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私がSDGsの説明をうさんくさいと思う理由~たかまつなな「お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs」を読んで~

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元経産省官僚の宇佐美典也さんに「私が○○を××な理由」を、参考になる書籍を紹介しながら綴ってもらう連載。第3回のテーマは、2015年9月に国連のサミットで決められた国際社会共通の目標である「SDGs」を語る難しさについて。入門書ではどうしても「うさんくさ」く見えてしまう事情があり、今回紹介する書籍の著者・たかまつななさんの抱える課題もそこから見えてくるといいます。


先日たかまつななから本が送られてきた。
私はたかまつななウォッチャーで、TwitterやYouTubeを定期的にチェックしている。

ではたかまつななのファンかというとそういうわけではない。私もそろそろ「自分さえ良ければいい」という歳を超えて、39歳といういいおっさんになりつつあるので、この狭いネット政治界隈のコミュニティ全体の活性化のために次世代の論客の活躍に期待するようになっている。そういう意味でたかまつななに限らず、20代で政治に興味を持つインフルエンサーの活躍は応援したいと思っている。

たかまつななに感じる「苦しそう」

BLOGOS編集部

ただこれは若いインフルエンサーへの期待という一般論で、「たかまつなな」という個人に関して感じているのは、「随分と純粋で志の高い人だな」と感心しつつも、「その思いや知名度に知識が付いていってなくてなんか苦しそうだよね」というギャップである。

そのギャップが良くも悪くも彼女の特徴で、これを埋めるために他者の力を借りることになり、そうしたリベラル界隈での担がれ方が若干鼻につくというところもある。例えば、津田大介との対談動画などを見ながら低評価ボタンをおすのだが、ただ自分の足らざるところを、自分の発信力や知名度を生かして他者を巻き込むことで埋めようとするアプローチ自体は個人的には前向きに評価している。

余談だが私は当初彼女について「芸能人の生き残り戦略の一つとして政治関連のフィールドに特化することを選んだのかな」と思っていたのだが、本人と何度か話した限りでは、お金を儲けようという意識はあまり感じられず、活動も非営利に近いものが多い。彼女が政治関連の情報発信を続ける理由は経済的な動機ではなく、本人が折に触れて口にしている通り「政治をより良くしたい。次世代の子どもに政治のツケを回したくない」という動機が主であるように思えた。そうした姿が、身の丈で生きていこうという思考にすっかり囚われてしまっているおっさんからは少し懐かしく、眩しくも見えた。

著書に垣間見える「他者の力を借りるたかまつシステム」

というわけで前置きが長くなったが、今回送られてきた「お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs」という本はまさにそういうたかまつななの「志の高さに比して足りない知識を他者の力を借りて埋める」というアプローチ、たかまつシステム、をよく体現した本である。

もしかすると、この本の中身を作成するにあたって大きな(ほとんどの?)貢献をしたのは監修者である東京都市大学大学院教授の佐藤真久氏なのかもしれない。そしてたかまつななは作者というよりは、全体構成を手がけたプロデューサーに近そうだ。

それ自体は別に非難されるものではない。よく言われる池上彰の名のもとに番組スタッフたちが取材する「池上システム」と同様、そういうシステムを作れるのはごく限られたインフルエンサーで、発信力を生かしてそういうシステムを作るのもまた立派な仕事であると思う。本人の「次世代にツケを残さない政治」という志向からも、「SDGs」というテーマを選んだのは妥当な選択肢である。

写真AC

中身についてであるが、文字通りSDGsに関する入門本といったところである。

そもそもSDGsとはなんたるや、というと、Sustainable Development Goalsの略で「国連が定めた2030年までに達成したい17の持続可能な開発目標」のことである。具体的には

  • 1. 貧困をなくす
  • 2. 飢餓をゼロに
  • 3. すべてのひとに健康と福祉を
  • 4. 質の高い教育をみんなに
  • 5. ジェンダー平等を実現しよう
  • 6. 安全な水とトイレを世界中に
  • 7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  • 8. 働きがいも経済成長も
  • 9. 産業と技術革新の基盤を作ろう
  • 10. 人や国の不平等を無くそう
  • 11. 住み続けられるまちづくりを
  • 12. 作る責任、使う責任
  • 13. 気候変動に具体的な対策を
  • 14. 海の豊かさを守ろう
  • 15. 陸の豊かさを守ろう
  • 16. 平和と公正をすべての人に
  • 17. パートナーシップで目標を達成しよう

という17の分野に分けられ、それに付属するターゲットとして169の項目が挙げられている。例えば私が生業としている再生可能エネルギー分野では、2030年までに

「安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する」
「世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる」
「再生可能エネルギー、エネルギー効率、および先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究および技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する」

と言ったことが書かれている。

これ自体は「まぁ綺麗事なんだけど、それはそうだよな」と納得できる内容、項目であるし、実際世の中全体を広く啓蒙し、「持続可能な世の中を作る」という善行(?)を動機付けするには、こうした粗い分野分けと説明というものも重要なんだろうと思う。

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