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ペンス氏、ギリギリの脱出劇、米議会乱入、間一髪で難逃れる - 佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

6日の米議会襲撃事件の際、ペンス副大統領がこれまで伝えられていた以上に生命の危険にさらされていたことが分かった。ワシントン・ポスト(15日)によると、同氏は暴徒が上院議場に乱入するわずか1分弱前に妻ら家族とともに脱出、約30メートル離れたオフィスに隠れた。同氏はその後、スキを見て別の安全な場所に移動、最後まで議事堂内に残り、暴動の鎮圧を指揮した。

(Toshe_O/gettyimages)

“正義は下される”と不気味なメモ

11月の大統領選の最終的な結果を確認する上下両院の合同会議は午後1時に始まり、ペンス氏は議長を務めていた。しかし、議事は一部のトランプ大統領支持派から西部アリゾナ州のバイデン次期大統領の勝利に異論が出たため、いったん中断。規定により上下両院に分かれて審議されることになり、ペンス氏は上院の議場に移った。

しかし、合同会議の開始前から議事堂はトランプ大統領の「死ぬ気で戦え」といった演説に煽られ、興奮した過激な支持者らに包囲されていた。彼らは次第に暴徒化し、同紙によると、ワシントン警察は1時50分に暴動の発生を宣言、暴徒は1時59分に議会のドアに押し掛けた。

2時11分には、暴徒が議会入口付近の窓ガラスを壊して建物内に次々と乱入した。ペンス氏はその2分後の2時13分に上院議場からシークレットサービスに促されて脱出、約30メートル離れた自分のオフィスに逃れた。議事を見守っていた妻のカレン、娘のシャーロット、それに兄のグレッグ・ペンス下院議員(インディアナ州選出)らも一緒に脱出した。

この直後の2時14分、警官を追い詰めてきた暴徒が議場の踊り場に到達した。同紙はもし暴徒が数秒早く着いていれば、ペンス氏らを目撃していただろうと指摘しており、危機一髪の避難だった。同氏は議会からの退去を求めたシークレットサービスの要請を2回にわたって拒んだが、3回目の求めに応じ、議事堂内の安全な“隠れ家”に密かに移動した。“隠れ家”がどこで、どう避難したかなどは不明だ。

暴徒らは「バイデン勝利を認めないように」というトランプ大統領の要求を拒否したペンス氏を裏切り者と非難、「ペンスはどこだ」「ペンスを吊るせ」とペンス氏を主な標的にしていた。長い槍を所持し“Qアノン・シャーマン”と呼ばれていた暴徒の1人は議長席のペンス氏の机の上に「時間の問題だ。正義は下される」との不気味なメモを残した。暴動はペンス氏が州兵を動員させるなどして鎮圧され、同氏は夜8時に議場に戻って議事を再開、「議会史上、最悪の日」と暴力を非難した。

今回の襲撃事件には数々の疑問が残っている。議会警察の情報部門は事件の3日前に、「議会がトランプ支持派の標的にされる恐れがある」との内部情報を出していたし、連邦捜査局(FBI)のバージニア支局は事件前日の5日、一部の過激派がワシントンに向かう準備をし、“戦争”を企てているという警告を発していた。こうした情報があったにもかかわらず、適切な取り締まり態勢が取られなかった。

同紙が拘束された容疑者の供述として伝えるところによると、警官の1人は乱入した容疑者らと握手し、「ここは君らの家だ」と話したという。警官が暴徒と記念撮影に収まったという話もある。FBIは事件の捜査を進めるとともに、20日の大統領就任式に再び暴動が発生する懸念があるとして、白人至上主義者ら過激派数百人をリストアップ、ワシントンに厳戒態勢を敷いている。

トランプ氏、就任式の朝フロリダへ

ペンス氏は15日、次期副大統領のハリス氏に電話し、引き継ぎの協力を申し出た。両氏が話すのは昨年のディベート以来初めてで、ペンス氏は副大統領公邸にハリス夫妻を招くことも検討しているという。ペンス氏は大統領就任式にも出席する予定で、就任式をボイコットするトランプ氏とは対照的な対応を見せている。次期大統領の就任式に出ない大統領はトランプ氏が史上4人目。

敗北をなお認めていないトランプ氏にとって就任式欠席は当然の帰結かもしれないが、同氏は当初、就任式をボイコットし、退任後の拠点となるフロリダで大集会を開催、24年の次期大統領選出馬へのキックオフにしようと考えていた。しかし、議会襲撃事件で、身内の共和党からも厳しく批判され、下院で弾劾訴追を受けたことで、計画の変更を余儀なくされた。

AP通信などによると、大統領は就任式の朝、アンドルーズ空軍基地からエアフォースワン(大統領専用機)でフロリダまで旅立つ予定。大統領として最後の威厳を保つべく、離任式には赤じゅうたんが用意され、軍の楽団演奏、21発の礼砲で見送られるとされるが、新しい船出を祝う華やかな就任式とは真逆の寂しいものになりそうだ。

トランプ大統領は事件後の13日、暴力を非難する動画を公表した以外、公の場には姿を見せていない。ニューヨーク・タイムズによると、大統領は弾劾についても、「事実上、誰も擁護してくれなかった」などとショックを受け、怒りと孤立感を深めている。独裁者として君臨してきただけに、権力の座から滑り落ちる悲哀をいまさらながら噛みしめているに違いない。

特にペンス氏や共和党上院のマコネル院内総務らに激怒しており、また最後まで側近として振舞った顧問弁護士のジュリアーニ氏に対しても、選挙結果をひっくり返すことができなかったことで反感を強め、同氏の弁護費用を支払わないよう、また、これまで払った分についても返還を要求するよう指示したと伝えられている。

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