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前に進むのか、後ろに戻るのか~効果の無かった政策をさらに推し進めることで前に進めるのか

「首相は14日の党首討論で、切迫した状況を切り開くための決断の重要さを示した。それをポスターに表現した」

26日、次期衆院選用のポスターとテレビCMの第2弾を発表した民主党馬淵政調会長代理はこのように述べた。それにしても「切迫した状況を切り開くための決断の重要さを示した」とは、何をかいわんや。民主党の厚かましさが滲み出ている。野田総理が党首討論で示した「切迫した状況を切り開くための決断の重要性」は、野田政権の「追い込まれ解散」を防ぐという「民主党の切迫した状況を切り開く」ものでしかなく、「国家の切迫した状況を切り開くもの」からほど遠いもの。

ポスターには「動かすのは、決断」の文字とともに、真剣な表情で立つ野田佳彦首相をあしらった。直近の支持率が20%強(NHK:22%、読売:21%)で不支持率が3分の2前後(NHK:64%、読売:69%)と、「民主党の切迫した状況を切り開く」ことすら出来ない野田総理の真剣な表情をあしらったところに、民主党の「野田一神教化」が表れている。

12月1日から放映される新CMは「消えた年金の回復」「医療の立て直し」「高校無償化」をテーマにした3本で、民主党政権の成果をアピールする狙いがあるそうだ。果たして、この3つの分野で「民主党政権の成果」があったと感じている有権者がどれほどいるのだろうか。

民主党は「約5,000万件の未統合記録については、約1,647万件(約1,296万人)の年金記録を統合済み(平成24年6月現在)」「記録が見つかり増えた年金額の総額(生涯額)は、少なくとも約1.6兆円(24年8月現在)」という自己検証結果をもとに「消えた年金の回復」を成果だと訴える腹積もりのようだ。

しかし、年金制度そのものを維持するのに必要不可欠であった「2010マニフェスト」で掲げた「名目成長率3%超、実質成長率2%超の経済成長(2020年度までの平均)」を達成出来ないどころか、その障害にしかならない消費増税に走り、AIJ事件に止めを刺される形で厚生年金基金制度自体を廃止方向に追い込むなど、「消える年金」問題を顕在化させた罪の方が数段大きいはずである。

「高校無償化」もしかり。「給食費が払えない。学用品が買えない。親の失業など、さまざまな理由で子どもの貧困が深刻化。就学援助を受ける小中学生は全国で157万、およそ6人に1人と過去最多」(NHK特報首都圏10月19日放送「チャイルド・プア~急増 苦しむ子どもたち~」)と、「日本の子供の貧困率は先進国の中では4位」という惨憺たる経済状況を招いた中での「高校無償化」を「民主党政権の成果」として掲げる神経自体が、国民との乖離を示すものでしかない。

27日付の日本経済新聞掲載の「衆院選‘12 各党責任者に聞く」という記事の「政権公約で最も訴えたいものは」との質問に対して、民主党の安住民主党幹事長代行は、「経済の再生と社会保障の充実だ。規制緩和や企業が投資しやすい環境を作る」と、自民党の石破幹事長も「経済・雇用の回復と規律ある財政だ。経済再生は財政再建と車の両輪」と述べ、両党とも真っ先に「経済再生」を掲げている。

しかし、両党の戦略で「経済再生」が可能なのだろうか。

日本は20年以上、「規制緩和や企業が投資しやすい環境を作る」ことで、経済の再生を図ってきた。しかし、その結果は芳しいものではない。名目GDPがピークであった1997年の第4Qから、2012年第2Qまでの期間の日本の名目平均GDP成長率は年率▲0.68%である。

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自民党の安倍総裁は、「建設国債」の日銀市場買入れ等「かつてとは次元の違う金融緩和政策」で「経済再生」を図るとしている。しかし、日銀はこの期間に、世界に先駆けて量的緩和政策に踏み切り、1年前からも量的緩和政策を採り続けている。しかし、その効果は名目GDPの推移をみる限り、経済を下支えしている程度であり、「経済再生」の原動力になったとは言い難い状況にある。

「われわれが政策を発表しただけで円は下がった。下がったことで一体、 何人の雇用が守られたか。日銀には謙虚に考えてもらいたい」

数日前、安倍総裁は為替市場が円安に転じ、80円台に乗せて来たことを受け、このように述べた。確かに、市場はUS$やユーロに金融政策面で材料出尽くし感が強まって来ていたこともあり、安部総裁が提供してくれた話題に「反応」した。しかし、僅か数日、僅か数円円安に振れただけで「何人の雇用が守られたか」と大見得を切られても困るというのが国民の本音だろう。再び円高に振れた時には、「日銀と民主党のせいで何人の雇用が失われたか」と発言するつもりなのだろうか。

「規制緩和」「企業が投資しやすい環境作り」「日銀量的緩和」…。今の政党が掲げている経済対策は、この「失われた20年間」にやり続けてきた政策でもある。「失われた20年」からの脱却を図れなかった政策に、「次元の違う」プロモーション費用を掛けて「リバイバルヒット」を狙っているとしたら、さびしい限りである。

日本経済は、「規模を追う経済」から「効率化を図る経済」へと変化して来ており、政府が規模を追わなければならないのは、名目GDP位である。そのためには、「やりやすい分野のみの規制緩和」や「大企業重視の環境作り」「日銀に責任を押し付ける政策」というこれまで効果が見られなかった政策を根本から見直すくらいの「これまでの次元とは異なる経済政策」が必要な時期に来ている。

「前に進むのか、後ろに戻るのか」

過去に効果が上がらなかった政策を、規模を拡大して前に進むというのは、後ろに戻るのと大同小異である。

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