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「オバマやトランプと違って…」アメリカ人が過去最多得票でバイデンを大統領に選んだ理由 - 中山 俊宏

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 バイデン政権が発足したというのに、依然として話題はトランプ前大統領の方に引きずられがちである。毎朝4年間、Twitterを開いては@realDonaldTrumpをチェックすることが日課になっていた人の中には、トランプ・サポーターではないにしても、ある種の「トランプ・ロス」に陥っている人が少なくないのではないか。

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「ローズベルト級」の課題に直面するバイデン政権


米連邦議会議事堂で1月20日に行われたバイデン氏の第46代大統領就任式

 トランプ・サポーターたちが「MAGA(Make America Great Again)」と連呼しながら連邦議会を占拠してからちょうど2週間。ワシントンではその後も厳戒態勢が続いている。バイデン政権はこうした不穏な雰囲気の中で発足した。アメリカを「おぞましい状態(American carnage)」に追いやったアメリカン・エスタブリッシュメントを告発し、「アメリカ・ファースト」を訴えた4年前の就任演説と比べると、バイデンの就任演説は良くも悪くも型通りだった。大統領としていうべきことを普通に述べた感じだ。

 バイデンが直面する課題は「ローズベルト級」だとよくいわれる。それは、1933年に第32代大統領のローズベルトが就任時に直面した問題に比肩するような大問題にバイデンも直面しているということだ。

 1933年に大統領に就任したローズベルトは、世界大恐慌、第二次大戦、さらに第二次大戦後をみすえた国際システムの構築に取り組まざるをえなかった。バイデンも、コロナ危機(そして、コロナ不況)、人種問題、地政学的な挑戦、アメリカの国際主義の立て直し、そして「分断がいくところまでいってしまった」感のあるアメリカ政治そのものの修復など、その課題はあまりに重い。まさにローズベルト級の政治手腕が要求されている。

バイデンは「偉大な大統領」になれるのか

 ある大統領が偉大な大統領と見做されるためには、単にその大統領の政治手腕が優れているというだけでは十分ではない。すぐれた政治手腕が発揮される歴史的状況があってこそ、偉大な大統領と見做されるというわけだ。ローズベルトはその意味で、偉大な大統領の要件を満たしている。戦後の偉大な大統領としては、他にケネディやレーガンが挙げられるだろう。

 さて、それこそローズベルト級ともいわれる問題群に直面するバイデンだが、誰もバイデンのことをローズベルト級の大統領であると期待している人はいないだろう。JFK級でも、レーガン級でもない。

 やや乱暴な言い方になるが、バイデンは「消去法」で選ばれた感のある大統領だとの印象は拭えない。それは、2019年から20年にかけて実施された民主党の予備選挙を振り返れば明らかだ。これまで「バイデン熱気」といったものは、予備選、本選を通じても一切なかった。

バイデンが「歴史的得票数」を獲得した意味

 大統領選挙の結果にいたっても、8100万票という歴史的な得票数であったにもかかわらず、トランプが7400万票の支持を得たことの方にむしろ注目が集まっている。

 しかし、下院で民主党は議席数を減らし、上院では最終的には多数党の地位を奪い返したものの期待したほどには議席数を伸ばせなかった(=民主党自体が大勝したわけではない)にもかかわらず、史上2位の得票数に達したトランプと700万票の差をつけて勝ったことの意味を見落としてはいないか。

アメリカ人は「何を選んだのか」

 今回の選挙でわかりにくかったのは、なにをアメリカ人が選んだかという点である。たしかに「熱狂度」では常にトランプが優っていた。しかし、仮にアメリカが「普通であること」を新しい大統領に期待していたのだと仮定すると、バイデンの勝利の意味がよりはっきりと見えてくる。

 仮に本当にアメリカが「普通であること」を大統領に求めていたのだとすると、実は期せずして民主党は最強の候補を選んでいたということになる。「普通」というのが、あまりにも曖昧であるならば、それを「decency(良識)」と言い換えてもいいだろう。

「普通であること」は定義上、熱狂的支持とは無縁だろう。であるがゆえに、選挙中はバイデンの「平板さ」が際立ち、どうもパッとしない候補という印象が定着してしまった。しかし、それこそが彼の強みだったという見方もありうる。

 後知恵にはなってしまうが、仮に民主党が大統領候補としてバーニー・サンダースを選んでいたら、トランプはサンダースを自分のリングに引き込み、我流の勝負を展開していただろう。しかし、トランプはバイデン相手には最後までそれができなかった。潰そうにも平板すぎてつぶしどころがない、それがバイデンだった。

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