■KDDIの新料金プランを批判する武田総務相
KDDIが発表した月額2480円の大手キャリア最安料金プラン「povo(ポヴォ)」に対して、武田総務相は不快感を示したと伝えられている。
武田総務相曰く、「非常に紛らわしい発表だった」
その具体的な理由は、auの出した料金プランには通話料が含まれておらず、他社における無料通話料金(500円)を含めると実質的には他社と変わらないということらしい。
しかし、この言い分は少し違うのではないかと思う。
5分間まで通話無料の他社のサービスというのは、電話を頻繁に使用する人、もっと詳細に言えば、有料通話を利用する人を対象としたものである。毎日電話するような人にとっては、月額500円で通話し放題というのは魅力的かもしれないが、ほとんど電話をしない人からすると、無料通話が500円でも高いということになってしまう。
■「民間の価格競争」と「官の価格統制」
世の中にはスマホでは電話しないという人も大勢いるし、無料の通話アプリ(LINE電話等)や050のIP電話を双方で利用すれば無料で通話できるため、有料の通話サービスは、そもそも必要ないという人も大勢いる。
そういった人々は、スマホの基本料金をなるべく低く抑えたいと思っているので、無料通話料金を省いた料金プランでも歓迎という場合が多いのではないだろうか。
武田総務相にしてみれば、携帯4社ともに月額2980円で統一してくれた方が公平な競争になると思ってのことなのかもしれないが、他社に抜け駆けして利を取るのが民間の営利企業の基本的な経営スタイルでもあるので、それを「ズルい」と批判するのはお門違いではないかと思われる。
そもそも、価格競争を無理強いしたのは武田総務相自身であって、4社揃って同じ料金を提示することを求めたわけでもない。もし、4社が同じ料金にしなければいけないと言うのであれば、それは民間の価格競争ではなく、官の価格統制になってしまう。それなら、初めから「4社ともに2980円にしなさい」と言っているのと同じことになってしまう。
■国民のウケが悪い「一律平等料金」
「基本料金」と「通話料金」を分けることは、紛らわしいことではなく、むしろ、曖昧さを廃した分かりやすい料金体系だと言える。この考えの根底には「従量制」というものがあり、サービスを利用した人だけが料金を請求されるという分かりやすい料金制度でもある。
一方で、無料通話料金一律500円という制度は、サービスを利用した人も利用しない人も、同額の利用料金を請求されるという意味で、非常に紛らわしい料金制度だとも言える。
そして、その料金体系は、NHKに通じるものがある。NHKの番組を観た人も観ない人も同じ料金を請求されるという意味で、「一律平等料金」というのは、国民のウケが悪い。
NHKの番組を四六時中観ているような人にとっては、一律平等料金は安く感じられるのかもしれないが、NHKの番組を全く観ない人にとっては、一律平等料金は有り難迷惑な制度でしかない。
仮にNHKが「基本料金」と「視聴料金」を分けた場合、次のような料金制度が考えられる。
基本料金200円 視聴料金は従量制(0円〜1000円)
こういう柔軟な料金コースの方が、一律平等料金よりも良いことは火を見るよりも明らかだと思う。
同じ理屈で、スマホの「基本料金」と「通話料金」を分けることは、決して紛らわしいことではない。