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行動経済学から見たネット型マッチングサービスの課題と期待~コロナ禍における少子化対策として~ - 清水仁志

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1――少子化問題におけるマッチングの重要性

日本は出生数の低下が継続的し、先進国で最も少子化が進んでいる国の一つだ。人口が急激に減少すると、経済規模が縮小するとともに、社会保障制度は持続可能性が脅かされ、基礎自治体は消滅へと繋がる。政府は、骨太方針2019において、人口減少のスピードを緩和するために、結婚支援、通勤時間の短縮やテレワークの推進、放課後児童クラブの受け皿整備、不妊治療への支援などの様々な政策により、希望出生率1.8の実現を目指すとしている。

少子化の度合いを測る代表的な指標としての合計特殊出生率(一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数)は、有配偶者出生率と有配偶率に分解することができる。1980年から2015年にかけてのそれぞれの推移をみると、有配偶出生率はおおむね横ばいで推移しているのに対し、有配偶率は大きく低下しており、合計特殊出生率を低下させる要因となっている。

少子化の原因は、結婚した人が産む子供の数が減ったのではなく、結婚する人が減ったことにあると考えることができる(図表1)。

しかしながら、今も昔と変わらず、若者の多くは結婚願望を持っている。国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」によると、「一生結婚するつもりはない」との回答は1987年から2015年にかけて確かに増加しているものの、「いずれ結婚するつもり」との回答は依然として85%を超えており、高水準を維持している(図表2)。

つまり、有配偶率が低下したのは、結婚をするつもりであった者が、結果的に結婚できなかったことにあると思われる。また、独身にとどまっている理由では、「適当な相手に巡り合わない」との回答が男女ともに5割程度存在しており、マッチングの効率化が結婚へと繋がり、少子化対策に有効であると考えられる(図表3)。


2――インターネット型マッチングサービスの登場

婚活におけるパートナー探しの方法は、ここ数十年で大きく変化している。以前は、職場や自身が所属するコミュニティ、お見合い、結婚相談所、あるいは合コンなどの仲介人型の婚活手段がメインであった。しかし、インターネットの発達により、最近では、婚活アプリやSNS、オンラインビデオアプリを用いたイベントなどのネット型サービスが登場している。

ネット型サービスの登場は、出会える可能性がある人数を劇的に増加させるとともに、金銭的・時間的コストを大きく下げた。以前までの仲介人型サービスでは、出会える人数は数人~数十人であったが、ネット型ではアプリなどに登録している数万人~数百万人の相手に同時にアプローチをすることができる。また、仲介人に伴う金銭的コストや、リアルでやり取りしなければならないという時間的コストを下げ、一人にアプローチするための単位コストは大きく抑制された(図表4)。

加えて、同時期のインターネットの発展は、連絡手段のコストを大きく低下させている。インターネットがない時代であれば、電話や文通、実際に会うといった方法でコミュニケーションをとる必要があり、それなりの金銭的コストや時間的コストを支払う必要があった。しかし、現在では、メールやSNSといったインターネットを活用した連絡手段をスマホで利用することができる。

3――マッチングサービスの利便化に伴う非マッチング

技術の発展によりマッチングサービスは多様化、利便化されてきた。特に、ネット型のサービスは、デジタル技術を活用することで、コストを抑えつつ、アプローチできる人数を格段に増やすという意味において、以前までのものとは一線を画している。実際に、これまでの結婚相談所などの伝統的なサービスと比べて利用者が急増しており、2020年にはおよそ5人に1人がネット系婚活サービスを利用したことがあると答えている(図表5)。

しかしながら、先述したように、利便性の高いネット型マッチングサービスが登場し、普及する間においても有配偶率は大きく低下しており、必ずしもマッチングサービスの充実が日本全体の婚姻数の低下に歯止めをかけてはいない。

まだまだネット型の婚活サービスは新しく市民権を得ているとは言えないことや、今までのサービスと比べて気軽に利用できることから利用者の婚活に対する本気度が低いことなど様々な要因が考えられるが、本稿では、行動経済学の視点から、ネット型サ―ビスの特徴とそれら利用者の意思決定の先送りに関する3つの要因について考えてみたい。

1選択肢の増加と「決定回避の法則」
「決定回避の法則」とは、意思決定における選択肢が多い場合、どれを選ぶかを決めることが困難になり、結果、意思決定そのものをしなくなるという法則である。婚活にこの法則を当てはめてみると、昔は数人~数十人の中から相手を選べばよかったが(実際には相手も自分を選ぶことが必要だが)、現在では数万人以上いる中から一人を選ばなければならず、選択肢が多くなった結果、選択肢を吟味する負荷が大きくなり、選ぶこと自体をやめてしまっている可能性が指摘できる。

2リアルの出会いからネット上での出会いへの変化と「確率の認知バイアス」
「確率の認知バイアス」とは、主観的確率が客観的確率とずれていることを示す。通常、客観的確率が90%といった比較的高い確率のものを実際は低い確率と感じる一方で、10%といった比較的低い確率をより高く感じる傾向がある(図表6)1

ネット型婚活サービスの特徴として、実際に相対することなくある程度の相手に関する情報が手に入るということが挙げられる。つまり、リアルの出会いから、ネット上での出会いへの変化だ。通常、出会いの機会が多くなると、相手に求める期待水準(留保水準)が高くなる2

ネット型サービス利用者は、オンライン上での出会いが急増した結果、この期待水準は相当程度押し上げられることが予想される。しかし、実際にマッチングに至るには、オンラインからリアルへの移行が必須である。ネット上では期待水準を上回る好条件(年収が高い、見た目がよいなど)とされる相手は確かに多そうではあるが、そうした相手と実際にマッチングできる確率は非常に低いであろう。しかし、確率の認知バイアスは、あたかもそうした人が自分とマッチングできる可能性があると確率を過大認知してしまい、意思決定の先送りを行っている可能性がある。

1 プロスペクト理論では、価値関数によって求まる価値にその価値が発生する確率をかけたものの合計を最大化するよう、意思決定を行う。その時の確率もまた通常の期待効用原理とは異なっており、この関数を確率加重関数と呼ぶ。
2 Sheldon Ross(1983). Introduction to Stochastic Dynamic Programming. New York : Academic Press

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