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寒波で節電が必要になった日本、その背景にあるもの 再エネと電力自由化が招く供給力低下 - 山本隆三 (常葉大学経営学部教授)

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(Woters/gettyimages)

大雪による高速道路での立ち往生が何度か報道されている。寒波は様々な影響をもたらしているが、電力需要が増加し電力供給が不足する懸念も出ている。ニュースでも節電の呼びかけが行われる事態だ。電力供給では需要がある時に必要な量を発電しなければ、停電する。需要があまりない時に発電し余った電気を蓄電池などに貯めておき利用すれば良いが、蓄電池のコストは高く、また利用できる時間は数時間が限度なため、実用化は簡単ではない。

1月7日、電力会社によっては供給予備率(需要に対する予備の供給能力)が通常必要とされる8%‐10%を大きく割り込み、最低限必要とされる3%も割り込む綱渡りの事態となった。どこかの発電所が故障などで停止すれば、供給力が不足し停電する事態だ。供給力維持のため電力会社間で電力の融通も行われた。

電力需要は、季節により、また1日の中でも変動する。冷暖房需要が増える時期、オフィス、工場が立ち上がり事業活動が活発になる午前中から夕方までの時間の需要が大きくなる。北海道を除き最大電力需要は、通常冷房需要が大きい夏場に起こるため、冬季の電力需給逼迫は今まであまりなかったが、今年の場合寒波による需要増に応えた発電所の稼働率上昇が燃料在庫減少を招いた問題に加え、再生可能エネルギー(再エネ)導入量の増加が、結果として電力需給に影響を与えている可能性がある。

固定価格買取制度(FIT)により太陽光発電設備は飛躍的に増え、いま中国、米国に次ぐ世界第3位の導入国になった。太陽光の発電量増に加え、電力需要が伸びないことから火力発電所の稼働率は一段と下がったが、電力自由化政策により事業者は稼働率が低下した火力発電設備の維持が困難になってきている。低稼働率の設備も維持されなければ、今回のように需給が逼迫した際には供給力が不足する可能性がでてくる。設備維持のため容量市場と呼ばれる新しい制度が作られているが、機能するかどうかまだ不透明だ。この状態が続けば、今後需給逼迫の頻度が激しくなるかもしれない。

再エネ導入増が招いた問題は、火力発電設備の稼働率低下だけではない。再エネ設備からの発電量急減に伴う、供給力不足の問題がある。太陽光発電設備では夜間は無論のこと、雪、雨の悪天候時発電量はほとんど期待できない。太陽光発電設備からの供給への依存が増すと、日没後、あるいは悪天候時に大きな需要があると電力供給に問題が生じることになる。昨年夏米カリフォルニア州は、そんな経験をすることになった。 

思わぬ停電を経験した米カリフォルニア州

米カリフォルニア州は、温暖化対策に熱心な州だ。自動車からの排ガスについて連邦政府よりも厳しい規制を導入し、二酸化炭素を排出しない電気自動車、燃料電池車の導入も進めている。2035年には内燃機関を利用する乗用車と小型トラックの新車販売を禁止する方向で検討が進んでいる。電源の低炭素化も進めており、風力発電、太陽光発電設備導入を推進している。

1998年に電力自由化に踏み切った同州では、新規参入の発電事業者による卸電力価格の高騰を狙った供給抑制が原因とされる停電が、2000年から2001年にかけ発生した。自由化を中断し今は一部の自由化に留め、州政府が電力事業の規制を行っている。州政府は温暖化対策のため、再エネ設備導入に伴い二酸化炭素を排出する火力発電所の廃止を進めている。

夏の電力最需要期に備える1年の内数週間、あるいは数日しか稼働しない天然ガス火力設備があるが、州政府は低稼働率の火力設備に代え大型蓄電池を導入し最需要時に対応するように電力会社に指示している。同州では風力、太陽光発電設備導入に伴い、石炭火力、天然ガス火力設備の閉鎖が進み、火力設備とその発電量が減少している(図‐1及び図‐2)。



昨年8月米国西部は熱波に襲われた。加州の砂漠地帯デスバレーでは8月の世界最高気温を更新する摂氏54.4度が記録されるほどの熱波だった。このため西部諸州では冷房需要が急増することになった。加州では日没後太陽光発電設備からの供給がなくなった後も冷房需要が減少せず、電力供給が不足する事態が懸念されることになった。通常行われている電力輸入も、周辺州においても冷房需要が急増したため多くを期待できない状況だった。

加州の送電管理者は、冷房温度の設定変更、家電製品の使用抑制などの節電を呼びかけたが、8月14日と15日の両日日没後に電力供給が不足する事態となり、輪番停電が実施された。図‐3の通り、日没に伴い再エネからの発電量が急減しているが、この減少分を他の電源でまかなうことができなかった。同州送電管理者は、再エネ導入に伴い天然ガス火力を閉鎖すれば停電の可能性があることは事前に分かっていたと州政府の対応を非難し、ニューサム州知事が準備不足だったと詫びる事態になった。トランプ大統領は、民主党のエネルギー政策は失敗した加州の政策を全国に広げることになるとツイートした。


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