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「子どもを持つ持たないは個人の自由だから、私の税金が使われるのはおかしい!」

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世代間格差: 人口減少社会を問いなおす (ちくま新書)

「世代間格差」という本の中で非常に面白い箇所があったので、切り出してご共有。読書メモはまた別途残します。


他人が育てた子どもにフリーライドするということ

丁寧に紹介したいので、ちょっと長めですが引用させて頂きます。改行・太字は僕が入れています。

積極的な意志によって子どもを持たない世帯も、高齢になると他の世帯の子どもの支援で年金などの所得保障の恩恵を受けることになる。賦課方式を採用している現在の年金制度を前提とすれば、自分の子どもは、自身に対して経済支援をしてくれるのではなく、社会全体の親世代に対する支援を行うことになる。

子どもの公共財的な性格を踏まえれば、それにフリーライドするインセンティブも生じるだろう。自分たちは子どもを持たず、子どもに費やす資源は自らの消費に充当し、高齢になれば他人が育てた子どもの支援で年金の給付を受けるというものである(もちろん望んでいても子どもを持てなかった夫婦は別である)。

(中略)そうなれば、「誰もが子どもを持たない」という戦略が支配的になり、それが囚人のジレンマなどのゲーム理論で用いられるナッシュ均衡(それ以外の戦略を採用するインセンティブが生じないこと)になる。

もちろん、フリーライドする利得よりも子どもからの高揚が得られないという機会コストが大きい場合が一般的であって、多くの世帯は子どもを持つという決定をするが、理論的には「誰もが子どもを持たない」戦略も排除できない。

少子化とは、程度の差はあれ他人が育てた子どもにフリーライドすることでもある。これを避けるには、多くの子どもを育てた世帯にはそれなりのメリットを与える仕組みが必要である。

具体的には、子どもを持たない世帯は子どもを持つ世帯に補償を行う、あるいは子どもの数に応じて報酬を支払うといったことである。

年金制度を考えれば、負担を行う現役世代を多く育てた世帯には、より多くの年金を支払うことが考えられる。さらには、年金の先渡しとして、所得保障を行うことも考えられるが、これど家族向け支出(子ども手当など)と理解することも可能だろう。


どうでしょうか。これ、とても面白いテーマだと思います。

まず、個人的な肌感覚でいえば、「自分たちは子どもを持たず、子どもに費やす資源は自らの消費に充当し、高齢になれば他人が育てた子どもの支援で年金の給付を受ける」という発想自体がなかったので、子どもを産むか否かという判断をする上で、インセンティブとしてはまだ機能していないのかな、と感じます。

フリーライドすることと、子どもを産み育てることは、天秤に掛けられる話でもない気がします。経済情勢が厳しくなれば、そういう考え方をする人も増えてくるのかもしれませんが…。

インセンティブとして機能しているかはさておいても、「少子化とは、程度の差はあれ他人が育てた子どもにフリーライドすることでもある」というのは確かな事実です。子どもがいるかいないかを問わず、賦課方式の年金という仕組みはまさにそのものです。僕が将来貰う年金は(貰えるとは思えませんが…)、誰かが育てた子どものお陰で手に入るのです。


「子どもを持つ持たないは個人の自由だから、私の税金が使われるのはおかしい!」

日本では子どもを育てることは「自己責任」というのが一般的だと思います。「子どもを持つ持たないは個人の自由だから、私の税金が使われるのはおかしい!」という考え方ですね。本書で議論されているような「子どもを公共財として捉える」という発想を、どれだけの人が持っているのでしょうか。

子どもは公共財、という価値観にもとづく「子どもを持たない世帯は、子育て世帯に補償を行うべきだ」という主張は、この日本においては議論を呼ぶものだと思います。子ども手当のときにも、まさに議論があった記憶があります。

僕は子育て世帯なので中立的な議論にならないのですが、子どもを持つ前は「子どもは公共財だ。(将来子どもを持つかもしれない自分のためにも、)子育て世帯への支援を手厚くするべき。そのためなら税金が多少高くなってもいい」という考えを持っており、今もそう考えています。


厳しくいえば、「子どもを持つ持たないは個人の自由だから、私の税金が使われるのはおかしい!」と考える人に対して、浅はかさを嗅ぎ取ってしまいます。

老齢になった際に年金を貰わない、医療を一切受けない・受けても全額自己負担にする、など現役世代からの援助を受けないなら、そういう考え方もありですが、これは現実的ではないでしょう。

「今、現役世代として社会保険料を支払って、親世代を支えている。だから年老いたとき、現役世代から支えてもらうのは当然だ。子ども、つまり将来の現役世代のために、私が支出するのは負担が大きすぎる。常に子は親を支えるものだ」という考え方もありますが、かといってそれで「免責」されるのかというと、僕は疑問が残ります。

子どもは減っていく一方なので、将来の現役世代(今の子どもは)、今現役世代である僕らよりも、高い負担を強いられることになるからです。僕らが今抱えているこの重い荷物を、子どもたちにはもっと重くして渡す、これでいいのでしょうか。


子どもへの投資は、もっとも効率がよいインフラ投資だと考えます。僕は思想的にはリバタリアン寄りで、税金による再分配は非効率だと考えています(そこら辺は新刊で触れているのでぜひ)。それでも、子どもを産み育てる環境の整備は、税金という資源を使ってやるべきことだと考えますし、それは数少ない「政府が最低限やるべきこと」だとも思います。

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年収150万円で僕らは自由に生きていく (星海社新書) posted with ヨメレバ イケダ ハヤト 講談社 2012-11-22


皆さんは子どもを育てるために、自分の税金が使われることをどう感じますか?あくまで子どもを産み育てることは自己責任であり、自分には関係がないことだと捉えますか?その場合、将来自分が子どもたちの税金で支えられることについて、どう考えますか?ぜひ皆さんの考えを聞かせてください。


ちなみに日本は世界的に見ても、家族向け支出が小さい国となっています。こちらは本書にも掲載されている、2007年のデータ。

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図録▽少子化対策公的支出の国際比較より)


「世代間格差」は様々な切り口から、データを駆使して日本の論点をサクサクと整理してくれる良著です。日本社会について考えるヒントに溢れている一冊といえるでしょう。ぜひお読みください。

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世代間格差: 人口減少社会を問いなおす (ちくま新書) posted with ヨメレバ 加藤 久和 筑摩書房 2011-11-07

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