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オタク中年化問題 in 2021

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私のライフワークのひとつは、オタクの社会適応について考えることでした。今でも「キモオタ」といった言葉が残っているとおり、かつてオタクは、社会不適応の象徴のように語られていました。

実際問題として、世間のほとんどの人が関心を寄せない子ども向けアニメやら特殊機械やらに時間・お金・アテンションなどを集中させれば集中させるほど、そのオタクは世間からズレていってしまいます。

もともと性格的に世間からズレている人が、世間をまったく顧みず、あらゆるリソースを自分の趣味領域になげうてば、社会不適応者のような姿になったり、コミュニケーションの技能がぜんぜん身につかないまま年を取っていくことはあり得たでしょう。たとえそうすることで、どうにか生きていけたのだとしても。

ところで、オタクっていつまでも続けていられるものなのでしょうか。

思春期にアニメにハマった・徹夜でオンラインゲームを遊びぬいた・夏と冬には頑張って同人誌を買い漁った、そういう生活はいつまでも続くものなのでしょうか。

生き残ったオタクだけが『オタクはずっと続けられる』という

この問題を考えるにあたって私が特に意識しているのは、いわゆる生存者バイアスです。

たとえば20代の頃に熱心にアニメやゲームを追いかけていたオタクが10人いたとしましょう。20年後、そのうち6人がアニメもゲームも嗜まなくなり、2人がいくらかアニメやゲームを見続けていて、2人が今でも熱心に活動をしていた時、ネットの声として聞こえてくるのは誰の声でしょうか。

熱心に活動をしている2人は、「年を取ってもオタクはぜんぜん現役」と言うでしょうし、最近ハマった作品の話題を盛んにSNSに投稿することでしょう。こういう中年オタクはぜんぜん架空の存在ではなく、それなりにいます。古強者として敬意の対象にしたいものです。

いくらかアニメやゲームを見続けている2人も、それなりにSNSに何かを投稿したり、今遊んでいるソーシャルゲームの情報をシェアしたりすることでしょう。「自分はオタクとして薄くなってしまった」みたいなぼやきを書きこむことだってあるかもしれません。

では、もう足抜けしてしまった残りの6人はどうでしょうか。彼らはもう、アニメやゲームについてSNSに投稿しません。というより足抜けしてしまっているならそういう話題のタイムラインを構築していないでしょう。

家庭のことをインスタグラムに投稿しているかもしれませんし、仕事でfacebookをやっていることもあるかもしれません。もしかしたら『機動戦士ガンダム』シリーズや『新世紀エヴァンゲリオン』の中年向けグッズの広告に「いいね」を付けたりしているかもしれませんが、それだけじゃあオタクの発信するシグナルとして鳴き声が弱い。

いずれにせよ、足抜けしてしまった残りの6人は、もうわざわざ「私はオタクをやめました、続けられなくなりました」とは言及しません。アニメやゲームへのタイムリーな執着が薄まれば、言及しなくなるのは自然なことです。

かろうじて、本当はアニメやゲームに未練が残っている人が「アニメもゲームも観れなくなってしまった、いわばオタクでなくなった自分を嘆く言葉」を口にすることならあるかもしれませんが。

これら全部の結果、SNSのなかでもアニメやゲームやオタクの話題が飛び交う領域は、老いても元気の良い中年オタクのよく通る声と、なんとかついていっているオタクの声、それから若いアニメ愛好家やゲーム愛好家の声によって構成されることになります。

元気の良い中年オタクは同類同士で結びつくことも多いでしょうし、そうでなくてもSNSはエコチェンバー化するといいいますから、そういう人のタイムラインの風景は、生存者バイアスの精髄のようなものとなるでしょう。そうなった場合、オタクは何歳になっても続けられるという確信が強まってもおかしくはありません。

全体としては変わっていく。変わっていかざるを得ない

私が間近に見聞きしてきたオタクの世界の話をすれば、十代や二十代の頃にアニメやゲームに骨の髄までハマっていたオタク男女が四十代になってなお、アニメやゲームを愛好している、いわば「オタクの20年生存率」はだいたい2-3割ぐらいでしょうか。

