これを受け日本財団はコロナ禍対策の第4弾として、新たに感染が最も深刻な東京都内の高齢者福祉施設や療養型病院のエッセンシャルワーカーに対する無料のPCR検査を行うことに決めた。2月以降、ワクチン接種が進むと思われる7月前後まで半年間に約200億円の費用で200万検体の検査を目指すことにしている。
医療がひっ迫する中、医療崩壊に歯止めを掛けるため、無料検査で無症状の感染者や軽症者を見つけ、本人が気付かぬまま高齢者らへ感染が拡大するのを防ぐのを狙いとしている。対象となるのは特別養護老人ホームや介護老人保健施設など高齢者福祉施設計2844施設と療養型病院40施設で医療・介護に従事する約19万人。東京・お台場の船の科学館敷地に拠点となる日本財団PCR検査センターを設置し、2月8にも予定される完成を待って各施設からの受け付けを開始する。
当初は1日3000検体、4月には1日1万4000検体まで検査機能を整備する予定で、これにより1カ月に約40万検体、7月前後まで半年間に200万検体の検査が可能になる。対象者に唾液を検査するキットを送り当初は直接回収する。以後、郵送も含め週1回の検査を目指し、陽性の結果が出た場合は保健所に連絡する一方、家族ら濃厚接種者の検査も実施する。
厚生労働省の調査によると、昨年11月25日から30日までに全国で発生したクラスター(集団感染)168件のうち39件は高齢者福祉施設で起きているほか、感染による全国の死亡者の85%を70歳以上の高齢者が占めている。
施設のスタッフから無症状の感染者や軽症者を早期に発見して治療を行う一方、高齢者との接触を控えるのが2次感染防止に最も有効と考えられるが、現実には民間のPCR検査が1回2~4万円の己負担が必要なこともあって受検者が少なく、無料検査の実施に踏み切ることになった。
新しい感染者の発掘で、ただでさえ逼迫している保健所業務がさらに密になる可能性があり、プロジェクトでは医師の指示で感染者の情報を入力する事務作業(ハーシス)などの支援も検討したいと考えている。
検査には聖路加国際病院、日本医科大学附属病院、東邦大学医療センター大森病院、順天堂大学医学部のほか災害人道支援会(HuMA)の協力も得られ、検査が軌道に乗ればコロナ禍対応のモデルになると期待している。東京都以外の他府県から要請があれば、検査機器や人的側面を見極めた上で協力を検討したいと考えている。
日本財団は昨年4月以降、「民」の立場で、感染者の療養施設としての災害危機サポートセンターの設置やタクシーを利用した医療従事者の移動支援、全国127医院への医療資機材の支援など3弾にわたる計96億円相当の取り組みを進めている。
出口が見えないコロナ禍を克服するには、政府や行政による「公助」を待つだけでなく、周りの人たちと助け合う「共助」、自らを守る「自助」がバランスよく機能することが何よりも不可欠。19日の記者会見では日本財団の共助の内容を発表すると共に不要不急の外出自粛など国民一人ひとりが自らの行動に責任を持ってもっと慎重であるべきで、自助の必要性も述べ筆者なりの危機感を申し上げた。