『大乱闘スマッシュブラザーズ』(『スマブラ』)はとてつもないバケモノといえるゲームだ。Nintendo Switchで発売されているシリーズ最新作『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』は2110万本の売上を記録しており、まさしく全世界で愛されるゲームとなっている。
各メーカーを代表するキャラクターが戦い合う/『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(2018年)
四半世紀にも迫ろうとする『スマブラ』の歴史
本作はさまざまなゲームキャラクターが一堂に会し、ふっ飛ばして相手を倒す対戦アクションゲームである。「マリオ」や「ピカチュウ」といった任天堂に関連したキャラクターを操作できるだけでなく、「パックマン」に「ロックマン」といったゲーム業界の古参と呼べる有名キャラクターも登場。そして『ストリートファイター』シリーズの「リュウ」、『ファイナルファンタジーVII』の「クラウド」なども一緒に戦うという、ありえないコラボが実現している驚くべき作品だ。
シリーズ初代となる『ニンテンドウオールスター! 大乱闘スマッシュブラザーズ』が発売されたのは1999年1月21日。つまり、いまから22年前だ。その長い歴史を重ねるうちに、『スマブラ』はここまでとてつもない作品になったのである。しかし、『スマブラ』は最初からいまのような“最強のゲーム”だったわけではない。
考えられない規模のコラボレーション
まず、最新作である『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』がどれほどすごいのかを説明しよう。本作は歴代シリーズに登場するファイター(プレイヤーが実際に操作できるキャラクター)がすべて登場しており、記事執筆時点で78体が存在。ここまで操作キャラクターが多いゲームはほとんどないと言ってもいいだろう。また、対戦を行うステージや、対戦中に流れるBGMの数も過去最多。「史上最大規模」の名にふさわしい一作となっている。
前述のように、任天堂以外のゲーム会社からファイターとして参戦しているキャラクターも存在する。『メタルギア ソリッド』シリーズの「スネーク」、『悪魔城ドラキュラ』シリーズの「リヒター」、『ペルソナ5』の「ジョーカー」、『ドラゴンクエスト』シリーズの「勇者」など、考えられないレベルのコラボレーションだ。任天堂の『スマブラ』なのに、『ドラクエ』も『FF』も入っているのである。
最も驚くべき参戦キャラクターは、『マインクラフト』の「スティーブ / アレックス」だ。『マインクラフト』は自由にブロックを設置してものづくりを楽しむゲームであり、「世界一売れたゲーム」としても有名。販売本数は1億7600万本を突破しており、もはや名前を知らない人のほうが少ないかもしれない。
もちろん、単純にゲーム作品同士がコラボするのであればよそでもありうる。『スマブラ』はただコラボするだけではないのだ。
単なるコラボとは一線を画する“こだわり”
ファイターとして登場するキャラクターにはそれぞれ技が用意されており、それがきちんと原作を再現したものになっている。たとえば『マインクラフト』のファイターであればブロックを置くことができる。もともと『スマブラ』にそのような要素はないので、ファイター追加と同時に新たなシステムも追加されるわけだ。
あるいは、『ストリートファイター』シリーズのファイターであれば、波動拳や昇龍拳をコマンド技(特殊な動作で技を出せる格闘ゲーム特有のシステム)で出せるようになる。『ドラクエ』の勇者なら「メラ」や「メガンテ」といった呪文が使えるシステムが追加されるなど、原作をリスペクトしつつ細部まで徹底して再現を行うのだ。
通常のコラボであれば、単純に作品にキャラクターが顔を出してもとのゲームシステムに合わせた形で活躍する流れになりやすい。しかし『スマブラ』の場合、コラボ作品のゲームシステムを吸収して成長していく。
ステージのこだわりもかなりのもの。単純に100ステージ以上が用意されているうえ、その種類も豊富。『スマブラ』オリジナルのものもあれば、参戦ファイターに関連したステージもあり、あるいは『ドンキーコング』や『星のカービィ』を意識したレトロなものもあれば、ニンテンドーDSや『Wii Fit』といった大ブームを起こしたゲームをモチーフにしたものも存在。そして、それぞれで発生する仕掛けが異なるこだわりよう。
“ゲームの博物館”とすらいえる圧倒的な情報量
楽曲は800曲以上も収録されており、これだけでゲームソフトの定価を越える価値を持つだろう。元の曲がそのまま収録されているケースもあるが、『スマブラ』のために新たにアレンジした楽曲も多数収録されており、アレンジ担当の作曲家もゲーム音楽の有名な人物ばかり。
また、最新作ではファイターとは異なる「スピリッツ」という存在がある。これはファイターの能力を変化させる役割を持っており、シンプルにイラストのみで登場するサポートキャラクターだ。イラストで登場するがゆえに、実に多くの作品のマイナーなキャラクターも出せるようになっている。
たとえば、ゲーム機のなかで犬を飼えるゲーム『Nintendogs』の「トイ・プードル」なんてキャラクターもいれば、有名なインディーゲーム『Cuphead』のキャラクター「デビル」など、本当にピンからキリまでさまざまなキャラクターが出てくる。記事執筆時点でスピリッツは1400体存在しており、アイテムの「モンスターボール」や「アシストフィギュア」などから出てくるキャラクターも含めれば、『スマブラ』に登場するゲームキャラクターはまさしく膨大な数になる。もはや『スマブラ』は、“ゲームの歴史博物館”とすら呼べるくらいとんでもない作品なのだ。