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鈴木準『社会保障と税の一体改革をよむ』(日本法令) をオススメします!

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鈴木準『社会保障と税の一体改革をよむ』(日本法令) を著者からちょうだいしましたので、この3連休に読ませていただきました。今年夏くらいの時点、すなわち、いわゆる3党合意に基づいて消費税率引上げ法案が国会で可決したあたりにおける「社会保障と税の一体改革」について解説した本です。詳細な制度の内容を適確に紹介するとともに、社会保障や税制に関する専門家である著者の考えを余すところなく示しています。私と基本的な方向は同じであると受け止めています。ということで、まず、出版社のサイトから本書の内容紹介を引用すると以下の通りです。

三党合意で成立した一体改革法を中立・客観的にわかりやすく解説・評価!曲折の末、8月に成立した消費税率10%への引上げを柱とする「社会保障と税の一体改革」法を詳解。単に改正の内容の解説のみにとどまらず、成立への過程や社会・経済への影響まで冷静かつ多面的に分析し、評価すべき点と残された問題点を、一般読者にもわかりやすく独自の図表・資料などを交えて解説。今後の国民生活への影響とあるべき改革の姿を知るうえで必読の一冊!

次に、章別構成は以下の通りです。一体改革の全体像や著者の考えから始まって、年金、医療・介護、現役世代支援、税制改革、と続きます。

  • はじめに
  • 第1章 社会保障と税の一体改革はなぜ必要なのか
  • 第2章 一体改革における年金関連の改革項目の内容と評価
  • 第3章 一体改革における医療・介護関連の改革項目の内容と評価
  • 第4章 一体改革による現役世代支援、子育て支援関連項目の内容と評価
  • 第5章 一体改革による税制改革関連項目と増税をとりまく議論
  • 終章 一体改革を次のステージに進めるために何が必要か

まず、第1章では著者によって本書の基本的な考え方や方向性が示されます。すなわち、社会保障における年金の実質値は物価でデフレートさせるのではなく、現役世代の賃金との所得代替率により計測されるべきであること、従って、現役世代の賃金が下がり続けているのに、年金が増えているのは不合理であること、財政赤字は公共投資などの投資的支出ではなく、社会保障支出などの経常的な歳出により生じていること、などが示されます。その上で、社会保障を持続可能な制度とするため、給付削減の重要性が強調されています。

第2章では年金に着目し、そもそものライフサイクルを考えれば、現役世代の時にある程度の貯蓄を行なって、引退世代になれば貯蓄を取り崩して生活することが予定されており、年金ですべての生計費をまかなおうとするがごとき議論に反論しています。この点は給付削減の強調と整合的です。

第3章では医療と介護を取り上げ、高齢者医療支援金が現役世代の頭割りとなっている制度がほとんど知られていない点を紹介し、数理的な公正さの要求される社会保険制度と格差是正などを目的とした所得再分配の役割を持たせた税制の違いを認識する必要性を説きます。

第4章では子育てなどの現役世代支援を紹介していますが、そもそも、「社会保障と税の一体改革」で大きく等閑視された分野ですから、本書でのページ数もかなり少なくなっています。しかし、私の見方と同じで、政権交代により実現した子ども手当は、少なくとも、「目を向けるきっかけになったという点での功績はあった」とポジティブに捉えています。

第5章では世間一般でもっとも注目された税制、特に消費税率引上げに焦点を当て、弾力条項とデフレ下の増税、財政赤字の原因や霞が関埋蔵金に関する考え方などを展開しています。特に、本章の中の節のタイトルにしている「物価スライドはしてはならない」、「軽減税率は逆進性を緩和しない」などは、一般には奇異に感じられるかもしれませんが、まったく著者の主張通りだと私は受け止めています。

終章では「最小不幸社会」を批判して、古典的かつベンサム的ながら「最大幸福社会」を提唱するとともに、最後のページで高齢化に伴って、また、1票の格差のために、民主主義に基づく選択にバイアスが生じている可能性を指摘しています。私がこのブログで「シルバー・デモクラシー」と名付けているものです。本書でも、社会保障に関する法律の本則に即していない運用について厳しく批判していますが、私の直感では、例えば、デフレ下での年金の物価スライドの停止など、ほとんどそのすべてが高齢の引退世代に有利になるように捻じ曲げられているんではないかと危惧しています。

ほとんどの論点で私の考えと一致しています。違いを探す方が難しいんですが、あえて指摘すると、私は社会保険制度も税制とともに所得再分配などの機能を持たせ、格差是正やほかの政策目的に活用することはOKと考えています。そのための制度的な枠組みのひとつが歳入庁構想なんだろうと受け止めています。本書は「社会保障と税の一体改革」の解説に徹していて、マイナンバーは軽く触れられていますが、社会保険料を受け入れる機関と国税庁を統合する歳入庁構想については何の言及もありません。もちろん、著者は歳入庁構想についてもそれなりの見識をお持ちだと想像しますので、本書ではなく別途の機会で、ということなんだと理解しています。

ご著書をご寄贈いただくくらいですから私は著者と面識があって、それなりのバイアスは否定しませんが、とってもいい本です。制度を詳細に解説するとともに、明快に著者の考える社会保障や税制のあるべき姿を提示しています。そして、それが適確かつ合理的です。昨日の日曜日に私が都立図書館の検索で調べた限り、まだ区立図書館で所蔵している館はないようですが、おそらく、多くの公立図書館で利用可能になることと思います。多くの方が手に取って読むことを願っています。

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