「テレワークで太った」という人が多い。なぜそうなるのか。女子栄養大学栄養クリニックの管理栄養士・春日千加子さんは「テレワークでの食生活が通勤していたときと同じだと、確実に太ってしまいます。テレワークをしている人が陥りがちな『食生活の5つの沼』を把握してください」という——。
※本稿は、女子栄養大学栄養クリニック監修『テレワークごはん』(女子栄養大学出版部)の一部を再編集したものです。

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テレワークで健康になる人、太る人
テレワークで3食、自宅でとるようになったビジネスマンも多いことでしょう。
女子栄養大学栄養クリニック(※)の管理栄養士、春日千加子さんによれば、昨年から増えたテレワーク中の食生活で、ビジネスマンは大きく2つの傾向に分かれるそうです。
・テレワークで飲み会が減り、家で食事することが増え、さらに空き時間にも運動をするようになり、以前より健康になったAさん。
・テレワークで、通勤時間が減って運動不足になり、仕事の合間に間食もつい増えて、体重の増加とともに、血糖値などの数値が悪化してしまったBさん。

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昨年を振り返って、あなたはどちらでしたか?
春日さんによれば、Bさんのようなケースは、「テレワークで陥りがちな食生活の5つの沼」にハマっていることが多いそうです。
※女子栄養大学栄養クリニックは、医師の管理のもと、管理栄養士と料理研究家が、常に最新の知見にもとづく、栄養指導を研究・実践しており、これまでに3000人以上の、生活習慣病の予防・改善や、ダイエット指導などを行う。受講生の成功率は90%以上でリバウンドも少ないことがその後の調査から明らかになっている。
テレワークで太る人の「食生活の5つの沼」
【一の沼 同じように食べてもなぜか太る】
テレワークでは、往復の通勤がない分、思っている以上に活動量が減っています。例えば、徒歩20分、電車(立つ)40分の場合は、往復で266kcal(※)消費しています。これだけ消費カロリーが減っているので、特に運動をすることなく、通勤時と同じように食べていると、
体重は着実に増加していきます。
※体重50kgの女性の場合。(エネルギー算出/女子栄養大学金子義徳教授)
【二の沼 糖質中心になりがち】
パスタやチャーハンなど、めんやごはんものが増えると、糖質(炭水化物)のとりすぎや、野菜やたんぱく質不足になりがち。
【三の沼 1日2食になりがち】
3食用意するのが大変で、つい朝食や昼食を抜いてしまう……。じつはこれは、体重が増加しやすい食べ方です。特に朝食は重要な“体内時計”のスイッチ。午前中の仕事の能率に影響します。
【四の沼 インスタントや市販食品に頼りがち】
市販のお弁当やインスタンラーメン、レトルトのカレーやパスタソース。これらの食品は塩分や脂質が多く、野菜が少ないため、活用の仕方にくふうが必要です。
【五の沼 仕事中にお菓子をつまみがち】
仕事中、口さみしくなってついお菓子を食べて気分転換。人目もないからつい食べ過ぎてしまいがち。
以上が「5つの沼」です。
「もし心あたりがあったら要注意! このような食習慣を長期にわたって続けてしまと、血液中の血糖や中性脂肪、コレステロールなどが増えやすくなり、動脈硬化や生活習慣病につながっていきます。また、新型コロナウイルスなど感染症への抵抗力も弱まってしまいます」(春日さん)
行動を「増やす」目標を立てよう
テレワークは自分でコントロールできる範囲が増える半面、一度マイナスの習慣にハマると、自力で抜け出しにくいとうデメリットがあります。
「そんなときは、『体重を減らそう』『運動をしよう』というような漠然とした目標をたてるよりも、具体的な“行動”を“目標”にすることとがおすすめです」と春日さん。
「一般的に“減らす”習慣はハードルが高いので、まずは“増やす”“変える”から始めてみるとよいでしょう」
体重を一日2回測ろう
春日さんが沼から抜け出す、効果的な第1歩としておすすめするのが、「1日2回体重をはかる」という「増やす」行動を目標にすることです。

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「すでに1日1回は実践している方が多いかもしれません。それでも効果はありますが、朝夕2回量る方がグッと効果が上がります。私たちが行っている栄養クリニックのダイエットコースでも、参加者の方にはかならず1日2回でお願いしています。朝と晩の体重の変化を知ることで、1日の自分の食行動の修正ポイントが自覚できるようになるのです」(春日さん)
体格により個人差はありますが、朝の体重から夜の体重の増加量が「+0.5~1kg程度」なら、体重はキープできます。就寝中に汗や代謝でその程度の体重が減るからです。逆にそれ以上だと体重は増えていきます。
体重の増加する要因には「食べ過ぎ」「遅めの夕食」「活動量が少ない」「おやつの食べすぎ」などがあります。体重の変化が数値として見えることで、自然と自分のその日の食事を振り返って、問題に気づくことができます。
【体重を量るときのポイント】
①朝は起床直後に。トイレをすませて1日でいちばん軽い体重をチェック。
②夜は夕食直後、1日でいちばん重い体重をチェック。忘れてしまいがちなら就寝前と決めても。
③服装は朝、夜はできるだけ同じものにする(部屋着やパジャマなど)。
そして体重が増加傾向にある人は、まずは「間食」や「夕食」から見直してみるとよいでしょう。
3日間「おやつ日記」をつけよう
「仕事の合間についおやつ」がとまらないという人は、「3日間“おやつ日記”をつけてみる」のがおすすめです(増やす行動目標)。

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食事以外に口に入れたものをすべてノートに記入します。およその時間も記入しておくとよいでしょう。砂糖入りコーヒーなど、甘い飲み物も忘れずに記入します。
「あるテレワーク中の男性では仕事しながら、チョコレート(1箱)290kcalとカフェオレ(スティックタイプ加糖1本)70kcal、昼休みにコンビニでお弁当と一緒に買ったプリン1個180kcl、夕食後に夜食にせんべい1枚60kcalと、1日で間食や夜食で600kcalも食べているケースもあり、『これなら太るわけだ』と、驚いていました。このように自分で無意識に行っている行動パターンに気がつくことができ、自然と抑制につながります」(春日さん)