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医療崩壊への切り札を封じる菅政権の空前の失政   ~特措法31条「知事の要請・指示」は使用可能~

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1.コロナ禍では特措法31条は使用できないと回答

 医療崩壊を阻止するための切り札の法制度が、菅政権の空前の失政によって封じられてしまっています。

 新型コロナに対処する特措法31条では「都道府県知事による医療関係者へのコロナ医療への協力の要請・指示」ができることになっています。

 ところが、政府はこれまでの間、この31条のガイドラインにある「地域のほとんど全ての医療機関が診療を休止するなど」の規定の解釈を誤解し、大阪府などに対して、「コロナ禍では、ほとんど全ての医療機関が診療を休止するような事態までは至っていないので、特措法31条は使えない」と回答してきました。

 現に、西村大臣は、昨年の12月16日の衆議院の内閣委員会で、足立康史議員(維新)の質問に対し、ガイドラインの規定に適合しないので使用できないとの旨を答弁しています。

「 三十一条については、・・・まさに、規定にありますけれども、ほとんど全ての医療機関が診療を休止するなど、当該地域における医療体制の確保が困難となり、当該地域に所在する医療機関において医療体制を構築する際に、そのための医療関係者を確保できない場合などに要請するという規定となっております。このため、現在の状況とは想定されている状況は異なっているものというふうに考えております 

 そして、大阪府の吉村知事は、本年の1月15日付のTwitterで「国とも協議しましたが、結論として特措法31条は民間病院にコロナ対応を要請する条文としては使えないです。政令とガイドラインを添付します。かなり限定的な場面を特措法31条は想定してます。」と述べています。

 しかし、この西村大臣による特措法31条が新型コロナで使えないという答弁はガイドラインの文言の誤解による空前の運用解釈の誤りであることが、1月20日に明らかになりました。

 特措法31条は、新型コロナに使用できる条文なのです。

 現下の非常事態宣言はもちろん、むしろ、昨春以降の感染拡大に対処するために設けられた法制度なのです。

 ところが、厚労省の官僚も誤った解釈をしたことを認めているにも関わらず、菅政権は、今日(1月25日)に至るまで都道府県に対し、訂正の説明することを頑なに拒んでいるのです。

 これは政府による空前の大失策であるだけでなく、空前の人命無視の暴挙です。

 特措法31条を使うかどうかは各知事の判断(裁量)ですが、それが使えるという事実は、医療崩壊の危機の中、今すぐ日本中の知事が知る必要があります。

 以下、詳しくご説明をします。

2. 政府が解釈を誤った理由 (「地域」の誤解)

  政府のガイドラインの誤解の真相は、あっけにとられるようなお粗末な勘違いによるものです。

 ガイドラインの「地域のほとんど全ての医療機関が診療を休止するなど」との文言は、それをそのまま読めば、我々が容易に想像できないような異常事態と思えます。

 例えば、地域の基幹病院にクラスターが発生し地域の急性期医療が危機的状況になっても、街の診療所などは動いている訳ですから、「地域のほとんど全ての医療機関が診療休止」という事態とは言えないでしょう。

 現に、厚労省の担当者は私に対しても、「この規定は、巨大な感染爆発によって県内(県域)の全ての医療機関が診療を休止する、あるいは、得体の知れない感染症に多くの医療関係者が避難してしまうなどの状態を指している」といった説明をしていました。

 しかし、この規定をそのまま受けとめるのは、どう考えていても常識に反します。

 こうした解釈では特措法31条は全く活用することができない法制度となってしまいます。新型コロナのような恐ろしい感染症のための特別法を作るのに国会がそんな馬鹿げた立法をする訳がありません。

 それでも、官僚は現にそういうガイドラインの規定がある限り動きません。特に、特措法31条は、知事が医療関係者に行政処分(指示)もできる条文ですので、官僚としては責任を負いたくないと考えてしまうのでしょう。

 では、どうすればいいのか。

 こういう場合には、このガイドラインを作ったときに一体どのような議論をし、どのような考えでこれが策定されたのかを確認すればいいのです。

 その結果、全てはガイドラインの冒頭の「地域」という文言の勘違いによるものであることが分かりました。

 「地域のほとんど全ての医療機関が診療を休止するなど」という規定は、「都道府県知事による通常の協力依頼のみでは医療の確保ができないような場合」という、特措法31条の知事の医療関係者への要請・指示が許される要件の具体例として考えられたものです。

