
都営地下鉄大江戸線に所属する運転士ら39人が新型コロナウイルスに集団感染したことについて、洗面所で歯磨きをした際に蛇口に付着した唾液を経由して感染した可能性があることを複数のメディアが報じた。
都交通局に話を聞くと、蛇口は保健所から指摘された感染リスクの可能性がある複数のうちのひとつ。担当者は「蛇口の情報だけが強調されてしまった」と口にする。
また、なかには「感染源は蛇口」と断定調で見出しをつけたメディアもあり、歯科医師らからなる日本口腔衛生学会の理事長・山下喜久氏は、会員に向けた内部文章で「マスコミ報道に振り回されず」と警鐘を鳴らしている。
「蛇口」は保健所の複数ある予防のアドバイスのひとつだった

大江戸線では昨年12月15日以降、江東区の同じ庁舎を使う運転士ら計39人の感染が判明した。
都交通局の広報担当者によると、感染判明後の24日、保健所職員が江東区内にある運転士らの庁舎を見て、感染リスクのある箇所複数を指摘。現場を見ながら予防のアドバイスを伝えるもので、実際にウイルスを採取して感染源を特定するような調査はなかったという。
保健所は
- ・食事中はマスクを外しての会話を控える
- ・浴室・脱衣所での会話を控える
- ・蛇口に唾液が付着する可能性があるので直接触らない
などを指摘。
メディアからの取材を受け、都交通局はこれらのアドバイスを説明したが、多くの報道機関が蛇口についてのみ記載し、他の点については言及しなかった。
担当者は「蛇口だけが強調されたことによって原因が特定されたように受け止められてしまった」と口にする。
報道後、ツイッター上では、「会社での歯磨きをやめようか」と迷う声や、「子どもの通う幼稚園で歯磨きが中止になった」という報告などが投稿された。
同庁舎では、保健所の指摘を受けて、蛇口はペーパーを介して触るようにするなどして対応。今後はセンサー式への変更を検討しているという。