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【読書感想】暗殺の幕末維新史-桜田門外の変から大久保利通暗殺まで

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暗殺の幕末維新史-桜田門外の変から大久保利通暗殺まで (中公新書)
  • 作者:一坂 太郎
  • 発売日: 2020/11/20
  • メディア: 新書

内容(「BOOK」データベースより)
近代日本が生まれた幕末維新期。日本史上これほど暗殺が頻発した時期はない。尊皇攘夷論の洗礼を受けた者をはじめ、彼らはなぜ暗殺に走ったのか。大老井伊直弼から内務卿大久保利通に至る国家の中枢、外国人、坂本龍馬らの“志士”、市井の人々までが次々に標的となった事件の凄惨な実相と世間の反応を描く。さらに後世、一方で暗殺者を顕彰し、他方で忌避した明治国家の対応も詳述する。闇から見つめる幕末維新史。

「歴史は勝者によって作られる」と言われるのです。
この本を読んでいると、歴史ファンに人気が高く、戦国時代と並んでNHKの大河ドラマでも採りあげられてきた「幕末から明治維新期の日本」って、こんなに血なまぐさいというか、理不尽に人が殺されていた時代だったのか、と読んでいて唖然としてくるのです。

大老・井伊直弼が暗殺された「桜田門外の変」や、坂本龍馬、大久保利通の暗殺に対しては、「暗殺が良いことだとは微塵も思わないけれど、暗殺する側にも、それなりの覚悟や事情があったのだろう」という気はするのです。
しかしながら、この本のなかで、著者は、数々の「歴史を変える意味があったとは思えない、自分たちの組織の示威行動としての暗殺や、権力者に従っていただけの小物をなぶり殺しにするような暗殺」を数多く示しているのです。

民衆が、被害者の首がさらしものになっているのをエンターテインメントとして消費している様子についても、当時流通していた「かわら版」などをまじえて紹介しています。

 宇郷玄蕃梟首の評判は、武市半平太ら土佐グループを刺激する。次なるターゲットは安政の大獄のさい島田左近の下で「志士」捕縛に尽くした目明し文吉(猿(ましら)の文吉)である。文吉は自分の娘を、島田の妾に差し出していたほどの関係だった(島田が襲われたのもこの妾宅)。

 武市門下の五十嵐敬之は「天誅見聞録」で『これは少し私も関係して居ります」と、刺客を決めたときの異様な光景を回顧する。それによると木屋町の武市寓居で同士が協議した結果、

「斬りに行くと云う人が多くて仕方がない。そこで籤引きをしてきめますと、清岡治之助・阿部多司馬・岡田以蔵の3人が当たりました」

 となった。町奉行所の役人は及び腰で犯人が捕まる様子はなく、しかも藩邸内は治外法権である。このころになると岡田たちは、殺人をゲーム感覚で楽しんでいたのだろう。そもそも、相手を殺さなければ自分が殺されるといった切羽詰まった状況ではない。

 籤で刺客が決まると、「あの様な犬猫同然のものを斬るのは刀の汚れである。絞め殺すが宜しい」との島村衛吉の提案で、五十嵐と上田宗児が行李を結ぶための細引を買いに行った。

『東西評林』によれば文吉は二条新地の妾宅で帯刀の三名に拉致され、三条河原に連れてこられた。そして細引で首を絞められて殺され、木綿をさらす場の杭に裸で手首や腹部を縛り付けられて放置された。桜田門外や坂下門外の浪士たちは、みずからの生命と引き換えに相手を斃そうとしたが、岡田たちにはそのような悲壮な決意は感じられない。抵抗できない者を寄ってたかってなぶり殺しにするサディスティックな快感に酔いしれながら、それを正義と信じていただけである。

 京都の民衆は島田左近以来、「天誅」の梟首があると、我先にと見物に詰めかけたことはいくつかの史料からも明らかである。さらに血まみれの生首は、絵師たちにとり格好の画題となった。ニュース性もあった梟首の残酷絵(無残絵)は幕末の不安な世相や荒んだ人心を背景として描かれ、広まった。

 残酷絵はよほど需要があったようで、公共機関だけでなく個人所蔵まで含めるとかなりの点数が存在する。描かれて百数十年を経ているはずだが、古書店目録やインターネットオークションでもたびたびおめにかかる。これだけ散在していたら、全貌を把握するのは困難だろうし、事実そのような研究には、お目にかかったことがない。

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