■ウォルマートは今夏、ヘリコプター型とは異なる小型飛行機によるドローン宅配のテストを始める。
従来型の回転翼のドローンより悪天候に強く宅配時間も短くなるモーターグライダーを用いることで、新たなフライト宅配モデルを模索するのだ。
2014年創業のスタートアップのジップライン(Zipline)と提携したテストは主に医薬品のオンデマンド宅配を目的としたもの。
ウォルマート本社があるアーカンソー州ベントンビルから北東のピー・リッジ地区で実験は行われる。
ピー・リッジ都市計画担当官が最近、ウォルマート・ネイバーフッドマーケット・ピー・リッジ店(240 Slack St. Pea Ridge AR 72751)でのドローン用ハブ空港の建設を承認したのだ。
ジップラインの宅配機は、大きな翼を固定したグライダーのような飛行機で機体上部にあるプロペラを動力源にする。
ジップラインのフライト宅配では飛行速度が時速80マイル(約128km)にも達する一方、運べる重量は4ポンド(約1.8kg)までとなっている。
翼が回転し続け一定の場に留まることができる回転翼ドローンと異なり、固定翼のジップライン・ドローン宅配では、空中で停止する「ホバリング」が不可となっている。
そのため、注文品はドローンの機体の底部のハッチが開いて、パラシュート投下される仕組みとなる。
またジップライン宅配機は滑走し離陸するだけの推進力をもたないため発射台となるローンチパッドが必要だ。
回転翼のドローンと違い、ハブ(ドローン空港)建設をすることで市の都市計画局での承認が必要となっているのだ。
モーターグライダーのフライトは上部にあるプロペラが回って推進。安全性を確保するため補助のプロペラも搭載している。
ジップライン宅配機では着陸がパラシュートを開いて機体を着陸する。
パラシュートランディングで機体が損傷を受けることを考慮したフラジャイルデザインを採用し、機体の多くが容易に取り替えることが可能な安価なパーツで占められているのも特徴となっている。
ジップラインでは東アフリカのルワンダ等で緊急時の血液パック輸送を行っており、いくつかの国で重要な医療品など20万件以上を届けた実績がある。
ジップラインの他、ウォルマートはベンチャーのフライトレックス(Flytrex)と提携したドローン宅配のサービスのテストを開始することも明かしている。
ノースカロライナ州ファイエットビルにあるウォルマートの店舗から食品や日用品をドローンで運ぶテストでは、6.6ポンド(約3キログラム)の注文品を3.5マイル(約5.6キロメートル)先まで配送する。
回転翼ドローンでは230フィート(約70メートル)の上空を時速32マイル(約50キロメートル)で飛行し、利用者宅まで届けるのだ。
利用者宅ではバックヤード(裏庭)もしくはフロントパスウェイ(玄関前の通路脇)の上空8フィート(2.4メートル)にまで下降しホバリング中に注文品がついたケーブルを地面まで降ろして利用者に届ける。
ウォルマートはまた、新型コロナウイルス検査のための自主検体採取キットをドローンで届けるテストも行っている。
診断情報サービスのクエスト・ダイアグノスティクス(Quest Diagnostics)とドローン開発のドローンアップ(DroneUp)と提携したテストはラスベガス北部とニューヨーク州のチークトワガ地区で昨年から始まっている。
今回の宅配サービスは、ウォルマートから1マイル圏内に住む顧客が対象。ドローンが利用者宅の敷地にキットを落とし、受け取った利用者が鼻腔用綿棒を使って自分で検体を採取してクエスト・ダイアグノスティクス社に送付する仕組みという。
モーターグライダー式の宅配では僻地で自主隔離する利用者が検査キットや医薬品等の宅配で役立てることになる。
ウォルマートはドローン宅配でも回転翼から固定翼まで試験することで様々な宅配ニーズに対応できるようになるのだ。