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結束を掲げたバイデン就任演説、大統領令で前政権と「決別」

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As Soon As Biden Sworn In As President, Signs 17 Executive Orders To Reverse Trump Policies.

バイデン大統領の就任式は、つつがなく無事終了しました。S&P500など主要株価指数は就任式に7営業日ぶりに最高値を更新し、船出にあたって追加経済対策への期待を織り込んでいるかのようですね。

就任演説を振り返ると、2,374語で構成されていました。トランプ前大統領までの歴代平均が2,337語ですから、それほど長くはありません。

就任式のテーマが「米国の結束(America Unite)」とあって、「結束」を意味する単語は12回登場しました。個人的には、特に「私は1月のこの日、私は魂全てをここに注ぎ込む。米国民を結束させ、国家を結束させる。米国民一人一人に、この大義に加わるようお願いしたい。怒りや恨み、憎悪、過激主義、無法、暴力、病気、雇用の喪失、希望の喪失という共通の敵と戦うべき結束しよう。結束により、素晴らしく、重要なことが達成できる」とのフレーズが印象的です。

その他、登場回数が多かった言葉は「民主主義」で、実に11回でした。第2次世界大戦後の1949年に就任したトルーマン大統領(当時)や戦中にあった1941年に3回目を迎えたルーズベルト大統領(同)の9回を超え、過去最多を更新しています。米議事堂襲撃事件の爪痕が深い状況で、結束を呼び掛ける上で「民主主義」という言葉は欠かせなかったのでしょう。余談ながら、筆者はバイデン政権を「3E」と呼ばせて頂きましたが、中西輝政氏は2021年1月号のVoice誌で”Enlightened Self Interest(見識ある自己利益)”という言葉を使われていたようですね。「他者の利益のために行動することで、結局は自身の利益を達成しうる」という意味で、名著”アメリカのデモクラシー”を執筆したアレクシ・ド・トクビルの言葉です。

就任演説のスピーチライターは、ビナイ・レディ(Vinay Reddy)氏というオハイオ州出身のインド系アメリカ人でした。同じ州出身の民主党上院議員で重鎮のシェロッド・ブラウン議員の下で働いた後、オバマ政権2期目にバイデン副大統領(当時)のスピーチライターに就任していた人物です。インド系アメリカ人の政権関係者としては、ハリス副大統領と行政管理予算局(OMB)局長に指名したニーラ・タンデン氏、医務総監とコロナ対策担当のビべク・マーシー氏と合わせ、少なくとも4人となります。

バイデン氏は就任演説で結束を呼び掛けた半面、事前に確約した通りトランプ前政権の政策から決別すべく17の大統領令(覚書)に署名しました。詳細は、以下の通り。

チャート:初日に署名した大統領令

(作成:My Big Apple NY)

チャート:過去の大統領との比較

(作成:My Big Apple NY)

こうしてみると、バイデン氏が格段に多いのですよ。トランプ氏の政策撤回への力強い意気込みと共に、政策予見性の高まりを感じさせますね。

バイデン氏が結束を訴えた裏側で、就任式に出席せずフロリダ州の別荘へ向かったトランプ氏は最後の演説で「我々はあなた方のために戦う・・・何らかの形で帰ってくる」と発言していました。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が事前に新党結成を検討中と報じていましたが、その狼煙なのか。マコーネル共和党院内総務は「トランプ氏が反乱を扇動した」と糾弾し、ペンス前副大統領と共にトランプ氏を見送ることはありませんでした。その陰で共和党保守派は、仮に主流派がトランプ氏の弾劾裁判を支持した場合「(共和党は)壊滅する」と警鐘を鳴らしたものです。トランプ氏が新党を結成した場合の不確実性が高まること必至です。

上院での弾劾裁判と同時に、民主党はトランプ氏の2024年大統領選出馬を止めるべく、アメリカ憲法修正14条第3節を通じて、”公職永久追放”を目指すともいわれています。憲法修正14条は“暴動=insurrection”、“反乱=rebellion”に加担した者を議員や選挙人に選ばれないよう規定。憲法学者によれば、第5節と合わせ上下院の単純過半数と大統領の署名で成立し、裁判所が判断する見通しだとか。

弾劾裁判を進める民主党に、就任前はコロナ対策と指名承認を優先すべきとのメッセージを送ったバイデン氏。ホワイトハウスのサキ報道官によれば、弾劾裁判にバイデン氏は関与しない方針なんですね。「結束」を求める傍らでこうした姿勢を打ち出すことが是と判断されるのか。今後の支持率動向が判明することでしょう。

ちなみに就任直前のワシントン・ポスト/ABC世論調査結果では、バイデン氏の支持率は67%。トランプ氏を上回ったとはいえ、オバマ氏やブッシュ氏(子)、クリントン氏を大きく下回ります。

チャート:就任直前の支持率

(作成:My Big Apple NY)

さらに「米国を正しい方向に導く」との回答は49%と、2009年のオバマ氏の61%に遠く及びません。ホワイトハウスの優先課題リストをみると、選挙公約から変わったみたいですね。トリプルブルーの船出となったバイデン政権ながら、難しい政策の舵取りが迫られそうです。

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