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起業に求めてはいけないこと、それはお金と安定

日経ビジネス1月18日号は表紙からしておおっという感じです。柳井正氏の絶妙な顔つき、そしてタイトルがBeing Good, Fast Retailing 's Challengeと英語で表記されています。まるで外国のビジネス雑誌に柳井さんが紹介されているようです。

そして特集の本文より一番印象的だったのが巻頭の「編集長の視点」です。「誰でも作れるユニクロ 凡人と柳井氏の違い」と題し編集長自身と柳井氏を比べているわけです。地方出身、同じ大学、同じ学部学科、ともに大学時代は勉強せずと似た境遇だったというわけです。おまけにユニクロの原点である小郡商事はさびれた商店街の中にあったのに、片や一介の会社員、片や日本一の富豪となった差は何処にあるのか、というわけです。大爆笑してしまいました。

先日ご紹介した岡藤正広さんもそうですが、柳井さんも好きかどうか別にして少なくとも成功した起業家として学ぶべき点はたくさんあります。そしてこの編集長の率直な質問、何がここまで差をつけたのかでしょうか?私はサラリーマンを20年やった後、起業人生が16年となった今、感じるものはあります。

僭越ながら私の話を先にしましょう。日本に最後に行ったのは昨年2月。その後、何度か日本に行くことを考えましたが諦めました。最大の理由は日本カナダ双方で2週間の隔離があることです。経営者にとってこれは経営の死を意味します。

私は日本から昨年2月に戻ってきてから実をいうと完全休養の日はほぼありません。常に何かが起きています。この1年間、私は土日以外、会社に行かなかった日は一日もありません。コロナでそれはだめじゃないか、と言われますが、歩いて2分の場所にあり、ほとんど人が出社しなくなったオフィスビルですし、個室ですからそれは大丈夫です。

家で仕事をするのとオフィスはどちらが良いかといえばオフィスに100%軍配が上がります。それはモードが違うのです。リモートでも問題なし、という声は多いのは知っています。しかし、ごく限られた決められた業務だけならできるかもしれませんが、私はメンタル的に無理なのです。

おいおい、欧米では2-3週間のバケーションは普通じゃないか、と言われるでしょう。しかし、それは事実がきちんと表記されていないと思います。多くの経営者は2-3週間のバケーション中、全てを忘れて休みを取ることなどまずありません。欧米のバケーションはそもそもがワーケーションに近いコンセプトがあり、隙間を見て仕事をしています。つまり、経営者なんて仕事が好きじゃないとやってられないのです。すべてに最優先して仕事に全エネルギーを突っ込むしかないのです。

日本電産の永守重信氏の自叙伝を読むと土日はほぼ全て会社関係の読み物に時間を充てています。楽天の三木谷社長も本場欧州のサッカーを見るためにわざわざスペインあたりまで行っていましたがサッカーを見る以外はずっと仕事をしていたと何かで読んだ記憶があります。

日経ビジネスのこの柳井さんの特集を読んでさすが世界第2位が見えてきたアパレルの雄だと思ったのは様々な仕組みがずいぶん前から取り入れられている点です。今、多くの経営者が唱えているSDG’sもユニクロは20年前の2001年に社会貢献室が作られてるのです。

最近では「リサイクルダウン」と称して自社で売ったダウンジャケットを回収し、中身の羽毛を再利用する商品開発をしましたが、これらを細かく指示しているのは全部柳井さんなのです。同社が今でも「柳井商店」と揶揄されるのは社長の一言が全てなのですが、それぐらい柳井さんが賭ける気持ちが強いということなのです。そのために惜しみない時間とエネルギーを割いているのです。

では一流の経営者は何が楽しくて経営しているのでしょうか?ずばり、経営という責任あるゲームなのです。(対比としては株式投資は自己完結型という意味で無責任なゲームです。)但し、そこから得られる報酬はどっちでもいいのです。どうせ使う時間すらないし、芸能人がよくやるこれみよがしの豪邸なんて興味がないのです。私だって住めば都という気持ちはありますが、さすが不動産デベロッパーなので自分で建てたコンドに住んでいますが。

経営者にとって安定はある意味、禁句だと思っています。安定を求めた瞬間その会社の魅力はゼロに等しくなります。たとえばREIT、不動産投資信託の会社でぐいぐい成長しているところはありません。理由は安定配当をすることが最大の目的だからです。経営者は野武士のようなもので切った張ったの戦国時代をずっと生きているようなものなのです。

私にとって一番価値があるのは時間だと思っています。最近は30分の時間が取りにくくなっています。だけど、それをどうにかして盗むから大事な30分の時間を無駄にできなくなるのです。

日本では新規上場企業ブームのようです。しかし、数多くの新興市場の経営者が柳井さんのように大きく育たないのはなぜなのでしょうか?2000年代初頭の異業種交流ブームと起業家の集りはある意味、我々の世代とは別の世界でした。

生活が派手。一流店でワインを転がしながらステータスの自慢をする、そのために上場し、会社をデカく見せる、そんな人たちを私はたくさん知っています。時の人を囲み、小金持ちたちが持ち上げる世界です。今でも六本木の夜の隠れ家的店舗にはそういう人たちが集まります。しかし、それは本質ではない、これに気が付いてもらいたいのです。

日本だけでも何十万人といる社長さんが目指すことは何か、最後に柳井さんの言葉を掲げたいと思います。「僕が尊敬する経営者は全部細部まで知っている。細部まで知ろうと努力する人しか生き残ってないんです。」

お任せも自動モードもないということです。

では今日はこのぐらいで。

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