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『エンタの神様』『マジカル頭脳パワー!!』などを手掛けたテレビ界のレジェンド五味一男「面白いものより分かりやすいものを作る」

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サザンオールスターズ、松任谷由実がヒットを生み続けるワケ

このスタンダード的要素については音楽でも例えを出して説明していました。

それがサザンオールスターズと松任谷由実さん。「この2組の音楽は多くの日本人の琴線に触れるメロディを完全に理解したうえで音楽を作っているはずである。そんな本能に訴える音楽を基本としたうえで時代や流行性といったファッション的要素を2割ほど、味付け程度に乗せて楽曲を制作しているのではないか。だからこそこの2組は永続的にヒットを出し続けていけるアーティストである」
と分析しています。

この本が発刊されて15年経った今でも、サザンと松任谷由実さんの例えはしっくりきますね。

五味さんはこのスタンダード的要素が多くの割合を占めた番組作りを心掛けていたと言います。

『投稿!特ホウ王国』であれば「世界で1番背が高い男に驚く」「広末涼子にそっくりのサラリーマンにビックリする」。これらは多くの人のニーズを取り込めるスタンダードなものだと。そんなスタンダード的要素を多く含んだコンセプトを掲げることが番組作りの基本であると述べています。

『投稿!特ホウ王国』のコンセプトは「日本中から面白い情報を集めた番組」。
そして、重要なのはこのコンセプトを実現する「方法論」だと。

この番組の方法論は1億2000万人の視聴者を記者にして日本全国から面白い情報を集める。面白い情報をくれた人には賞金を出す。番組の中でウッチャンナンチャンに競わせる…といった具合。

「日本中から面白い情報を集める」というコンセプトを実現させるために、このような方法論で肉付けをしていったとのことです。

この大元のコンセプトが間違っていればどんな方法論を使っても番組は成功しない。コンセプトが正しければ、それを実現する方法論がうまくいけば番組は成功する…と断言されています。

例えば、『投稿!特ホウ王国』が「日本中から色々な種類の切手だけを集めた番組」というコンセプトだったら、同じ方法論を使っていても絶対に成功していないはずだ、と。

スタジオジブリと比較されたことで失敗したTV番組

五味さんが手掛けた6つのレギュラー番組のうち、1つだけ視聴率20%を超えなかった番組があります。それが『週刊ストーリーランド』。ただ、五味さんはこの番組のコンセプトも間違っていなかったはずだと述べています。

コンセプトは「世界中から集められた面白い話をクオリティの高いアニメで表現する」。ただ、このコンセプトを実現させるための方法論が最後までクリアできなかったために成功できなかったのだと言います。

それは…他のバラエティ番組のように、番組の状況に応じた軌道修正のスピード感やフットワークが、アニメを制作するプロダクションとの間に構築できなかったこと。

スタジオジブリの50分の1の予算で作るアニメーションが、視聴者には(同じテレビ番組という土俵で放送される)ジブリ作品と比べられてしまい、クオリティの差を感じられてしまったこと。五味さん自身がアニメの知識が乏しかったこと。これらを番組が成功しなかった要因として挙げていました。

ちなみにこの番組、僕は拝見したことが無いのですが、想像すると現在YouTubeで人気となっている漫画動画のようなコンテンツですね。1本当たりの制作費は低いのが当たり前のYouTubeというプラットフォームとの親和性が高かったのかもしれません。

このようなヒットを生むための演出論は非常に興味深かったのですが、やはり、ヒット番組を作り出すための五味さんの並外れた努力があったことは抑えておかなければいけません。

五味さんは日本テレビに入社して10か月経った頃に上層部から「クイズ番組の企画を考えてくれ」と指示を受けたそうです。五味さんは企画書を作る前に、当時のクイズ番組の状況を知るために各局で放送されていた約20本のクイズ番組を全て録画。番組ごとの構成、出演者、視聴率といったあらゆるデータを大学ノート7冊分に記録し、徹底分析を行ったうえで企画書作りに取り掛かったそうです。

確認しておきたいのは、この作業を行ったのは“クイズ番組の立ち上げを任されたから”ではありません。
実現するかどうかも分からないクイズ番組の企画書を提出するためにここまでの作業を行ったのです。そしてこの作業を経て制作されたのが『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』でした。恐れ入りました、ですね(笑)

前回、紹介したTBSの藤井健太郎さんもそうでしたが、並外れた才能だけでなく、他者よりも圧倒的に考える・動く・汗をかくということが、ヒットを生むための必須条件であることは間違いないようです。

それでは改めまして五味一男さんの『「視聴率男」の発想術』という本、気になった方はご購入ください。

コラムの題材とさせてもらったからには五味さんや本を発刊した出版社(宝島社)にも得していただかないと罪悪感が残ってしまいますので、是非とも宜しくお願い致します。

「視聴率男」の発想術 (日本語) 単行本 – 2005/7/22

深田憲作
放送作家/『日本放送作家名鑑』管理人
担当番組/シルシルミシル/めちゃイケ/ガキの使い笑ってはいけないシリーズ/青春高校3年C組/GET SPORTS/得する人損する人/激レアさんを連れてきた。/新しい波24/くりぃむナントカ/カリギュラ
・Twitter @kensakufukata
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