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さくらレポート(2021年1月)~景気は持ち直しているが、先行きに慎重 - 経済研究部 研究員 藤原 光汰

1.全9地域中3地域で景気判断を引き上げ、1地域で判断を引き下げ

1月14日に日本銀行が公表した「地域経済報告(さくらレポート)」によると、全9地域中、3地域で景気の総括判断を引き上げ、5地域で判断を据え置き、1地域で判断を引き下げた。前回調査で改善が遅れていた北陸、四国、九州・沖縄で判断が引き上げられた結果、四国を除く8地域で「厳しい状態にある」としつつも、すべての地域で「持ち直しの動きがみられる」などとしている。

一方、北海道では「持ち直しのペースが鈍化している」として総括判断が前回調査から引き下げられた。北海道では新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年11月以降、札幌市民に不要不急の外出自粛を求めていたほか、札幌市を目的とする旅行がいち早く「Go To トラベル事業」の対象から外されており、このことが鈍化の一因になったとみられる。

2.業況判断は全地域で改善も、先行きは慎重

「地域経済報告(さくらレポート)」と同時に公表された「地域別業況判断DI(全産業)」をみると、全9地域で前回調査(2020年9月)から改善した。また、今回調査の改善幅(前回→今回)は、全地域で前回調査の改善幅(前々回→前回)を上回っており、景況感の回復ペースが加速していることが確認された。

前回調査からの改善幅をみると、東海が+19ポイントと最も大きい。次いで中国や北陸(それぞれ+17ポイント。+15ポイント)が大きくなった。一方、さくらレポートで唯一景気の総括判断が引き下げられた北海道は+9ポイントと最も低い伸びにとどまった。

さくらレポートの需要項目別等の判断をみると、東海は生産と輸出が増加基調にあり、設備投資が横ばい圏内となっており、他地域と比べると底堅さを確認できる。他方、北海度は個人消費の持ち直しペースが鈍化し、設備投資が減少しており、内需の弱さが確認された。

先行き(2021年3月)については、全地域で今回調査からの悪化を見込んでおり、先行きに対してはどの地域でも慎重な見方をしている。調査時期である2020年11月中旬~12月上旬は、新型コロナウイルスの感染第3波が広がっていたことや、「Go To キャンペーン事業」の一時停止などを受けて警戒ムードが漂っていたためと考えられる。

ただし、足元では新型コロナウイルスの感染者数がさらに増加しており、2021年に入った後には1都3県で緊急事態宣言が再発令され、13日には7府県が対象地域に追加された。これらの地域にとどまらず、その他の地域においても経済活動は停滞し、3月のDIは予測時点よりも下振れるとみられる。また、今後も新型コロナウイルスの感染拡大による悪影響が長引けば、次回の地域経済報告(さくらレポート、2021年4月)では景気判断が下方修正される地域が増える可能性もあるだろう。

3.製造業の業況判断は全地域で改善、先行きは方向感にばらつき

製造業の業況判断DIは、9地域全てで改善した。ただし、DIはコロナ前を下回っているため、景況感の水準は依然として低い状態に留まっている。

世界的な経済活動の再開を受けた輸出の回復や、国内外での自動車需要の回復などを背景として明確な改善が示された。特に自動車産業と関連が深い鉄鋼や非鉄金属のほか、電気機械などで改善が目立った。

前回調査からの改善幅は、東海(+27ポイント)が最大となり、次いで東北、中国(+23ポイント)が高い。東北では、鉄鋼(+57ポイント)や非鉄金属(+43ポイント)が大きく改善した。一方、近畿では食料品(▲2ポイント)や紙・パルプ(▲6ポイント)など前回調査から悪化している業種もみられ、DIの水準は▲24と他の地域よりもやや低い。

先行きについては、関東甲信越、北陸の2地域で今回調査から改善が見込まれている一方、北海道などの6地域では悪化を見込んでおり、方向感にはばらつきがみられる(近畿は横ばい)。海外における新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて輸出は減速することが見込まれるほか、国内需要が弱い動きとなることで生産の持ち直しは一服するとみられる。

ただし、調査時点から新型コロナウイルスの感染拡大傾向が強まっており、足元では緊急事態宣言が再発令された。2020年の緊急事態宣言と比べると経済活動の制限範囲は限定的であるものの、製造業の景況感は予測よりも下振れる可能性があるだろう。

日銀短観12月調査では、直近の為替変動を反映し、2020年度の想定為替レート(全規模製造業ベース)が106.74円と9月調査時点(107.25円)から円高方向に修正されている。足元の実勢(104円台前半)よりも円安水準にあることから、円高の進行の織り込みが遅れている可能性が高い。製造業への下押し圧力は非常に強い状態にあるといえる。

4.非製造業の業況判断は全地域で改善も、先行きは結果以上に悪化か

非製造業の業況判断DIは、9地域全てで改善した。ただし、DIはコロナ前を下回っているため、景況感の水準は依然として低い状態に留まっている。

業種別では、「Go To キャンペーン事業」による需要押し上げの効果もあり、宿泊・飲食サービス業や対個人サービスが前回調査から大幅に改善した。ただし、これまでこれらの業種の牽引役となっていた訪日外国人旅行客によるインバウンド消費はほぼ消滅しており、DIの水準は平時と比べて非常に低い。また、小売なども大きく改善し、DIの水準は景気が「良い」と「悪い」の境目である0を上回る地域が優勢になっている。

前回調査からの改善幅は、中国が+14ポイントと最大となり、北陸と九州・沖縄が+13ポイントと続いている。中国では、宿泊・飲食サービスが+61ポイント、対個人サービスが+15ポイントと大幅な改善を見込んでいる。北陸では、宿泊・飲食サービスが+63ポイントと改善する一方、対個人サービスは▲11ポイントと全国で唯一の悪化を見込んでおり、回復が遅れている。

先行きについては、全9地域とも悪化を見込んでいる。調査時点では、新型コロナウイルスの感染が拡大していたほか、Go To トラベル事業の一時停止などもあり、先行きへの警戒感が燻っていたためと考えられる。特に新型コロナウイルスの影響を強く受ける宿泊・飲食サービスで大幅な悪化(▲20~▲45程度)が見込まれている。

ただし、足元では新型コロナウイルスの感染がさらに拡大しており、Go To トラベル事業は全国で一斉停止となったほか、緊急事態宣言の発令に伴い飲食店は営業時間の短縮を余儀なくされている。予測時点では足元の状況が反映されていないため、宿泊・飲食サービスや対個人サービスを中心に、非製造業の景況感は製造業よりも大きく下振れる可能性が高いだろう。

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