残りは皆、アニメやゲームを途中で追いかけなくなっていきました。ある者は釣り趣味やカメラ趣味に鞍替えし、ある者は趣味らしい趣味のくっきりとしない、仕事中心の人間や家庭中心の人間へと変わっていきました。なかには消息が途絶えてしまった人、鬼籍に入った人もいます。

オタクとして20年以上生存している人々の多くは、だいたいオンラインで情報発信をしている、元気も新陳代謝も良い人たちです。ただ、そういう2-3割の人でさえ、スタンスがどこか変わっていたり、熱意の具象化が大人びていたり、エイジングの影響はあるなと感じさせる部分はあります。「狂犬みたいなオタクだった人が、ものわかりの良いオタクになった」みたいな変化を遂げた人もいらっしゃいます。

こうした、オタクの年の取り方みたいな話をセンシティブに受け止める人もいらっしゃるので書いておきますが、私は、オタクをやめたくなったらやめたっていいし、ガンダム念仏会みたいな旧オタク集団があちこちでzoom飲み会をやったっていいとも思っています。

もちろん、変質・変節しながらも現役に踏みとどまり、今という時を呼吸している人達はたいしたものだと思いますし、そういう古強者の姿に励まされることもあることは断っておきましょう。

それでも人は年を取るし、人は変わっていくのです。時代だって変わっていく。諸行無常。そうした時間の流れからオタクだけが無縁でいられるという道理はありません。ゲームで完徹するのが辛くなるし、コミケの前日に泊まる宿のグレードを上げたくもなる。

そして個人個人でみればエイジングの足音に差異はあっても、全体としてみればオタクではなくなっていく人、かろうじてオタクの名残りをとどめている人は増えていきます。オンラインでもオフラインでも趣味から遠ざかっていく人は出てくるし、ときには一週間前に見たアニメが今生の最後のアニメだった、などということも出てくるわけです。

こういう、変わっていくオタクややめていくオタクが存在している事実、オタクとて生物学的加齢や社会的加齢と無関係ではないという事実をどう受け止めるのか、たとえば肯定的にみるのか否定的にみるのかも人それぞれだと思います。ですが、オタクとて時間が流れれば人が変わっていくという事実は、共通の認識としてもっと知られても良いように思います。

それと、もしオタクとしての活動にも盛衰があって、アニメやゲームに没頭できる時間も有限だとしたら、それはそれでかけがえのないことではないでしょうか。

没頭していられる時間が有限だからこそ、その時に見たアニメ・その時にのめりこんだゲーム、それぞれの体験にかけがえのなさがあるのではないでしょうか。

旧時代に言われたような、「オタクは終わりのない夏休み」とか「オタクは永遠の思春期」がもし本当だったら、オタクとしての一瞬の輝きにさほどの値打ちは宿りません。私が思うに、かりに永遠の命を手に入れたオタクが永遠にアニメやゲームを見続けるとしたら、作品から受け取るインパクトや作品をとおして残る思い出はだんだん薄くなり、じきに消えてなくなってしまうことでしょう。

それと、オタク自身が時とともに変わっていくからこそ理解できるもの・見えてくる視点もあります。同じ作品が違った風にみえることもあるでしょうし、ひとりひとりのキャラクターへの印象も変わっていくでしょう。私自身の例を挙げると、私のなかでは『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に出てくるギュネイ・ガスへの印象がどんどん良くなっています。そしてシャア・アズナブル自身への印象はどんどん悪くなっています。

また、昔だったら見ていなかったと思われる作品──たとえば『宇宙よりも遠い場所』──を楽しめるようにもなった反面、昔だったら喜んでいたと思われる作品──たとえば『かぐや様は告らせたい』──が楽しみづらくもなりました。

こうした変化を悲しんでも仕方がありません。それより、趣味上の変化として楽しんでいきたいと私自身は思っています。私よりも濃い状態を保っている古強者の人々にも、こうした年輪の積み重ねがあるのではないでしょうか。

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