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原点に還れぬまま行きつく先はどこなのか。

例年なら秋の風物詩、だが今年は新型コロナの影響で、”季節外れ”なこのタイミングでの発表となった。

「法務省は20日、2020年の司法試験に1450人が合格したと発表した。19年より52人少なく、政府目標の「1500人以上」を初めて下回った。同省は「裁判官や検察官、弁護士になるに当たり、必要な学識を有するかを適正に判定した結果」と説明するが、受験者数の減少傾向も続いており「法曹離れ」に歯止めがかかっていない。」(日本経済新聞2021年1月21日付朝刊・第38面)

「大台」を割り込んだとはいっても、自分の時の10倍近い合格者が輩出されているわけだから、誤差の範囲内だろう、と言いたくもなる。

ただ、こちらのデータの方はやっぱり深刻だな、と。

出願者数 4,226名(前年比 704名減)
受験者数 3,703名(前年比 763名減)
合格者数 1,450名(前年比 52名減)

今年に関してだけ言えば、春先の緊急事態宣言の影響で試験日程が大きく乱れたことで出願者数減以上に大きなマイナスインパクトが生じた、という説明をすることも一応は可能*1。とはいえ、減少幅が700人超、というのはここ数年ずっと続いている話だし、結果、合格者数を減らしたにもかかわらず、合格率が約39.2%にまで上昇してしまった、というのは、制度末期の黄昏的現象と言えなくもない。

それでも、「合格者」の方々の喜びの声があふれていたTwitterの状況などを見ると、そんな試験になっても合格が「喜び」に直結することには変わりはないのだな、としみじみ実感したりもするのだが・・・。

基本的に後ろは振り向かない主義で、特に、終わった試験のことなど、試験日の翌日にはきれいさっぱり忘れてしまっていたりする自分にとっても、あの試験(古い方だが)に合格した時の達成感は格別だった。

ただ、資格を取ることで何かが変わる、とかそんなことは当時は全く思っていなかったし、その後10年くらいもずっとそうだった・・・というか、会社組織の中で位が上がれば上がるほど、ヘタに資格を持っていることが認知されているがゆえに、自分のやりたいことからかえって遠ざかってしまうことの方が多かった気がする。

担当職であれば資格が担保する「専門性」が武器になることはあるだろう。マネージャークラスでも現場に近いところで仕事ができる間は、まだ武器になることはあり得る。

だが、そこからさらに高みを目指そうとしたときに、付いた色はどうしても邪魔になる。

”お前は契約書だけ見てればいいんだよ”的な理不尽なバイアスと壁を、それでも一つ一つ突き破って、最後は、自分の武器を極限まで磨きつつ事業企画に片足どころか両足を突っ込めるくらいのところまで行くことはできたのだけど、当然その代償も大きかった。

どんなに「不人気」と言われようが、”稼げる資格”としては依然として最強、というのが、今のこの資格のありのままの状況だと思っていて、手掛けるジャンルやビジネスモデルの組み方さえ間違えなければ、これだけ恵まれた武器はない、というのが、自分自身実際やってみてわかったことではあるし、皮肉なことに、こんな形で、10数年前には思ってもみなかった形で助けられているのが、まさに今の自分自身だったりもするから、まぁ何とも、というところだったりもするのだけれど・・・。

合格したまさにその時に、喜び以外の感情は必要ない。

その後に続く1年(でしたっけ?今は?)も、鮮烈な知的刺激の下でユーフォリアに浸るにはちょうど良い時間だったりもする。

だけど、その後に目の前に現れるいくつもの枝分かれした道をどう歩いていけば、何を優先して歩いていけば、自分のやりたいこと、なりたかったものに近づけるのかは、実際に歩いてみないと分からないことも多い。

そして、世の中で判断できるだけの材料を十分持たないまま突っ込んでいけばいく人が増えれば増えるほど、法曹という進路の予測可能性は下がり、「裏切られた」と感じる者も増えてくる。結果、その積み重ねが「法曹離れ」にもつながっているのだとしたら、何とも悲しいことなわけで・・・。

だから、自分は毎年のように、試験の参入障壁を下げろ、世の中で多様な経験を積んできた者が一定の割合残るような試験制度にしろ、と唱え続けているのだが*2、今年の合格者の属性等を見る限り、「原点」からは依然として離れたままのように思える。

もしかしたら、合格者の属性が多様でない分、合格した後のそれぞれの行く末が多様になればそれでいいではないか、という意見もあり得るところかもしれないが、その「多様性」をポジティブに受け止めるには、社会経験に根差した相応の胆力が必要だったりもする。

ということで、この試験が行きつく先に何があるのか。新型コロナが明けた後に訪れるであろう次の試験で、また新たなドラスチックな動きがあるのか、ということをひっそりと気にしつつ*3、再び見守っていきたいと思っている。

*1:例年なら、出願者数の減少幅よりは受験者数の減少幅の方が小さく収まっていたのだが、今年に関しては逆転している。

*2:19年度試験結果に関するエントリーは「1500人」は死守された、が・・・。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~参照。

*3:とはいえ、3日も経たないうちに忘れてしまいそうなレベルの話ではあるのだけれど。

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