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「広域一元化」条例の表と裏

1月22日第22回の副首都推進本部会議が開催され、『府市一体化・広域一元化に向けた条例について』概要が示されることとなった。(資料2

 昨年、11月1日の住民投票の後に、大阪府と大阪市の「広域行政の一元化」を目指す新たな条例を作る方針が松井市長より示されてから、一連の動きのアウトプットが条例案として2月にも大阪府議会・大阪市会に上程されることとなる予定だ。

 実は、示された資料をサラッと見る限りにおいては、反対すべき条例という印象を持つものではない。しかし、住民投票で否決されたにもかかわらず、大阪市を存置したままであっても、大阪市の権限や財源を大阪府に移譲するような都構想モドキの趣旨があるとすれば到底容認することはできない。

 「二重行政の無駄は解消すべきではないか。」「府市は連携を強化し、一体的に実施する事業は一元的に執行した方がスピーディーに事業が実施されるのではないか。」このような問いかけに反対する人はいないだろう。「広域一元化」条例の表の顔は、まさに問いかけに対する答えであり、副首都推進本部(大阪府市)会議というものを条例で位置付けて府市の一体的な運営を推進していくというものである。

 この表の顔を見るときに、思い出されるものがある。大阪戦略調整会議(以下、大阪会議)である。2015年の住民投票否決の後に、自民党がこれまで提案してきた大阪広域戦略協議会をブラッシュアップして提案した会議体であり、維新の会も最終的に設置条例案に賛成する形で成立したものだ。結果的に、大阪会議は具体的な政策の議論を何一つできないままに「やっぱり大阪都構想が必要だ」というロジックを構築するために潰されてしまったが、条例(案)の趣旨や基本理念は大阪会議と大きく異なるものではない。

 条例により設置される副首都推進本部会議は、大阪府・大阪市の指定都市都道府県調整会議に位置付けられるものであり、堺市が入っていないことや議員も会議のメンバーとして参加するとされていないことは異なるものの、協議する内容についても大阪会議と概ね同じと言える。

 ただ、決定的に異なるのは、根底にある地方自治の理念と府市が一体的に事業に取り組む手法にある。見え隠れする「広域一元化」条例の裏の顔は、大阪市における自治権をはく奪する、自治略奪条例の様相であると言わなければならない。

 もう既に条例が廃止されてしまっている大阪会議の設置条例第3条には、以下のような記載がある。
第3条 大阪会議は、地方自治法第2条に定める「基礎自治体優先の原則」と「補完性の原理」の下、国から大阪府、大阪府から本市、大阪市その他の市町村への徹底した権限と財源の移譲を目指すことを旨として運営されなければならない。
地方自治法第2条に定められている都道府県と市町村の役割分担の基本原則に則って、大阪会議が運営されるべきであることが記載されている。

 ところが、「広域一元化」条例では、一元化された事業の実施主体はあくまでも府であり、「基礎自治体優先の原則」や大阪府の「補完性の原理」を逸脱するものとなっている。共同設置や委託という手法で、大阪市が持つ自治の根幹である権限のみならず財源も奪い取っていくところは、住民投票で2度も否決された「都構想」そのものだ。

 具体の事務委託にあたっての課題や副首都推進本部会議の構成員・「合意」のあり方についての問題点などについては改めて指摘をしたいと思うが、結局は、住民投票で否決された内容の蒸し返しであり、住民投票の民意を議会の力学で違えようとしていることには変わりないのだ。

 二重行政の解消、府市連携といった行政課題は確かに存在する。その解決の一つの手法が大阪都構想(大阪市廃止・特別区設置)というものであったのは事実である。ただ、大阪市を存続させるからといって、大阪市の自治略奪を条例で正当化する流れを作ることは、特別区設置以上にタチが悪い。

条例化などせずとも、無駄な二重行政があれば府市で調整して解消すれば良いことである。大阪府と大阪市は、首長の意見が異なれば喧嘩ばかりで事業は前には進まないというのは、都構想議論の時からの勝手なロジックであり、市民が求める必要な事業についてはこの10年間のみならず、それ以前からも府市連携で調整してきている。

 コロナの感染拡大は高止まりとは言え、まだまだ減少に転じるところまでも至っていない緊急事態宣言の最中において、昨年の夏から秋にかけて散々時間と労力を費やしてきた話を再びしなければならないのは非常に残念だ。ましてや多額の巨費を投じて、コロナ感染拡大の心配をしながらも住民投票で決着をみたにもかかわらずだ。

 「広域一元化」条例については、表だけを見て誰もが賛同できるような印象があるが騙されてはいけない。裏の顔も見た上で判断しなければならない。

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