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1月27日が国旗制定記念日は間違い? 日本の国旗研究者は暦のズレを指摘

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きょう1月27日は「国旗制定記念日」とされ、日本の国旗“日の丸”のデザインなどが制定されたといいます。

その背景を編集部が調べようとしたものの、信頼できるソースがなくて取材は難航。専門家からは「この日を記念日とするのはおかしい」という疑問の声も聞こえてきました。

Getty Images

記念日の成り立ちを探っていけばいくほど、雲行きは怪しく。

そこで、1964年の東京オリンピックを含め、札幌、長野と日本で開催された過去3度のオリンピックで国旗や儀典に関わり、東京オリンピック・パラリンピック2020では組織委国際局アドバイザーを務める、日本の国旗研究の専門家・吹浦忠正さんに話を聞きました。

「1月27日は国旗制定記念日ということで大丈夫ですか?」

すると、一般に考えられているのとは異なる事実が明らかになりました。

国旗制定記念日って誰が決めたどういう日? がわからない

取材を開始してすぐに困った事態に。この日がどういう日で、誰が制定したのかという正確な情報が確認できる資料が見つかりません。行き詰まってしまいました。

インターネットで「国旗制定記念日」と検索すると

1870(明治3)年の旧暦1月27日(新暦2月27日)に、商船規則(太政官布告第57号)で国旗のデザインや規格が示された日として「国旗協会」が制定した

といった説明が散見されます。

しかし、なかには商船規則発令の年が間違っているサイトなどもあり、信憑性に疑問が湧きました。

国旗制定記念日が過去にメディア報道などで取り上げられや形跡もほとんど見当たりません。

そこで、記念日の制定者とされている一般社団法人「国旗協会」に直接、話を聞こうと考えました。しかし、公式のホームページがあるわけでもなく、公益法人の情報を記載しているサイトに表示される電話番号にかけても「現在は使用されていません」という自動音声が流れるばかり。

登記簿を取り寄せ、事務所の住所として登録してある丸の内二重橋ビルの東京商工会議所に所在を尋ねると「以前は確かに入居していたが、現在、事務所はなく、自分たちも居場所を把握していない」との返答。

足取りがつかめませんでした。

国旗研究の第一人者に取材すると「間違い」との指摘

陸上のロサンゼルス五輪代表選手送別式で日章旗を先頭に入場行進する選手たち=1932(昭和7)年6月22日、神宮競技場:日本電報通信社撮影(共同通信社)

そこで、国旗研究の第一人者である吹浦さんに「1月27日を国旗制定記念日として認識することは正しいですか」と電話すると「間違っています」と返答が。

吹浦さんは「旧暦」と「新暦」を一緒にしてしまっているため、新暦の1月27日を記念日とするのはおかしいと指摘します。

国旗が日本で制定されたのは明治3年1月27日だが…

東京大学(帝国大学)=撮影年月日不明。イマジンネット画廊所蔵/共同通信イメージズ ※この説明文は、画像の委託時につけられた情報です。研究の進展により記載の情報が変わる可能性があります。

明治時代に入り、国旗に関する法令として「商船規則(太政官布告第57号)」が発されました。

これは日の丸を商船の「御国旗(みこっき)」として規定するもの。デザインやサイズなどが定められました。ちなみに商船規則では「円の中心は旗面の中心から横の100分の1旗竿側に寄る」とされるなど、日の丸が旗の中心に据えられている現在の国旗デザインやサイズとはいささか異なるものでした。

吹浦さんが指摘するのは、この商船規則が発された日付

明治3年1月27日

についてです。

これは現在、日本で使われている「新暦(太陽暦)」よりも以前に使用されていた「旧暦(太陰太陽暦)」の上での日付となります。

新暦と旧暦ゴチャ混ぜに疑問

BLOGOS編集部

商船規則が出された後の明治5年、政府は改暦を行います。日本人が使用するカレンダーを旧暦から新暦に変更したのです。

それまで太陰太陽暦を使用していた日本と、太陽暦を採用している諸外国との間で、年度や日付の違いが生じ、トラブルが生じることが多くなったことなどが理由として挙げられています。

この改暦は急ピッチで進められ、明治5年12月2日(旧暦)の次の日が明治6年=1872年1月1日(新暦)ということになりました。混乱しますよね。

それから現代まで、日本で一般的に使用されるカレンダーは新暦のものが使用されています。

さて、暦の歴史を知った上で国旗に関する日付を見てみましょう。

上述の通り、商船の御国旗として日の丸が制定されたのが

1870(明治3)年1月27日(旧暦)
1870(明治3)年2月27日(新暦)

です。

それから時がたち、どのタイミングかはわかりませんが、なぜか「新暦の1月27日」が「国旗制定記念日」として認識されるようになりました。

これに対し、吹浦さんは「新暦を基準に記念日を制定するなら2月27日が適切だ」と指摘します。

『太政類典・第一編・慶応三年~明治四年・第百四巻・運漕・海運一』に記された郵船商船規則のページ。「三年正月廿七日」、つまり明治3年1月27日と記載されている。(国立公文書館)

旧暦と新暦ではズレが生じるため、もし記念日を「旧暦1月27日」に合わせて制定するなら、2021年の場合は「新暦3月10日」ということになります。

いずれにしても、新暦の2021年1月27日は、「1・2・7」という数字は該当するものの、改暦の歴史を踏まえて考えると、国旗の制定とは関わりの薄い日付だということになるそうです。

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