だが、完全非公開でメディアの取材も不可。人選も聴き取り役も人数も未定で、透明性や中立性への懸念は拭えない。学校現場からは「負担は大きいが継続するべき」との声も多数あがっており、聴き取りがどのように〝利用〟されるか注視している。なお、昨年6月30日までに「悪性ないし悪性疑い」と判定されたのは252人、そのうち手術を受けた人は203人だった。
【人選も進行役も「未定」】
決まったのは「とりあえずやってみよう」という事だけだった。はっきりしているのは「年度内(3月末まで)に甲状腺検査の対象者やその保護者から意見を聴く」という事だけ。委員会に示され、星北斗座長が押し切る形で〝了承〟された実施案では「今後の検討委員会における議論の参考とするため」に実施し、学校での甲状腺検査対象者の保護者や県内高校生など8人程度を選び、会議室などに招くかリモート形式で聴き取るとされている。
人選する対象者は「なるべく『一般的な方』を想定してございます」(福島県県民健康調査課)という。
星座長や各委員は「オブザーバー」として出席し、聴き取りの進行役は「中立性を担保するため、医学的知識を有し、甲状腺検査に直接かかわっていない人」を別途、これから選ぶ。委員会では具体的な名前は挙げられなかった。安部郁子委員(福島県臨床心理士会長)から「中学生は自分の意見を言えるので、ぜひ加えて欲しい」と提案があり、星座長も賛成した。
「プライバシー保護」との理由から聴き取りは完全非公開。メディアにも実施日や場所などは知らされないという。聴き取った内容は次回の検討委に示される予定だが、議事録のように詳細な発言内容が提示されるのか、「発言要旨」のような形になるのかも分からない。
発言者が不利益を被らないよう配慮するのは当然だが、聴き取りの透明性、恣意的な発言の切り取りを防ぐ意味でもメディアの取材は必要。しかし、県民健康調査課の菅野達也課長は取材に対し「取材を認めるなんてありえない」と一蹴した。
この日の検討委には、昨年9月から12月に実施した学校関係者からの聴き取り結果が報告された。
福島県県民健康調査課の職員が県内26校を訪問し、教頭や養護教諭などから学校での甲状腺検査についての考え方を聴き取ったほか、うち3校では実際の検査現場も視察したという。
しかし、報告文書はA4判1枚(裏表)のみ。「全ての学校で受診しない方が受診者等に何か言われるような事例は把握していなかった」などと書かれているが、甲状腺検査の任意性や強制性について学校側がどう考えているかは伝わらない。当事者や保護者への聴き取りもこのような形で県職員がまとめて委員会に報告される可能性がある。


内容が固まらないまま、見切り発車で実施される学校での甲状腺検査対象者や保護者への聴き取り。委員の中には学校での甲状腺検査に強く反対している委員がおり、今回の聴き取りが検査縮小に利用されるのではないかと懸念する声も多い