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アングル:1クリックで株取引、個人投資家がブームけん引


[ロンドン 20日 ロイター] - 「ろくに従業員もいない企業の超低位株が1000%跳ね上がった」「高校の投資クラブが元手を倍にした」――。こういった現象が示しているのは、今年に入ってからも一向に衰える気配がない個人投資家の株式取引ブームの一端だ。

年初から3週間が経過して世界中の株価が高値を更新している中、しばしば自宅のコンピューターや携帯端末を駆使して取引する個人投資家が、ラッセル3000指数を構成する小型株を押し上げる原動力となっている。同指数で最も成績が良い20銘柄のうち10銘柄は、今年初め以降におよそ75%上昇した。

同指数には、投資銀行の調査部門がほとんど、あるいは全くカバーしていない銘柄もある。その1つで、マリファナに関するデータ収集を手掛けるアカーナは今年に入って株価が2倍となっている。

店頭上場のヘルスケア企業シグナル・アドバンスに至っては、暗号化メッセージアプリを提供する未上場企業「シグナル」と間違われ、わずか1週間で株価が0.70ドルから70ドルに跳ね上がる珍現象が起きた。テスラ創業者のイーロン・マスク氏がツイッターにこのアプリを薦める投稿をしたことがきっかけだ。

シグナル・アドバンスの株価は結局7ドルまで下がったものの、早いうちに買って売り抜けた人は相当なもうけを得たとみられる。

ドイツ銀行のストラテジスト、ジム・リード氏は「とても正常な市場とは思えない」とあきれかえる。

個人投資家の取引仲介プラットフォームを運営するeToro(イートロ)はロイターに、今月1-11日に38万人を超える新規利用者の登録があったと明かした。2020年の利用者は500万人で、このうちの3分の1は同年中に登録され、プラットフォームにおける売買高は19年から5倍膨らんで1兆5000億ドルに達したという。

UBSのデータによると、20年の米国の株式売買注文に占める個人投資家の割合は20%近くと19年の15%から上昇。ロングオンリー型ファンドの割合は9.7%から6.4%に下がった。

ある米銀の株式取引戦略責任者は「昔は、デートレーダーになりたければ日中に仕事をするのをあきらめるしかなかった。今の状況は(1990年代終盤から2000年までの)ドット・コム・バブル当時とまるで違っているし、恐らくより定着するだろう」と述べた。

<危険な兆候>

個人投資家が市場に殺到している理由は、これまでに十分な説明がなされてきた。つまりロックダウンが貯蓄率を押し上げ、経済対策に基づく現金給付によって人々の懐が温かくなったほか、賭けの対象となるスポーツイベントが中止になった、はたまた貯金はしても利息が付かないという事情がある。

さらに重要なのは雨後のたけのこのように投資アプリが相次いで登場し、アマチュア投資家が楽々と世界中の株式を売買できるようになったことだ。20年5月時点で1300万人の利用者を抱える最有力アプリの1つであるロビンフッドの場合、利用者の半数は初心者で、年齢の中央値は31歳と低い。

そして10代の若者の一部までが投資家気取りになっている。MFSインベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ロブ・アルメイダ氏は、16歳になる息子が、学校で投資クラブを主宰する友人から、MFSの20年の投資リターンが30%だったことでばかにされたと明かした。投資クラブがアプリを使って元手を2倍ないし3倍にしているため、「息子の友人らは(MFSの)リターンが相当貧弱だと考えてからかった。私にとって見れば、それは全てフロス(小さなバブル)を示唆する材料でしかない」という。

またアルメイダ氏は、株式市場に個人資金が大量に入ってくるタイミングでちょうど新規供給が枯渇しており、それはエアビーアンドビーやドアダッシュといった銘柄の価格が上場時に2倍になったことでも明らかだと述べた。

個人がデリバティブ取引に向かっている兆しもうかがえる。アルメイダ氏は、保有者があらかじめ決められた価格で当該銘柄を買う権利を得られる個別株オプションの購入が大きく拡大していると指摘する。

世界最大のデリバティブ清算機関オプションズ・クリアリング・コーポレーションのデータに基づくと、20年12月の個別株オプションの建玉は6010万枚と、同年1月のほぼ3倍に膨らんだ。

こうした傾向は懸念されている。なぜならデリバティブの売り手となるディーラーは、原資産の銘柄を買い持ちしてリスクヘッジする必要があり、一段と株価を上昇させているからだ。

相場の勢いと2桁のリターンが得られるとの期待からより多くの人が市場に吸い寄せられる構図について、専門家からは相場急落が避けられないと心配する声が聞かれる。フォート・セキュリティーズのセールストレーダー、キース・テンパートン氏は、流動性が低い小型株で、投機的でバブルに似た動きが見られるのと、ネット上で投資情報のやり取りが急増したことに因果関係があると分析。「過去を振り返れば、こうした状況は好ましくない結末を迎えている」と警告した。

(Thyagaraju Adinarayan記者、Saikat Chatterjee記者)

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