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2021年は家賃相場の地域差が拡大?ひとり負けの東京23区、学生が左右する多摩、京都、神戸

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不動産業界では1月~3月はいわゆる繁忙期。4月からの新年度に向けて引っ越しが増える時期なのだが、コロナ禍の続く2021年は大きく様相が変わりそうだ。移動が減るだけではなく、地域ごとに賃料、空室率などに差が出ると不動産評価サービスのタス・主任研究員の藤井和之氏。実際の動き、懸念事項などを地域ごとにみていきたい。

世帯数激減の東京23区はひとり負け状態

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コロナ禍でもっとも影響を受けているのは東京23区。2020年2月までは月に6500世帯(12カ月移動平均)ほどの流入があったものが、2020年9月には2700世帯余にまで減少。これはリーマンショック後の最低値と同水準だが、注意したいのはリーマンショック時は最低値に至るまで3年ほどを要したのに対し、今回は7カ月と藤井氏。「人口の移動に関してはリーマンショック時よりも影響が大きく、特に東京23区が大きなダメージを受けています」。

一方で賃貸住宅の供給自体はそれまでの好調な人口集中を反映、高い水準を維持しており、コロナ禍でも貸家着工戸数自体は影響を受けていない。つまり、物件は増えるが、借りる人は減っているという状態といえるわけで、今後、東京23区では需給のギャップが拡大、空室増もあり得る。

借りる側からすると物件余りの「借りやすい状況」ができるわけだが、それが賃料ダウンに繋がるかどうか。そこまではまだ難しいのではと藤井氏。コロナ禍にあっても各種データ上、賃料は上昇し続けており、その傾向はしばらく続くというのである。

日本では景気の動向と賃料はほとんどリンクしておらず、景気が悪化しても賃料はしばらく高止まりする。一般的な賃貸借契約は2年となっているため、その間は賃料が変わらないからである。リーマンショック時も都市部では有効求人倍率が1倍を切ってから1年後くらいにようやく賃料の低下がみられており、今回も緊急事態の継続で景気がより悪化、有効求人倍率の低下があれば賃料も下がるだろうが、とりあえず、今回の繁忙期には影響は少ないのではなかろうか。

学生ニーズ消失で先行き不安な多摩エリア

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同じ都内でも状況がやや異なるのは多摩エリア。23区ほど世帯数の増加幅は減少していないものの、多摩はそもそも住民票を移さない人口流入=学生が多い地域。統計には出てこない人口流入があるわけだが、それがコロナ禍で激減している可能性があるのだ。オンライン授業が中心になったことから大学周辺の賃貸住宅への引っ越しを控えている、費用負担を抑えるため、実家に戻るなどで周辺の賃貸需要がより少なくなっていることが考えられるのである。

しかも、この傾向はコロナ禍とは関係なく、ここ数年続いてきたもの。多摩エリアに移転した大学のうちの多くは都心に回帰しており、2023年には中央大学法学部の文京区への移転も決まっている。コロナ禍が終息しても多摩の単身者向けニーズが戻ることはないのである。しかも、率直なところ、多摩エリアの単身者向き物件は質的に微妙。コストを抑えて住むという意味ではあり得るかもしれないが、快適な在宅生活を考えるには足らないかもしれない。

神奈川県の危険要素は狭小ワンルーム

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ひとり負けの東京23区に比べると首都圏他県の影響は比較的軽微。特に増加幅が縮小したとはいえ、神奈川県は首都圏では唯一世帯数が増加しており、都心から首都圏近郊へという人の流れの行先のひとつとなっていることがわかる。2020年11月の住民基本台帳人口移動報告でみても前年同月比の倍近い1500人以上の転入超過である。住宅供給も東京23区ほど過多ではないため、需給のバランスは取れており、空室が増える、家賃が下落するということはなさそうである。

ただ、神奈川県にも大きな弱点がある。それが20㎡未満、築10年以内という、市場ではあまり選ばれないワンルームが多数供給されているエリアが広範にあるという点。

「横浜市から川崎市にかけての、京浜東北線、京急線、相鉄線沿線には比較的築年数は新しいのにもかかわらず、市場では不人気な狭いワンルームが集中して供給されている地域があり、それはイコール礼金、敷金の取れないエリア。神奈川県は駅近くにマンションが集中しており、そちらは人気が高いのですが、駅から遠く、狭い物件は不人気。市場全体としてその影響で空室率が高くなることはあり得るかもしれません」。

影響は軽微だが、単身者向け物件がだぶつく埼玉県

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埼玉県も世帯数の増加は月に4000世帯前後から3700世帯ほどと減少はしているものの、東京23区ほどの減少ではなく、人の流れに関してはコロナの影響は軽微。2020年11月の転入超過数も1500人ほどと順調で住宅の需給バランスも均衡しており、2021年の賃料、空室率は横ばいが続くものと思われる。ただ、埼玉県では築年数の古いワンルーム、1K、2Kなどといった選ばれにくい物件が多く、そうした物件の空室率は高くなっている。

人口流出減少、空室率改善で首都圏では勝ち組の千葉県

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首都圏では唯一、空室率TVI(タス空室インデックス)が改善しているのが千葉県だ。1年前の2019年10月に16.44だった空室率TVIは2020年10月に14.50と1.94ポイント改善されているのである。東京23区が12.69から13.47と上昇、つまり空き家が増えていることと比べると、その違いがおわかりいただけるだろう。

その理由として大きいのは他県への人口流出が少なかったこと。これまで、就職、大学進学、転勤などで地元を離れていた人たちが地元に留まっているのである。加えて2020年11月の転入超過数は前年同月のマイナス300人近くから780人にまで増加している。人が留まり、入ってきているわけである。

その一方で賃貸住宅の新築着工戸数は2017年10月以降微減傾向が続いている。借りる人が増え、物件がそれほど多く供給されていないわけで、その結果が空室改善ということなのである。

また、千葉県では2019年秋の2つの台風で多くの家屋が被害を受けており、これに対して民間賃貸住宅が応急仮設住宅として使われている。もちろん、賃貸住宅も被災した。それが供給減少に繋がり、結果として空室率改善となったとも考えられる。今後、急に住宅が増えるとは思えないことを考えると、地域にもよるが物件が少なく、探しにくくなることもあり得るかもしれない。

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