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  • 階猛

むしろ逆効果-感染者の入院や調査の拒否に刑罰

緊急事態宣言の中、18日から通常国会が始まりました。今国会の最初の重要法案が「新型インフルエンザ特措法」と「感染症法」の改正案です。「新型インフルエンザ特措法」の改正が行われると、緊急事態宣言が発令されていない地域でも、政府が指定した地域では「まん延防止等重点措置」が行われることになります。

この場合、知事の権限で営業時間短縮等の要請がなされ、要請に応じない事業者には命令、命令に違反した場合は行政罰である30万円の「過料」となります。しかし、そもそもどのような場合に「まん延防止等重点措置」がとられるのかが不明確です。要請や命令に応じた事業者に十分な支援が行き届く保証もありません。まずは「まん延防止等重点措置」の効果を見た上で、真に必要なら「過料」の規定を追加すべきです。

「感染症法」の改正案では行政罰より重い刑罰を設けようとしています。感染者がホテルなどでの宿泊療養に応じない場合、入院措置の対象となります。これを拒否したり入院後に逃げたりした場合は、1年以下の「懲役刑」などが科されます。また、感染者が感染経路などの調査に応じなかったり、うその答えをしたりすると50万円以下の「罰金」が科されます。

刑罰は行政罰と違って、捜査、裁判に応じる負担があり、前科にもなります。したがって、①刑罰を科す目的、②刑罰を必要とする理由、③刑罰がもたらす影響などを慎重に検討した上で、刑罰を設けるかどうかを決めるべきです。

今回の改正案では、①刑罰を科す目的は、コロナの感染者が入院や調査を拒否すれば、感染者を隔離できなくなって感染が拡大してしまうので、こうした事態を防ぐことだと理解できます。しかし、②実際に入院拒否や調査拒否がどれぐらい起きているのか政府は把握しておらず、刑罰を必要とする理由があるのか不明です。むしろ東京などの都市部では、医療機関がひっ迫して入院したくてもできない人や、保健所が忙し過ぎて調査が及んでいない人が増え続けている状況です。感染拡大を防ぐためには、こちらの問題を先に解決すべきです。

そして、③刑罰がもたらす影響としては、入院拒否や調査拒否を実際に処罰しようとすると、ただでさえ多忙な医療機関や保健所の関係者が捜査や裁判に協力しなくてはならなくなり、本来の業務に支障が出ることが考えられます。入院や調査に抵抗がある人は、刑罰を避けるために検査や受診を控えるようになって、そこから感染が拡大する危険もあります。

保健所が刑罰を背景に業務を行うとなると、住民との間で混乱や対立が生じやすくなるでしょう。結局のところ、入院拒否や調査拒否に刑罰を科すことは、感染拡大を防止するという目的にとって逆効果となりかねません。政府案の修正を強く求めていきます。

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