記事

コロナワクチン接種 順調に進む可能性はほとんどない。 ロジスティクスの専門家が問題指摘

あまりに稚拙な計画で驚いた。順調に進む可能性はほとんどない…。コロナへのワクチン接種について、ロジスティクス(生産管理)の専門家から問題を指摘を受けた。



 第2回となる新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業に関する自治体向け説明会が1月25日に行われた。前回に比べると日程感がより細かくなっているが、かなりタイトなスケジュールであるばかりでなく、保管方法が異なる3種のワクチンの承認が決まってもいないうちに、それぞれ使うことを想定して自治体に全市民を対象にして接種を求めている。

 ワクチンそのものは期待されるが、接種の流れ、ロジスティクスが本当にうまくいくのか見当がつかない。現場の職員が困惑を深めるだけでないかとも思ってしまう。

 さて、指摘され問題点を下記に簡単にまとめてみた。「結論から言えばこのプロジェクトが順調に進む可能性はほとんどなく、大きな混乱を生み出す可能性が高いと判断します。本プロジェクトには生産管理面でのハードルが多くあり、かつどれも難易度が高いハードルばかりです」と結論付けていることは重視したい。

 ワクチンに「本当に効果があるのか」「副作用はないのか」「効果の持続性」というそもそもの疑問だけではなく、必要な数のワクチンが提供されるのか、計画通りに市民に接種できるのか。ワクチンの保存が難しく、打てないワクチンは保存できるのかなどの指摘からの結論だ。

 以下は概要をまとめたもの。

 詳細に書かれている指摘の原文はこちら。
「なぜワクチンのロジスティクスは失敗する可能性が高いのか」   株式会社 ほんま 代表取締役 本間峰一

***************************************************

▼「入」の管理問題点

 ワクチンメーカーが約束通りの納期でワクチン供給するのか? 

 納期は政府が契約した全体数量納期ではなく、数量ロット単位の約束納期(供給スケジュール)。日本企業であれば一度約束したロット納期を守らないということはほとんどありません(最近はそうともいえなくなってきています)。しかし、海外企業のファイザー社などの生産管理がそこまで厳密に運営されているかどうかはわかりません。海外にはロット納期遅れは安全在庫でカバーすればいいという考え方が根底にありますので、ふたをあけたらロット納期遅れの山といった事態にもなりかねません。

▼「出」の管理問題点

 住民票のある市町村で、かつ個人申し込みでしか接種できないとすれば、日付や場所における接種数の偏在は防ぎようがありません。しかも都市部では平日の昼間に住民票のある市町村にいる住民自体が限られますので、接種できない(しない)人も大量にでてくるのではと考えられます。

 この仕組みに関しては都市部の住民の不満の爆発も心配されますし、そもそも接種会場での需要予測が十分にできないので医師や看護師のシフト管理ができないといった可能性もあります。

 この状態で「入」で問題にしたワクチンの納期遅れが起きたらどうするのでしょうか。
 日程変更調整、接種場所の調整、医療関係者の調整、予約変更調整など現場の大混乱は必至と思います。工場でいえば生産計画なしでいきあたりばったりの生産対応を要求される製造現場と同じです。

 この状態で多忙な医療関係者に柔軟に接種対応してもらうための理解が得られるのでしょうか。工場でもこうした事態が起きると現場の不満が高じて納期遅れや品質不良が多発する恐れがあります。

▼「仕掛」管理問題

 ロジスティクス(物品供給)面から入と出の変動を調整する役割を担っているのが「仕掛在庫」です。工場では仕掛在庫を利用して製造能力調整、納期調整、製造設備の調整などを行います。本プロジェクトではワクチンの流通在庫にあたります(正確には注射針などの流通在庫も対象です)。

 仕掛在庫管理はシステムの機能だけでなく、現場の運用力が十分にないと機能しません。
 現場が間違った着荷(着手)や出荷(完了)実績データを入力すると運用が成り立たちませんが、その現場の実績入力精度を高めることは至難の業です。しかもワクチンの仕掛在庫デポは工場内とは違い何万という単位での設置が予定されています、厚労省は現場の運用教育はどうやってするつもりで考えているのでしょうか。

 さらにファイザー社のワクチンは仕掛在庫としての管理が非常に難しいという問題もあります。私の知る限りここまで難しい仕掛在庫管理が必要な製品工場をしりません。

こう書くと冷凍保存のことをいっていると勘違いする人がいますが、ポイントは冷凍保存ではありません。在庫する場所の温度条件によって消費期間が変化し、かつそれが短いことが問題です(5日から2か月)。

 食品などで製造日からの消費期間が短いという製品はありますが、在庫環境で消費期限がかわるといった特徴をもった製品はほとんどきいたことがありません。一般的な冷凍食品は消費期限が長く、冷凍保存体制も整っていますので消費期限管理はそれほど難しくはありません。

 また、仕掛(流通)在庫段階で、消費期限切れになるワクチンも相当数発生する可能性があります。厚労省の調達計画ではその分も計画に入れているのでしょうか?
 こう考えてくると接種専門チームが最初から最後まで仕掛の一元管理をするならまだしも、今回のような船頭がたくさんいる体制で十分な仕掛管理ができるとは思えません。

【参考】
厚生労働省 第2回自治体向け説明会(令和3年1月25日)
※図は説明会資料より

あわせて読みたい

「ワクチン」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    ウーバーイーツ、報酬3割減に組合が怒り 安すぎて"配達拒否"する人も

    キャリコネニュース

    03月08日 22:16

  2. 2

    シン・エヴァンゲリオン劇場版ᴐ7──おとなになれないぼくたちと、第1世代オタクの悲哀

    狐志庵

    03月08日 15:09

  3. 3

    ドキュメント3・11 イギリス大使館はなぜ「真実」を見抜けたか

    新潮社フォーサイト

    03月08日 08:12

  4. 4

    「奇跡が起きる」と話題!ClubhouseはYouTubeをどう変えるのか!?

    放送作家の徹夜は2日まで

    03月08日 10:35

  5. 5

    コロナ禍で進む様々な好調・不調の二極化

    ヒロ

    03月08日 10:34

  6. 6

    いま一度公務員倫理規程を問う

    船田元

    03月08日 13:39

  7. 7

    河井夫妻買収事件、「被買収者」告発受理!「処分未了」の再選挙には重大な問題。各政党の対応は?

    郷原信郎

    03月08日 17:46

  8. 8

    ソフトバンクGの格付け見通し、ムーディーズが安定的に引き上げ

    ロイター

    03月08日 21:12

  9. 9

    東日本大震災で〝常態化〟した自衛隊の災害派遣 「想定外」の災害にも“揺るがぬ”国をつくるには - 西岡研介 (ノンフィクションライター)

    WEDGE Infinity

    03月08日 09:48

  10. 10

    菅首相の「退職してまた元の省に帰ってくる」発言は国家公務員の長時間残業から目をそらすもの

    国家公務員一般労働組合

    03月08日 17:20

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。