元リクナビNEXT編集長の転職コンサルタント、黒田真行さんは「企業は人材紹介会社に“裏の条件”を出している場合が多い」と言います。求人広告には書けないその裏条件とは──。
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中途採用で求められるのは「プレイヤー」
一般的に、転職は35歳を過ぎると難しくなると言われています。実際、特別なスキルを持ったスペシャリストや役員クラス以上のエグゼクティブは別として、いわゆる「普通の会社員」で中途採用率が高いのは20代から30代前半ぐらいまで。なぜそうなってしまうのか、企業の目線に立って考えてみましょう。
会社組織は、上のポジションに行くほど人数が少ないピラミッド型になっています。この底辺部分に当たるのが新卒採用者ですが、バブル崩壊やリーマンショック、コロナ禍といった事態が起きると、多くの企業が新卒採用を抑制。すると、時間とともに底辺部分より中間層のほうが増え、ピラミッドがいびつな形になってきます。
たいていの企業は、ピラミッドがいびつになると、きれいな三角形に戻そうとします。そこでよく行われるのが中途採用。新卒採用抑制で削られてしまった底辺部分を、中途採用者で補おうとするわけです。この場合、企業が求めるのはマネジャークラスではなく、リーダーの下で働くプレイヤーたち。
長く転職市場に携わってきた経験から言えば、一般的な企業のマネジャーは35歳前後。この下で働く人を求めているわけですから、例えば30歳と40歳の2人の応募者が来たら、30歳の人のほうが、マネジャーの扱いやすさの観点から「当社のニーズに適した人材」ということになります。
企業が求人広告に書けない「裏の条件」
近年、転職市場でいちばん求人数が多いのは営業職ですが、これも27~32歳がゴールデンゾーンと言われています。ビジネスの基礎は身についているが伸びしろが大きく、さらに体力もモチベーションも高い世代ですね。上の世代に比べると転職経験も少ない人がほとんどなので、企業としても採用しやすい層と言えるでしょう。
では、35歳以上の転職者を企業はどう見ているのでしょうか。ひと昔前と違って、今の求人にはやみくもに年齢制限ができないというルールがあるので、広告には「35歳まで」といった条件は書かれていません。そのため、転職者はその企業が求めている職種やスキルはわかっても、35歳以上がアリなのかナシなのかはわからない場合がほとんどです。
しかし、求人を行う企業の多くは、何歳ぐらいの人を採用するか前もって決めています。広告にはそう書いていなくても、実際は35歳以上の人の履歴書は見ないという企業も少なくありません。本音では、35歳以下の人だけ応募してほしいと望んでいるわけです。
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とはいえ、年齢は求人広告には書けない“裏の条件”。そこで企業がどうするかというと、あらかじめ人材紹介会社に「この条件に合う応募者だけを選んでくれ」と依頼するのです。
規制緩和もあり、人材紹介会社はこの20年で数十倍にまで増えました。今ではほぼ全職種に人材紹介会社が関わるようになっており、このルートでの中途採用も急増しています。そして企業は、求人広告に載せる内容については一定のルールを守らなければなりませんが、人材紹介会社に要望を伝えるだけなら何を言おうと自由。
転職者にとっては、この裏の条件こそが本当に知りたい部分ではないでしょうか。
私の経験では、企業が裏で要望する条件のトップは年齢、次いで性別です。ほかにも、よく挙がる条件としては転職回数や各社での在職期間、これまでの失業期間、現在就業中か失業中か、などがあります。