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スウェーデンで何が起きているのか? 移住者が語る日常生活とコロナ対策の現状

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2020年は新型コロナウイルスによって、これまでの「当たり前」がいとも簡単に失われるということを世界中が身を以て感じた年だった。そんな中、夏の間に北欧スウェーデンへ生活の拠点を移した筆者にとっては、年が明けた1月で、移住から約5ヶ月が経ったことになる。

現在語学学校でスウェーデン語を勉強しつつ執筆などの仕事をこなしているが、この機会を使ってコロナ禍での海外移住という滅多にない体験を振り返りつつ、二部構成の記事として前半はこの5ヶ月で見えた実際の街の様子や個人的な経験を、後半ではそれらをやや俯瞰したところから眺め、スウェーデンでのコロナ対策の変化や、ここから見える日本といった観点で書きたい。

意外に簡単だったスウェーデン入国

筆者がスウェーデンの首都ストックホルムに到着したのは8月上旬だった。当時スウェーデンは、EU圏外からの入国を制限していたが、日本や韓国を含め、感染者数の少なかった14カ国からの訪問については例外的に認めており、筆者はそのタイミングをついてスウェーデンへと飛んだ。機内を見渡す限りガラ空きだったフライトはヘルシンキ(フィンランド)経由のため、EU域内でパスポートコントロール抜きに移動できるシェンゲン圏内での、最初の着陸地であるヘルシンキで入国審査が行われた。

印象深かったのは、パスポートコントロールの際に広い入国審査場にいた乗客が筆者一人であったこと。あまりに静かな検査場に若干心細くなったが、特に何か検査を課されたり、厳しく質問をされたりということもなく通過できた。毎週のように変わる状況の中で目的地にたどり着けないことも覚悟していたが、乗り継ぎ便でストックホルム空港に着陸すると、パスポートのチェックもなくあっけなく入国ができたのだった。その後も検査や自主隔離などはなく、そのままバスで新居へ向かった。

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前述の通り、筆者は現在ここで語学の勉強中であるが、スウェーデンではありがたいことに、長期滞在許可を持つ外国人は無料のスウェーデン語のコースが受講できる。登録後9月末から始まったこのコースだが、現在はリモートになっており、全ての授業がZoom上で行われている。受講生は中東やインドなど様々なバックグラウンドを持ったグループであるが、筆者のようにスウェーデンに来て間もない者も多く、自分のことは棚に上げてこんな時期でも世界中から人が来ているのだと感じたのだった。

興味深いのはスウェーデン人のパートナーの元に越してきてスウェーデン社会の中にどっぷりと浸かる機会のあるグループと、大学や仕事のために一人、もしくは家族で越してきたためにスウェーデン人社会に一切関わる機会のないグループに二分されていることだった。

散歩が主なソーシャルライフのメインに?

語学学校の外に目を向けると、コロナ禍であちこち出かけて回るわけにいかないのはスウェーデンも同じで、筆者のソーシャルライフも数人の親しい友人と会う程度に限られている。これまではこちらでは人に会ったときの挨拶というと握手やハグが一般的だったのが、互いの肘を付き合わせるスタイルに変わった。筆者はいまだにこれに慣れていないが、おそらく多くのスウェーデン人も同じで、肘を付き合わせるたびに、なんとなくよそよそしい空気が漂っているのを感じる。

ここストックホルムは、概ねどのエリアも木々が茂る林や湖に徒歩でアクセスが可能な非常にコンパクトな首都である。もともと自然を好み、その中で過ごすことに大きな価値を見出すスウェーデンの国民性ならではと言うべきか、仕事の合間に外に出て近くの林や公園などを歩くと多くの人とすれ違う。屋内で人に会うことが難しい今、こうして少人数の友人同士で散歩に行くなど、密を避けることとソーシャルライフの両立のため、市民は様々に工夫しているようだった。筆者も一度ならず、雪が舞う極寒の浜辺での長い散歩に連れて行かれ、冷たい風を受けながら、自然との触れ合いを大事にするスウェーデンならではの経験になったのだった。

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一方、スウェーデンは一人当たりのコーヒー消費量が世界6位にランクインするほどのコーヒー大国でもあり、「フィーカ」というコーヒーブレイクの文化を持っている。だがこのコロナ禍でリモートワークが一般的になる中で、これまでのように気軽に知人と「フィーカ」をする機会も失われ、非常に孤独な思いをしている人も存在しているようだ。特に寒さと極端に短い日照時間で、気分が落ち込みがちになる冬の間は、孤独が人々にとっての大敵になっているようである。

コロナ禍でのイベント開催:コンサートと映画祭

さてこちらへの到着以来、街中に見える日本との最大の違いはなんと言ってもマスクの有無であった。公共交通機関の中でもマスクをしている人の方が珍しいくらいで、マスク装着がもはや常識になっている日本での日々が嘘のように感じられるほどであった。そのような中、8月〜9月にかけて筆者はノーベル賞の授賞式会場としても使われるコンサートホールでのクラシックコンサートに出かけることができた。

この時期、ストックホルムでは最大50人までの屋内イベントが認められており、大ホールで最大収容人数1770人のところ、互いに座席間隔を開けながら50人で「満席」のコンサートだった。フルオーケストラの演奏ということもあって、観客の数よりもオーケストラの団員の数の方が多いのではとさえ感じたが、少人数ならではのエクスクルーシブ感とチケットが比較的安価だったこともあって、チケットが発売と同時にすぐ売れ切れるようになってしまい、結局その後は、一度室内楽のコンサートに行けたのみだった。

そんな比較的穏やかな街の雰囲気に変化が見えたのは11月以降だった。気温が5度以下まで下がる日が当たり前になるとともに日照時間が短くなり、一気に冬らしくなったスウェーデンでも、新規感染者数増加のペースが上がり一日5000人を超える日も珍しくなくなった。ちょうどそんな時期に11月11日〜22日の会期で開催されたのが、筆者も運営スタッフの一人として携わったストックホルム映画祭だった。それまで最大300人までとされていた映画館での観客数の上限が開催直前になって50人まで減るなど、日々変わる状況を注視しながらの運営であった。

現場的な視点で言えば、例えばスクリーンの入口と出口を分けて人の流れを一方通行にし、観客同士の対面を避けるようマネジメント側から指示があったり、座席間隔について観客から意見を受けたりもしたが、ありがたいことに大きなトラブルもなく映画祭は進んだ。その間にも夜10時以降の飲食店でのアルコール飲料提供が禁止となったり、映画祭の真っ只中の11月16日にも屋内イベントに関する新たな人数制限が発表され、来場者に若干の戸惑いがあったが、なんとか閉会まで走り切ることができた。そしてこの頃から地下鉄の車内や街中では、マスク姿の人を見かけることが多くなっていった。

共同通信社

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