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福岡会合のお詫びなど

 石破 茂 です。

 さる1月8日、自民党本部より会食自粛要請が出た当日に、福岡市において地元の皆様と会食しました件につき、深くお詫び申し上げます。

 会場となった店の消毒や換気等の感染予防対策を確認するとともに、予め「もし人数が5人以上になる場合には、部屋を分けるか、襖で仕切るなどで、1会場の人数を4人以内とする対応」をお願いしておいたのですが、うまく伝わらなかったのか、そうなってはおりませんでした。

 主催者のご厚意を無にしたり、多忙な中に時間をやり繰りして出席してくださった方々への礼を失することを怖れる気持ちが勝ってしまい、苦しく厳しい事態に直面しておられる皆様のお怒りと不信を招いてしまいましたのは全て私の責任であり、大変申し訳なく、己の不明を恥じるばかりです。重ねて心より深くお詫び申し上げます。

 昨14日に報道番組で尾崎東京都医師会長を交えて討論する機会があり、改めて感染症について考え、医療体制のみならず、我が国の今後の在り方について改善しなければならない点に多く気付かされました。

 人口当たり世界最大の病床数を保有し、人口当たりの医師数、看護師数、ICUなどの体制も先進国平均と遜色なく、CTやMRIなどの高度な機器の普及率は世界一であり、感染者や死亡者が欧米に比べて一桁以上少ない日本において、なぜ「医療崩壊の危機」が叫ばれているのでしょうか。日本が「医療崩壊」するのなら、欧米は「医療全滅」していなければならないはずですが、そうはなっていません。

 一部の報道を除いてあまり指摘されていないことですが、日本の医療の供給体制にも大きな問題があるものと考えられます。

 日本では医療費と国民負担の軽減の観点から診療報酬が低く抑えられているために、医療機関は経営上できるだけ満床状態を維持しなければなりませんし、公立病院が多数の欧州とは異なり、民間病院が全体の8割を占める以上、これは当然のことです。

 病床に余裕がないために医師・看護師などの医療関係者や病院内の病床の融通が効きません。

 医療法上、民間病院に対して都道府県や行政は指揮命令権を持たないため、地域内外の病床や医療関係者の融通もあくまで要請ベースにとどまります。

 コロナ患者を受け入れれば一般患者からは敬遠され、風評被害も予想されるため、要請に応える民間病院も多くないのもまた当然のことで、限られたコロナ対応病院のコロナ病棟やその関係者に大きな負担がかかり、極限的な状態となっているのが現状ではないでしょうか。

 敢えてコロナ患者を受け入れて、不幸にも多くの死者が出てしまった台東区の総合病院に対しては多くのバッシングが寄せられました。これを見た多くの民間病院は「高度な医療体制を持った病院でもあのようになるのだから、当院ではとても受け入れられない」という思いになっています。

 尾崎東京都医師会長が指摘しておられるとおり、「感染症専門病院」を全国各ブロックに一つ建設し、感染症流行時にはこれが対応して一般の病院に負担をかけることなく、平時は感染症対応能力を持つ医師や看護師の研修や訓練にあてる、といったことも、実現に向けて努力したいものです。

 「日本においては」とか「東京都においては」という数字がしばしば取り上げられますが、全国47都道府県、23東京特別区、1718市町村によって事情は大きく異なるのであって、オンライン上でこれらの状況を細かく把握するとともに、融通性や機動性を確保するための医療法の改正や予算措置も併せて行わなければならないと思います。

 中国はコロナを制圧したと豪語していますが、それは共産党の強権体制による徹底した個人情報の国家管理と人民解放軍の大動員によるところが大きいと思われますし、準戦時体制である韓国や台湾でも、そうであるが故の徴兵制維持と個人情報管理の徹底が背景にあることを看過してはなりません。韓国では医師となった者が3年間、政府の命令に従って勤務すれば兵役は免除されるという制度の下、彼らがコロナ対応にあたっています。

 「緊急事態の宣言が遅すぎる」「政府は全国への緊急事態の宣言を急げ」「緊急事態においては基本的人権を最大限に尊重せよ」というのが多くの世論であることはよく承知していますが、緊急事態の宣言の目的があくまで「医療崩壊の阻止」である以上、医療供給体制の早急な見直しと、人口稠密地域とそうではない地域を分けて考えるきめ細かさが併せて必要ですし、基本的人権の尊重は憲法の大原則ですが、非常時において予想されるリスクを最小化する配慮も欠かせません。

 そして同時に、がん検診が手控えられることによって、早期発見が遅れて手遅れになってしまうリスク、高齢者が一人ぼっちで家に籠り、運動も不足して認知症が進行してしまうリスク、生活が行き詰って自ら命を絶つ人が増加するリスク、これらへの対策も考えられなくてはなりません。

 コロナの非常時であればこそ、あらゆる議論が行われなくてはならないはずです。専門家会議の議事録の公開は検討されるべきですし、医師会などが主催してあらゆる立場の人が参加して発言する討論会もあってしかるべきです。

これは長期的な課題ともなりますが、日本の「ヘルスリテラシー」(健康・保健に対する基礎的理解)が極めて低いことも改めなくてはなりません。「医師の言うことが理解できない」人の比率が、最先進国であるオランダどころかEU各国に比べてもわが国は低いとされており、それが不安を増幅させる要因の一つとなっています。

 国民の命を守るという意味において、医療も安全保障の一面を持つのであり、費用対効果という観点をあまりに強く持つことはあってはなりません。わが国の防衛においても、主に平時を念頭に置き、情報を十分に公開せず、予備自衛官の増強などの弾力性確保を怠ってきた面があり、その責任を自分も含めて強く顧みなければなりません。「よらしむべし、知らしむべからず」という統治の姿勢は、民主主義国家においてあってはなりません。

 今回、医療と防衛の共通した問題を認識するにつけ、国家の在り方そのものを考えさせられています。平時において何とか綱渡りで運営してきた国家は、有事には極めて脆いものであることを痛感しております。

 地球の温暖化が進み、氷山や氷河が溶ければ、さらなる未知のウイルスが活性化する確率も高まります。起源からたかだか数十万年しかない人類の歴史など、地球の起源から現在までを24時間に例えればラスト77秒にしか過ぎないのです。

 このような時に政権内部で権力闘争などしている暇はありません。

 「文藝春秋」2月号のコロナ特集や、前回ご紹介したコロナ関係の文献からも新たな示唆を受けています。

 皆様ご健勝にて週末をお過ごしくださいませ。

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