正社員の共働き夫婦の年収は計約1000万円。近年は2人とも給与が上昇中だったこともあり、子供は3人とも高校・大学が私立。教育費に加え、マイホームや車のローンもある。食費も外食中心だ。当然、赤字の炎上状態となった家計を立て直すべく、ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんがアドバイスしたウルトラCとは――。

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子供は3人とも私立志望、お金がかかるかかる
「今後は350万円分の投資信託を解約するしか手はないでしょうか……」
都内在住の共働きの会社員Sさん(50)と妻(50)には子供が3人います。一番上の長女は一浪で今冬、有名私大の合格を目指しています。長男(私立高校2年)も大学進学予定です。次女(公立中学1年)も2年後には私立高校受験が控えています。子供3人の教育費は少なくとも月8万7000円。3人とも高校・大学は私立となる公算が大きく、家計を圧迫しています。
Sさん夫婦の人生は、教育費にかなりお金がかかるステージに入ったのです。
ネックは、夫婦の貯蓄が、社内預金の現金約300万円にとどまっていること。ほかに積立投資で投資信託を約350万円分保有していますが、やや心もとないです。以前は、銀行に貯金が約130万円あったのですが、長女の予備校代や、長男の塾代、夏期・冬期講習代や参考書代など、ほとんどを教育関係の支出に使い、ここ2年ほどでなくなってしまったのだそうです。
年収1000万円世帯だが、家と車のローンに莫大な教育費が…
夫婦の手取り収入は計55万4000円。教育費に加え、マイホームや車のローンなどに月計15万1000円かけていますが、やりくり次第では、貯金は不可能ではなかったはずです。夫婦も先取り貯金をしたり、袋分けで家計管理を試みたりしたそうですがうまくいかず、毎月2万以上の赤字家計になりがちでした。夫婦のボーナスはその補塡(ほてん)などに消え、貯金ができませんでした。
そのため長期休暇時の塾の講習代は、貯金を切り崩して支払うしかなかったのです。銀行の預金を使ってしまうと、次のお金の出どころは社内預金しかありません。もしそれが底を突いたら積立投資を売ってお金を工面するしかないのか、と考えたところ、先々のお金がなくなるという危機感を覚え、家計相談する決断をしたそうです。
毎月2万円以上の赤字の原因は、教育費だけではなかった
ボーナスを含めた年間の世帯収入は約1000万円。にもかかわらず、お金が貯められなかった。その原因を突き詰めていくと、教育費用の計画が狂ってしまったことにありました。
・長女は現役合格してくれると思っていたこともあり、浪人の予備校代(年約80万円)は想定外の大出費だった。
・長男が通う私立高の授業料は年約100万円。そこで東京都の「私立高校の授業料補助制度」を利用して通わせる予定だったが、それが実現できなかった(世帯年収が一定額以下の家庭に都内私立高校授業料の平均44万2000円が補助されたが、当時、給与のベースアップなどで夫も妻も給料が上がり、非対象に)。
給料が上がれば授業料の支払いも生活も楽になりそうなものですが、おそらく収入増加に合わせて支出も増えたのでしょう。お金を貯めるゆとりはできませんでした。
教育費については想定よりコストがかかってしまったわけですが、世帯収入は増えているので、家計状況がすぐさま悪化するとは考えにくい。原因はどこにあるのでしょうか。
共働きで作れず…外食、総菜、テイクアウトで食費は10万円超
問題はやはり他の費目にありました。明らかなメタボ家計だったのです。前述しましたが、自動車のローンや維持費に月4万8000円かかる以外にも、食費は月10万円を超え、被服費も月1万5000円と多めです。支出の問題は教育費だけではなく、支出全体にあったのです。
この支出をコントロールしていくには、家庭にとって優先すべき支出とそうではない支出を見極め、優先しなくても良い支出を減らしていくことが必要です。
支出を減らすには何でもかんでも我慢すれば良いと考える人もいますが、それでは長続きしません。払うべきところにはしっかりお金をかけられるメリハリ型の節約をしたほうがよいのです。
一度家に持ち帰り、家族で話し合ってもらった結果、やはり教育費を優先したいとのこと。目標の学校に行くために頑張っている子供を応援することを最優先すると決めたそうです。
その代わりに、節約できるところは食費、通信費、日用品代、被服費、サブスク代など。具体的にどのように削減していくかも話し合ったそうですが、私どもの提案も含めて実践していくことにしました。

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まず、10万円以上かかっている食費です。食費が多い最大の理由は、共働きで食事の準備が大変だということ。外食、総菜、デリバリーなどが大半を占めています。妻も娘も料理が嫌いというわけではありませんが、メニュー立案や片づけなどがどうしても面倒、億劫だと感じてしまうようです。それでも少し頑張って、長女が塾などの合間を利用しておかずを1品作ったり、次女が米を研ぎ、味噌汁を作ったりと協力をすることになりました。長女は「一日机に向かうよりも気分転換になり、継続していけそう」とのことでした。もちろん、妻も週末に作り置きをしておくなど、できる限りやります。
あえて外食などは制限しませんでしたが、「1週間2万円」を食費の予算としました。毎月のおよその食費額を5週間分で割った金額です。うまくできると、1カ月は4週間半程度ですから、食費が少し余る仕組みとなっています。
初めは娘たちの協力があっても予算内でおさまらず、苦戦していたようですが、次第に外食やデリバリーなどと自炊のバランスが取れるようになり、3万円以上もコスト削減し目標よりも少ない金額(月7万2000円)でやりくりできるようになりました。