日曜夜に「読売オンライン」からこんな記事が。
『ワクチン担当「抜てき」河野氏、投稿連発の一方で首相側近発言を否定…持ち前の「発信力」迷走』(1月24日)
私が注目したのが次の部分。
《河野氏は担当に指名された18日以降、自身のツイッターでワクチン関連の投稿を続けている。》

河野太郎ワクチン担当相 ©文藝春秋
河野太郎氏は「ブロック太郎」とも呼ばれるほどツイッターのブロック多用を指摘される。しかし担当大臣となってからはワクチン関連の投稿を続けているという。
つまり、「ブロックされている人」は見れないことになるのだ。国民に情報格差が発生する。大事なワクチンの情報なのに。これこそ真の「発信力迷走」ではないだろうか。一連の「首相側近発言を否定」も確かにドタバタだけど。
(※ちなみに現在の「読売オンライン」の当該記事は『ワクチン担当「抜てき」河野氏、滑り出し前途多難…試される調整力』と見出しが変更されている。個人的には元の見出しのほうが的確だと思う。)
河野氏の「発信力」が持つ意味とは…
そもそも河野氏の「発信力」とは何だろう? 私は河野氏の「発信」の仕方を考えると怖さしか感じない。この怖さについて多くの人に共有してもらいたいと思うのでおさらいします。
河野氏はブロックをどれほど多用しているのか。興味深い「調査」がある。
沖縄タイムスの阿部岳記者がブロックされている人をツイッター上で募ってみたら、《1日だけでおよそ700人が手を挙げてくれた》という(文春オンライン2020年3月9日)。
記者1人の呼びかけで、1日だけで、ブロックされている人が「700人」もわかったのだ。総人数は途方もなさそう。
では、河野氏はなぜブロックをたくさんするのか。
1年半前の記事をみてみよう。
『つぶやきは癒やし 河野氏、発信を継続へ』(毎日新聞2019年9月14日)
当時の記者会見で自身のツイッターについて「ほんわかとした、癒やしのコミュニティーだ」と述べている。
「一方、河野氏は批判的なユーザーに書き込みを閲覧させない『ブロック機能』を多用しているとの批判を受けている」
「批評」「論評」も耳に入れたくない?
このことについて河野氏は「誹謗(ひぼう)中傷している人には遠慮いただきたい」と説明している。誹謗中傷の「判断」もザワザワするが、河野氏は大事なことを言っていない。
河野大臣はクソリプで絡んできた人だけでなく、エゴサーチをして自分を批判する人もブロックしているのだ。
個人的なことを言うなら、汚い言葉で絡んできた相手には政治家でもブロックしてもいいと思ってる。しかしわざわざエゴサして自分に批判的な意見を言う人までブロックしまくるのには驚く。いや、そもそも「批判」だけか。「批評」「論評」も耳に入れたくないのでは?
沖縄タイムスの阿部岳記者も河野氏に宛てて何かを書いたことはなく、河野氏について2回つぶやいたらブロックされたという。
ここまで読んで「所詮ツイッターではないか。誰をブロックしようが自由」と思われる方もいるだろう。
もし河野氏が言うようにツイッターが「ほんわかとした、癒やしのコミュニティー」ならそうかもしれない。犬を撫でたとか猫が可愛いとかご飯が美味いならそうだろう。
しかしギョッとしてしまうのは強い政治的な「メッセージ」も入れてくることなのだ。
思い出される「イージス・アショア」のツイート
具体例がイージス・アショアに関するツイートだった。
河野氏は昨年5月7日、『「イージス・アショア」秋田市の候補地を事実上断念』というNHKニュースを引用し、
《フェイクニュース。朝からフェイクニュースだと伝えているのに、夜のニュースでも平気で流す。先方にも失礼だ。》
とツイート。
さらに《今回のフェイクニュースの先陣を切ったのは読売新聞。》とも。昨年5月6日に読売が一面で報じたことを指している。
このあと、この件はNHKや読売新聞の報じた方向になり、河野防衛相は6月15日に「イージス・アショア」の配備計画を停止すると表明した。読売の記事はフェイクニュースではなかった。
各紙の報道に反応する河野大臣
何か匂うなら取材するのが記者である。少しでも異変を感じたなら「その時点での内部の声や空気」を報じることだって重要だ。
読売は《複数の政府関係者が明らかにした》と書いていた。5月7日夕刊では朝日も同様に「複数の政府関係者が明らかにした」と書き、毎日も産経も後追いした。つまり各紙が取材した結果だった。
この「政府関係者」というキーワード。実は河野氏は今回も反応している。
1月20日に、
「新聞各紙が『政府関係者』なる者を引用しているけれど、全く根拠のないあてずっぽうになっている。信用しない方がいいよ」と投稿した(時事通信)。
調べてみると当日の読売朝刊に「一般向け接種5月にも」「7月頃までには大半の国民で接種を終えたい考えだ」とあり、
「複数の政府関係者が19日、明らかにした」
と書いてある。河野氏はおそらくこれを読んだのだろう。
ワクチン接種の時期を取材するのは必然なのに…
ワクチン、ワクチンと言われたら多くの人は「ではいつ頃に接種できるのだろう?」と普通に思うはずだ。私もそう。それに対し記者は取材をする。その時点での見通しだとしても、内部の声や空気を知れるのは重要だ。
もちろん「政府関係者」とか「政府高官」とか「首相周辺」とか匿名のコメントではなく、誰が言っているのか名前が明らかにされたらさらに理想的だ。しかしそれなら喋らないという人もいるはず。ではその結果どうなるか。担当大臣などトップの「自分が流したい話」しか報じられなくなってしまう。俺(大臣)が言っていることだけが正解というような世界になる。
それだけではない。河野氏の「信用しない方がいいよ」は批判者をブロックしているツイッターでの発言である。批判が発生しづらい空間で強い言葉が発せられることで、それを見た人々が「そうだ、そうだ」となれば権力者にとってはそれだけで好都合だ。
以前にはこんなことがあった。
『河野氏「真摯に反省」 北方領土返還めぐる発言 本紙が抗議』(産経ニュース2019年7月9日)
河野氏の外相時代の話である。
講演で北方領土問題をめぐりロシア側に四島返還を求めるつもりはないとの考えを示したと「産経ニュース」が報じたら河野氏はツイッターで「ひどい捏造」と批判したのだ。
産経新聞社は《報道内容は「(講演会の)質疑に基づく公然の事実で、『捏造』や『誤報』ではない」と厳重に抗議》した。
すると河野氏は記者会見で「言葉足らずのところがあれば、そこは真摯に反省し、おわびする」と述べ、
《このツイートは同日、削除された。》(産経ニュース同前)