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  • mkubo1

誰でも分かる金融緩和 (必要だが魔法の杖ではない)

週末、コメントに多数のご意見が書かれていました。

何が正解なのか…

まあ、それは、分かりませんが、順を追って、金融緩和がどういうものなのか説明して見ます。

できるだけ、わかりやすく説明するようにします。


金融緩和と言えば、普通は、日銀が政策金利を下げて、個人や企業などがお金を借りやすくして、投資や消費を促進するのです。

しかし、政策金利は、ゼロに近く、下げ余地がないため、中央銀行(日銀など)が、市場に流通している国債などを購入することで、金融を緩和しようとします。


ある一定期間、国債を購入することによって、市場は長期間にわたって超低金利が維持されるのだろうと考えます。

したがって、短期金利だけでなく、長期金利に対して、低下圧力がかかってきます。

この長期金利が劇的に下がることにより、新規の投資や消費が促されているのが、現在の米国です。

特に、住宅ローン金利の大幅低下により、住宅関連の指標の改善が見られます。


しかし、日本では、すでに、10年国債は、1%以下とこちらも、低下余地が限られてきています。

そういう状況で、さらに、金融緩和をするとどうなるのでしょうか。


まず、日銀が国債を買入ますと、銀行は保有している国債を売却し、代わりに、現金を受け取ります。

その現金は、日銀内にある、各銀行が持っている当座預金口座にいきます。


銀行が、何か融資や投資案件があれば、日銀にある当座預金口座から、お金を下ろして、融資や投資に回します。

景気が良くて、融資案件や投資案件が多ければ、日銀の当座預金口座には、必要最低限(所要準備額)のお金しか残っていないはずです。


しかし、現実には、この当座預金残高ですが、10月の平均残高を見ますと、銀行だけで、37.6兆円(所要準備額は7.7兆円)もあります。

1年前が29.2兆円(所要金額は7.6兆円)ですから、増加傾向にあるということです。


つまり、日銀がいくら金融緩和しても、この日銀の当座預金残高が増えるだけで、市中にお金が出回らないというのが問題なのです。

よく「ブタ積み(所要準備額以上の資金を当座預金に置いておくこと)」といいますが、金融緩和しても、ブタ積みされるだけで、金融緩和の効果はないといわれるのは、このことを言っているのです。

もうちょっと、専門的な用語を使えば、マネタリーベース(ベースマネー)とは、現金通貨(日銀券、貨幣)と日銀当座預金残高の合計を言います。

また、マネーストック(マネーサプライ)とは、金融機関から経済全体に供給されている通貨の総量(市中に流通するお金)のことです。


で、大事なことは、日銀が調節できるのは、マネタリーベースであり、直接マネーストックを調整することはできないのです。

ただ、一般論としては、マネタリーベースを増やせば、マネーストックも増えるのですが、ゼロ金利以降、いわゆる「流動性の罠」にはいっているため、この関係が成立しにくい(相関が低い)のです。


簡単に言えば、当座預金の残高が増えても、肝心の資金需要が少ないので、マネタリーベースを増やしても、簡単には、市中にお金が行き渡らないのが現実です。

それで、「どうしたものか」と困っており、金融緩和しても弊害の方が大きいのではないかということになるのです。


しかし、金融緩和することによって、つまり、日銀が国債などの資産を長期にわたり購入する意思を示せば、長期金利の低下を促し、企業や個人にとっては、長期的な超低金利による借入が可能になるので、ここに、資金需要の期待が出てきます。

もし、金融緩和しなければ、こういう期待は出てきませんね。

例えば、ソフトバンクが1.5兆円もの資金を、新株発行などのエクイティファイナンスをすることなく、銀行借入で全額賄うというのは、多分、この金融緩和が効いているのです。


ですから、金融緩和しても、すぐに、市中に出回る資金が増えるわけではないのですが、日銀が金融緩和をコミットすることによって、市場に資金が出回るかもしれないという期待が高まるのでしょうね。

期待が高まるということは、流動性のある株式市場や為替

この期待を実現させるためには、長期にわたる期待感の維持が必要となり、金融政策もそのためには、緩和的であるべきだと思うのです。


しかし、現実的には、そうそう、資金需要なんて少ないのですね。

くどいですが、だから、マネタリーベースの伸びに対して、マネーストックの伸びが小さいのです。

何か設備投資して、高い収益性の事業があるかというと、なかなか、見当たりません。

どちらかと言えば、世の中、逆の収益悪化の話ばかりです。


ということは、金融緩和は期待を生むのですが、一方で、景気には、大いに気を使わないといけませんよね。

景気が折れますと、ますます、資金需要がなくなりますからね。

ですから、景気を悪化させる可能性が高い消費税増税は、現時点で行う必要はないのではないかということになります。


私が自民党の政策でもっとも矛盾だと思うのは、この点です。

金融緩和は、基本的には、景気を浮揚させるために行うのです(米国の例を見ても自明)。

その結果、需要が増えてデフレ圧力が緩和されるべきなのです。

景気が悪いと財政再建も上手くいきません(欧州の例を見れば一目瞭然)。


ところで、日本では、なかなか資金需要がないので、政府が公共事業を行って、資金需要を作ればよいという意見があります。

何となく分からないでもないのですが、これも、おかしな点があります。


そもそも、公共事業は、国民のために役立つものであり、収益性(社会的観点からもた価値)がプラスであれば、行うべきものだと思います。

人口密集地で、橋のないところに、橋を架ければ、これは、プラスの効果がありますね。

しかし、人が住んでもいない通過交通も無いようなところに橋を架けても、まず、効果はないでしょう。

ですから、公共事業は、字の通りに、公共(多くの人)に役立つことであれば、金利が高くても、行うべきなのです。


現在、民間で収益性のある資金需要を見込めない中、公的部門が収益性のある資金需要を発掘できるかというと、かなり難しいですよね。

リニアなんてのは、一昔前でしたら、公的部門で行う事業だったかもしれませんが、今では、民間で出来てしまうのです。

これ1つとっても、公的部門の役割は、明らかに低下しているのです。


ということで、政府部門が、金利が低いからと言って、国債を増発して、収益性のない公共事業を行えば、それは、結果的に、無駄となるのです。そこからは、収益を生まないので、トータルで、マイナスになります。

つまり、借金がふえるだけです。


当然、一時的には、景気は浮揚しますが、収益性がないので、続けることも出来ませんね。


個人的に思うには、デフレ解消は、金融緩和しながら、構造改革するしか方法はないのでしょう。

人口構成がおかしいと思うのであれば、長期的視点に立ち、少子化対策を最優先させればいいのです。

そこが政治家の腕の見せ所じゃないでしょうか。

税制改革でも、規制緩和でも。


橋下さんが、なぜ、人気があるのか(あったかとすでに過去形かもしれませんが)?

知事や市長になって、既得権益の公務員と戦って、誰が見てもおかしいと思うことを変えたからですよね。

少なくても、私は、そう思っています。

もちろん、失敗した政策もあるとは思いますが、あの公務員に向かっていく姿勢が良かったのです。

それが構造改革なのだと思います。

これが、もっとも、必要なことだと思うのです。


金融緩和は重要ですが、それだけで景気がよくなれば、とっくに、日経平均は15000円になっていますよ。

どうやって、期待感を実現させるのかです。

公共投資は、収益性のある物は行うべきだと思いますが、穴掘って埋めるような公共事業は、結局、バラマキになりやすく、利権の温床にもなりやすいのは事実です。


話がいろいろな方向に行きましたが、何ごとも、そんな簡単には行きませんよということですね。

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