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英中銀の総裁にカナダ中銀のマーク・カーニー総裁が抜擢された イギリスらしいやり方

来年6月に8年の任期を満了し引退が予定されているマービン・キング英中銀総裁の後釜として、現在カナダ中銀の総裁を務めているカナダ人、マーク・カーニー(47歳)が指名されました。

今日の午後、オズボーン財務相がこの決断を英議会で発表すると、驚きの声が上がりました。

「外国人を中銀総裁に据えるって……」

そういうざわめきに対してオズボーン財務相は「カーニー氏の妻は、英国人だし、四人の子供達は英国人とカナダ人の二重国籍を持っている。カーニー氏自身はイギリス人ではないけれど、女王様のsubject(家来、臣下、臣民などの意味)である」と苦しい答弁をしました。

カナダは英連邦の国なので、カナダ人がエリザベス女王の臣民であるという論法は使えなくはありませんが、結構、ムリがあります。カナダの人が聞いたら、怒るでしょうね。

カーニー総裁は2008年からカナダ中銀の総裁を務めており、世界の金融機関のお目付け役である金融安定理事会(FSB)の議長でもあります。

イギリス財務省は今回、中央銀行総裁を公募方式で求人しており、一例として経済誌、エコノミストに求人広告を掲載したほどです。つまり徹底したメリトクラシー(実力主義)で広く人選を進めようという姿勢を強く出していたわけです。

財務省がこのような態度をとった遠因として、LIBORスキャンダルに代表される、近年の英金融サービス機構(FSA)をはじめとする行政監督機関のクレディビリティ低下が指摘できると思います。

LIBORスキャンダルの際は行政と金融界のなあなあの関係が国民から強く批判されました。

来年からFSAは英中銀の監督下に置かれることから、FSAの内部者が英中銀の総裁に収まるのでは監視機能が上手く働かないという懸念があったわけです。

ロンドンは世界の金融センターの中では金融行政がユルい事で知られており、良く言えば自由闊達な空気がありました。それが高級住宅街、メイフェアに世界のヘッジファンドが集結したひとつの理由です。

しかしデリバティブを駆使したそれらのヘッジファンドがサブプライム問題が発覚した以降、投資戦略の変更を余儀なくされ、それが金融危機の深刻化に一役買ったことは、記憶に新しいところです。

中央銀行総裁に外国人を指名するというのは、日本なら考えられない方法ですが、英連邦ではそのようなことは荒唐無稽では無いと思います。またロンドンのシティは楽市楽座的なスタンスを堅持することで、常に国内の金融サービスの需要を遥かに超える、金融機関や雇用を獲得してきた歴史があります。

そのロンドンのクレディビリティを取り戻し、新時代を模索するにあたって、今回の人選は金融関係者にとっては腑に落ちるものだったと言えます。

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