめている。

東京電力福島第1原発事故から、再稼働に至った原発は9基しかなく、耐用年数を考えれば、原発が減っていくのは明らか。このため、新増設を無視して同戦略を達成するのは難しそうだ。

ドイツの脱原発政策や日本国内でも原発廃止論が少なくないことなどを意識したのだろうが、稼働中の原発の「寿命」を考慮すれば、その辺を無視してエネルギー供給体制を論じるのは無理がある。

中国では2019年末に47基の原発が稼働しており、設備・容量としては世界3位。建設中のものは11基と世界最多だ。沿岸部に位置するものが多いだけに、万が一のことが起これば日本も大きな被害を受ける恐れがある。それだけに、日本も原発から単純に手を引くわけにはいかず、有事に備えるためにも原発研究なども放棄するわけにはいかないだろう。

また、経済成長に見合うエネルギー供給源の確保を考えれば「再稼働も検討」するくらいのことは明言すべきだったのではないか。そうした覚悟を見せなければ国民は納得しないだろう。

中国・秦山原子力発電所を歩く職員 出典)Guang Niu/Getty Images

確かに原発に危ない要素があることは否定できない。このため、原発停廃止を求める声が力を持つのも当然だ。しかし、明日から電源構成を再生可能エネルギーだけにするわけにはいかないのも現実だ。

電源構成としては、同戦略の多くのページが洋上風力に割かれ、地熱発電や波・潮力発電、バイオマス発電などとのバランスを欠いたことも気懸りだ。地熱発電は太陽光などに比べて気象条件に左右されず、安定的な電源と位置付けられている。

ただ、立地となるとほとんどが国立・国定公園などの中になってしまうため、環境省などとの調整に手間取ることがあってか、検討の対象順位は極めて低くなっている。景観を損ねるとなれば、地中に施設を埋設するなど工夫の余地はあるし、省庁間の対立でやっかいな問題となるのなら、それこそ政治の出番であり、政権の覚悟の問題となる。

このほかに、バイオマス発電や小水力発電など、地域ごとに対応可能な発電システムも多数ある。コロナ禍で地方自治体に権限を委譲する動きに弾みがついた。こうしたタイミングを捉えて、地熱発電や小水力発電・バイオマス発電など、エネルギー問題でも地方・地域に任せる方向性がはっきりすることは地方創生の観点から見ても好ましい。 原発論議と並行して、こうした「地域に任せる電源構成」議論が、政権の覚悟を示す意味でも盛んになってもいいのではないか。

(了)

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