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【読書感想】なぜニセコだけが世界リゾートになったのか 「地方創生」「観光立国」の無残な結末

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なぜニセコだけが世界リゾートになったのか 「地方創生」「観光立国」の無残な結末 (講談社+α新書)
作者:高橋 克英
発売日: 2020/12/23
メディア: 新書





Kindle版もあります。

なぜニセコだけが世界リゾートになったのか 「地方創生」「観光立国」の無残な結末 (講談社+α新書)
作者:高橋克英
発売日: 2020/12/22
メディア: Kindle版

地価上昇率6年連続日本一の秘密は何か。
新世界「ニセコ金融資本帝国」に観光消滅の苦境から脱するヒントがある。

富裕層を熟知する著者の知見「ヒトより、カネの動きを見よ!」

ローコスト団体旅行によるインバウンドの隆盛はただの幻想だった。かわりにお金を生むのは、国内に世界屈指のリゾートを作ることだ。平等主義に身も心もとらわれた日本人は、世界のおカネのがどこに向かっているのか、その現実にそろそろ目覚めるべきではないだろうか。

ニセコ歴20年、金融コンサルタントとして富裕層ビジネスを熟知した著者による、新しい地方創生・観光論。バブル崩壊以降、本当にリスクを取ったのは誰だったのか?

 北海道のニセコって、いま、こんなふうになっているのか……と、九州在住、ウインタースポーツには興味も縁もない(子どもと近所のスポーツセンターでアイススケートをすることはあるけれど)僕にとっては、驚かされる話ばかりでした。

 ニセコは、今や世界的なスキーリゾートだ。地元の倶知安町(くっちゃんちょう)がスイスのサンモリッツと姉妹都市提携を結んで2021年で57年、ニセコは「東洋のサンモリッツ」から「世界のニセコ」として、名実ともにその名を世界のスキーヤーや富裕層に知られる存在となっている。

 その源泉は、パウダースノーだ。サラサラしたパウダースノーを体験してしまうと、なかなか他のスキー場には戻れない。サンモリッツやクーシュベル(フランス)、ウィスラー(カナダ)といった欧州や北米の世界的に著名な超高級スキーリゾートも雪質ではニセコには敵わないことがほとんどだ。

 そのパウダースノーをオーストラリアのスキーヤーが世界に紹介したことで、ニセコはアジア全体や欧州や米国からもスキーヤーが訪れるようになった。

 彼らのためにニセコには「外国人による外国人の楽園」ができている。5つ星ホテルのパークハイアットは、日本には東京、京都、ニセコにしかない。他の5つ星ホテルではリッツ・カールトンが開業し、アマンの建設も進行中だ。アマンホテルに併設される戸建て別荘の販売予定価格は20億円になる。この先も、こうした高級ホテルやコンドミニアムの開発が続く。

 ニセコ周辺のインフラ整備も着々と進んでいる。2027年には高速道路が開通してニセコにインターチェンジができる予定であり、2030年には北海道新幹線の新駅がニセコに設置されることも決まっている。札幌や東京からのアクセスが大幅に改善される見込みだ。もし2030年冬季オリンピックの開催が2度目となる札幌で決まれば、ニセコがアルペン競技の会場となる予定もある。

 北海道のパウダースノーがオーストラリアのスキー好きの話題になって、オーストラリアからのスキー客が増えている、という話は、けっこう前に聞いたことがあるんですけど、スキーをやるために、わざわざオーストラリアから北海道に来る人もいるんだなあ、という感じだったんですよね。

 いまや、ニセコは、アジア・オセアニアから大勢の富裕層が集まる一大スキーリゾートになっているのです。

 20億円の別荘、とか、スキーシーズン中は1泊20万円の高級ホテル、なんていうのは、僕にはまったく縁がないものであり(そもそも、そこまでしてスキーをやろうと思わないし)、そんなに需要があるの?と思うのですが、著者は、現在の「カネ余り」の世界情勢(コロナ禍であってさえも!)を紹介し、これまで日本の観光の振興策で一般的だった、「ふつうの経済力の家庭から、超富裕層まで、広範な層をターゲットにする」という考えかたの限界を指摘しています。

 超富裕層は、混雑やありきたりの画一的なサービスを嫌う傾向があり、超富裕層を呼ぶことによって、効率よくお金を落としてもらうほうが、地域の発展にもつながるのではないか、と述べているのです。

 新千歳空港に降り立ち、新緑で覆われた北海道の大地を貫く一本道を運転すること2時間。一面白い花をつけたじゃがいも畑を抜けて、尻別川をまたくサンモリッツ大橋に差し掛かると、右手に突如巨大な建造物群が現れる、「パノラマニセコ」の別荘群だ。ヴィラなど12戸、レストラン、カフェが備わるクラブハウス1戸からなり、このうちすでに8棟は販売済みで、更にタウンハウスが2棟建設中だ。

 たとえば、432㎡のヴィラ(タイプ2)は、2つのマスターベッドルームを含む全5部屋のバスルーム付き寝室があり、天然温泉が引かれ、露天風呂もある。24時間対応のコンシェルジュサービスや送迎サービスなども付き、部屋からは「蝦夷富士」と呼ばれる北海道の名峰・羊蹄山、反対側からはニセコアンヌプリのスキー場が見える絶好の場所にある。5億3800万円で販売中だ。

 これらは、オーナーの意向によっては、貸別荘として宿泊可能なものもあり、グリーンシーズン(夏場)では1泊15万円台から利用が可能だ。コロナ禍ながら、新しいスキーシーズン(1泊23万円から)の予約も徐々に埋まりつつある。

 ここで紹介されているニセコの状況を読むと、「お金って、あるところにはあるのだなあ……」という溜息しか出ないのです。

 新型コロナウイルスの影響で、仕事を失ったり、ボーナスが出なくなったりで生活に困窮している人が大勢いる一方で、こうして、1泊23万円のニセコのスキーリゾートを満喫する人たちもいるのです。

 日本という国では、「富裕層だけをターゲットにする」というと「普通の人たちを排除するなんて感じ悪い」と思う人が多いし、「冬場だけではなく、夏でも、人を呼べるようにしたほうがいい」という意見が出てきがちなのですが、著者は、「広い層をカバーしようとすると、かえって優良顧客を満足させられなくなるし、富裕層向けの冬のスキーリゾートに集中したほうがいい、海外の高級リゾート地も、そうしているのだから」と具体例を挙げて説明しています。

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