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ニッチなECサイトを成功させる「3つの行動」

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ボブルヘッド(首振り人形)は、米国ではかなり親しまれている玩具だ。2012年に、MLBの各球団がファンサービスとして最も多く配布したアイテムでも、人気選手をモデルにしたボブルヘッドがTシャツなどのグッズを抜いて1位になっている。

ボブルヘッドを販売するECサイトの1つ、Bobbleheads.comは、「開設初日から訪問者が絶えたことがない」とオーナーが豪語するほどの集客力を誇る。

以下では、The Huffington Postの記事を参考に、このECサイトのこれまでの歩みを紹介し、客足が好調な理由を見ていく。

偶然のめぐり合わせから始まったビジネス

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Bobbleheads.comのオーナー、Warren Royal氏(以下、ロイヤル氏)は、約10年前には、IT関連企業を経営し、ウェブサイトの開発に携わっていた。ところが、2000年に「ドットコムバブル」が崩壊。

収益の激減に事業の継続を断念し、住宅ローン会社のIT部署に職を得る。すると今度は2007年に「サブプライムローンのバブル」が崩壊し、またしても失職。

次の針路が決まらず、しばらく自宅で過ごしていたある日、インターネットで「Bobbleheads.com」というドメイン名がオークションに出されているのを発見し、落札した。

投機を目的とした落札だったのだが、ドメイン名を獲得した後、ボブルヘッドというニッチ市場の潜在需要の大きさに思いがいたり、「自分でビジネスを築いてみよう」と一大決心する。

2008年の大統領選挙で飛躍的に成長

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ロイヤル氏にとって幸運だったのは、サイトの開設が2008年の米国大統領選挙とタイミングが合ったことだ。黒人初の大統領候補、オバマ氏の台頭で選挙に熱狂的な関心が集まり、政治家をモデルにしたボブルヘッドを求める需要が急増したからだ。

オバマ氏とマケイン氏、その他、予備選の候補者のボブルヘッドを手に入るだけ仕入れてサイトに掲載するが、掲載とほぼ同時に完売するという状況が続く。

商品倉庫が自宅の地下だけでは足りなくなり、小型倉庫を確保するが、それでも間に合わなくなり、第2の倉庫、そして第3の倉庫と在庫を置くスペースを拡充していく。

卸売り専門からボブルヘッド製造ブランドへと転換

選挙戦途中で、マケイン氏の陣営が副大統領候補としてサラ・ペイリン氏を任命すると、今度はサラ・ペイリン氏とミッシェル・オバマ夫人のボブルヘッドの需要が高まる。

しかし製造しているメーカーはほとんどなく、商品が見つからない。わずかに見つかった商品は、品質に納得がいかないものだった。

「需要と供給の間」と「理想とする品質と現実の品質の間」に大きなギャップがあることを認識し、このギャップを埋めようと、ロイヤル氏は中国に飛び、品質の要求を満たせる工場と職人を見つける。

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こうしてミッシェル夫人とサラ・ペイリン氏のボブルヘッドもラインナップに加えることができた。同時に、Bobbleheads社は卸売り専門業者から、「Royal Bobbles」という、ボブルヘッドの独自ブランドに変化した。

製品の質を追求した結果、スミソニアン博物館にも納入

自社製品を提供するようになり、ロイヤル氏は他社との差別化のために徹底して品質にこだわった

ジョージ・ワシントンを始め、歴代大統領やパットン将軍など、実在した人物をあつかったボブルヘッドでは、歴史資料にあたり、装身具もできるだけ忠実に再現した。

その結果、同社のボブルヘッドはスミソニアン博物館やアーリントン国立墓地などにも納入することになり、「Royal Bobbles」がマスコミで取り上げられる機会も増えていく。

現在の主力商品は特注ボブルヘッド

ロイヤル氏は、サイトにやって来たユーザーの検索キーワードから、有名人をモデルにした商品以外に、一般人をモデルにしたオーダーメイドのバブルヘッドを求める需要があることに気づいた。

そこで、大統領選挙の際に培った中国の工場と職人との関係を活用し、ボブルヘッドのオーダーメイドにも対応し始める。

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カスタムメイドのボブルヘッドは、政治家や芸能人、スポーツ選手などをモデルにした商品と違い、流行に左右されることがなく、常に一定の受注が見込める。

また、商品を受け取った顧客が商品の画像や動画をソーシャルメディアでシェアすることも多く、自然と宣伝になるので、サイト側にとってもメリットが多い。

成功させた「3つの行動」

  1. ちょうどいいサイズのニッチ市場を見つける
    いまからECをはじめるなら、大企業が興味を示さないニッチマーケットを狙うべきだ。ただ、そこにはある程度の需要が必要だ。ものが売れないマーケットでは食べていけない。この点で「アメリカの首振り人形マーケット」は絶妙だ。ロイヤル氏は綿密な分析を通じてこの市場を発見したのではなく、偶然の産物だったわけだが、何事にもチャレンジしていく精神がこの幸運を引き寄せたことは間違い無いだろう。

  2. 手応えを感じたら迷わずアクセルを踏む
    「これは売れる」と思ったら、一気に成長させる。ニッチマーケットとは言え、成長への投資を躊躇していたらライバルがすぐにあなたの代わりに成功をおさめてしまうだろう。ロイヤル氏は、大統領選挙の際にオバマの首振り人形を買い占めた。これによって一気にボブルヘッド専門店としてのブランド価値が高まったはずだ。

  3. 真似されないブランドを作る
    ブランドを確立したあとも安心はできない。二番手三番手はすぐに現れる。そういった類似ブランドが真似できないことをやってのけることがブランド強化の王道だ。ロイヤル氏の大きな功績の一つは「スミソニアン博物館への納入」だろう。これは一番手だからできることだ。その後もオリジナル商品の制作など、他社との差別化、唯一化をスピーディに進めていることで、ブランド価値の向上を売上の成長を同時に実現している。

bobbleheads.comは、興味のない人には一生お目にかかることが無いお店だ。
しかし、ECサイトを立ち上げる人にとっては、たとえ商品に興味がなくとも一度はチェックして欲しい。そんな理想的な成長を実現したECサイトだ。

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