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核武装と原発推進は両立し得ない

 選挙が近づいてきたということで、ここのところメディアはその話題で持ちきりです。中でも注目されているのが、石原・橋下両氏が率いる日本維新の会です。

 大手マスコミ、特に左派系のマスコミは日本維新の会を強く批判しています。彼らはどうやら、維新の会が次の選挙で多くの議席を獲得すると予想しているようです。そうでなければ、これほど批判する必要はありません。維新の会に対する反発は、石原氏たちが権力を握ることに対する恐怖の裏返しです。

 さて、その維新の会ですが、毎日新聞の報道によると、選挙の公約に「脱原発依存」を盛り込むことで合意したそうです。ただ、旧太陽の党の人たちの中には脱原発に慎重な意見も強いため、原発を含む電源構成の「ベストミックス」を目指す方向も盛り込む形になるようです(『毎日新聞』11月23日付)。

 弊誌としては、保守こそ、あるいは右翼こそ脱原発を掲げるべきだと思っているので(『右からの脱原発』参照)、旧太陽の党が脱原発に慎重な態度をとっていることには疑問を覚えます。

 旧太陽の党の人たちが原発にこだわる理由はおそらく、核武装にあると思われます。日本が将来的に核武装するためにも原発は必要だという判断が働いているのでしょう。実際、石原氏は『文藝春秋』などでも、核兵器のシミュレーションなどについて言及しています。もっとも、橋下氏はこれに否定的なようです(『読売新聞』11月21日付)。

 核武装のためには原発を維持する必要があるといった見解はよく耳にするものですが、それは誤りです。むしろ、原発を推進している限り、日本は核武装することができないのです。本当に核武装することを考えているのならば、脱原発を主張すべきでしょう。

 ここでは、弊誌2011年10月号に掲載された、国際政治学者・藤井厳喜氏と作家・竹田恒泰氏の対談を改めて紹介したいと思います。(YN)

『月刊日本』10月号

「脱原発なくして対米自立なし」より

核保有のためには脱原発しかない

―― 脱原発と核保有は両立するのでしょうか。

藤井: 両立するというよりも、核保有のためには脱原発をするしかないのです。原発を推進するためにはNPTに加盟していなければなりません。しかし、NPTに入っている限り、核武装はできません。NPT体制とは、憲法九条体制と同じように、日本の自立した防衛力の整備を不可能にする体制なのです。

 一九五三年のアイゼンハワー大統領の「平和のための原子力」演説以来、いわゆる原子力の平和的利用が促進されてきました。これに対応して、日本への原発導入の旗を振ってきたのが、中曽根康弘氏や正力松太郎氏です。

 しかし、アメリカは、原子力の平和的利用を促進する一方、核保有国を増やさないという方針を貫いてきました。つまり、原発を推進することと核兵器を保有しないこととは、パッケージなのです。これが条約として明文化されたのが、NPT体制にほかなりません。「原発をやらせてやる、そのために原料もノウハウも提供してやる。しかし、絶対に核兵器を持ってはいけない」ということです。

 私が「核武装しよう」と言うと、「それはだめだ。原発が止まる」と言った原発推進派の人がいました。実際その通りなのです。NPTを脱退すれば、核燃料を輸入できなくなります。他方、NPTに加盟している限り、核武装はできません。二律背反なのです。

竹田: IAEAという組織は、世界中の原子力を隈なく監視しているのかと思いきや、その予算の七割までを日本の監視に割いてきました。世界の原発の一割しかない日本の原発に、予算の七割を割いています。つまり、IAEAとは「日本核武装監視機構」なのです。日本の核武装を監視するために作られた機構であることは間違いありません。

藤井: 未だに、第二次世界大戦の戦勝国体制が続いているということです。国連安全保障理事会の常任理事国は、すべて核兵器を保有しています。NPT体制とは、彼らの核独占体制のために結ばれたものなのです。

 IAEA事務局長に天野之弥氏が就任したことは、困ったことだと思いました。日本は、ますますIAEAにがんじがらめにされてしまいます。

竹田: 日本が原発を止めてしまったら、国連もIAEAも、アメリカも中国も困ってしまうでしょう。

すでに核兵器の原料はある

藤井: 原発を推進し続けてプルトニウムを蓄積すれば、核武装に近づくというのは幻想です。プルトニウムがあるだけでは、処理に困るだけで、核兵器にはなりません。日本の自立のために、核武装するのだという「政治的意志」を定めたとき、はじめてプルトニウムは役に立つのです。

竹田: 原発を持っていてはじめて核武装ができるというのは、イメージに過ぎません。実際、核兵器は原発のない時代から開発されていました。

 原発を運転し、技術を蓄積することによって核兵器を持ちやすくなるといった主張がありますが、いくら原発を運転しても技術の蓄積にはなりません。タクシー会社がどんなに運転技術を蓄積しても、いい自動車を開発するための技術は蓄積できないのと同じことです。
(以下略)

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