 そして、この要件などを議論した2012年10月9日の政府資料では、「都道府県知事による通常の協力依頼のみでは医療の確保ができないような場合」の具体例として、「 例えば、地域における医療機関が診療を停止し、近隣の新型インフルエンザ等の患者が医療の提供を受けられなくなったため、医師等の派遣を行う場合など」と記載されています。

 また、これについて当日の会議録では、厚労省により、「要請・指示に関しては、どういう場合に必要になってくるのかですが、都道府県知事による通常の協力依頼のみでは医療の確保ができないような場合に要請を行うこととしてはどうか。これは例えば、医療機関が診療を停止して、近隣に患者さんを診るところがなくなった場合に、医師等の派遣を行うような場合などが考えられます。」と説明されています。

 そして、これに対して、日本医師会を代表する委員より、「日本医師会としては・・・要請・指示についてはいま事務局ご指摘の範囲で適切ではないかと思っております。」との見解が述べられているのです。

 キーワードは、政府資料と厚労省説明にある「 近隣 」という文言です。

 つまり、実は、「地域のほとんど全ての医療機関が診療を休止するなど」の「地域」とは、我々が空から眺めた時の地域ではなく、「患者さんの目から見た近隣地域」の意味なのです。

 例えば、新型コロナの患者さんにおいて、入院する病院が機能を失ったり、あるいは、滞在する宿泊施設等に往診する医師らがいなくなり、その結果、その患者さんの近隣で頼れる医療がなくなってしまえば、その患者さんから見た場合、「地域のほとんど全ての医療機関が診療を休止するなど」という事態に該当するはずです。

 そして、近隣の医療機関が新型コロナ以外の病気の診療を行っていても、新型コロナの入院病床がなく、やむなく自宅療養をしてもそこに医師の往診を受けることも出来ないような、まさに多くの患者に生じている現状の事態は、それぞれの患者が置かれている実態から見れば、「近隣の患者が医療の提供を受けられなくなった」(政府資料)、「近隣に患者さんを診るところがなくなった」(会議録)の要件に該当することになります

 そもそも、特措法は国民を感染症から救うための法律ですから、そのための知事の要請・指示の要件はあくまで国民が窮地に陥った時に使えるものであるのは当たり前のことです。

 ですから、この「地域」を一人一人の患者目線を離れて、県内全ての「県域」と捉えたり、あるいは、空から眺めるように単なる地理的エリアと理解するのはガイドラインの曲解も甚だしいものなのです。

3. ガイドライン策定時の資料等が検証されずに解釈されていた

 では、なぜ、このようなとんでもない間違いが生じたのでしょうか。

 実は、ガイドラインの解釈を担当する厚労省の複数の官僚とその上司らは、1月20日に私が指摘するまでその策定当時の資料や会議録を一度も見たことがないままに、ガイドラインの文字面だけを捉えて、とんでもない解釈を都道府県に回答していたのです。(担当者らは、私が指摘した1月20日には言葉を失うような驚きを見せていました。)

 さらに、政府の解釈が誤りであることは、特措法31条の根本解釈を記した法制定時の内閣法制局審査資料及びそれに基づく逐条解説からも明らかです。それらには、「地域のほとんど全ての医療機関が診療を休止するなど」といった限定を加えるような考え方は全く記されておらず、むしろ政府解釈と矛盾する記載が多数あります。

 そして、ガイドライン策定過程の追求は、これら逐条解説等と政府解釈の矛盾を答えられない厚労省担当者に対し私が要請をして、1月20日に一緒に確認したものでした。

 

 如何にコロナ対策に多忙を極める厚労省といえども、その対策の切り札の法制度の根本の趣旨を追求しないで都道府県に誤った解釈を回答することは問題があると言わざるを得ません。

  しかし、一番の問題は、そういう国民を見捨てることになる解釈をおかしいと思わず、自ら官僚を指揮して真実の追求を行わなかった大臣等の政治家にあります。

 

■ 以上について、ガイドライン策定時の資料等や法31条の内閣法制局審査資料等は、以下の文書に全て添付しています。

 https://konishi-hiroyuki.jp/wp-content/uploads/tokusouhou31.pdf

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