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2009年時の民主党のマニフェストは何が問題だったのか

 2009年の総選挙により、民主党政権が誕生しました。

 その際、2009年時のマニフェストが民主党の公約であり、それを多くの国民が支持した結果が、民主党政権の誕生につながりました。

 多くの社会福祉政策が盛り込まれており、反面、増税はしない、無駄を省くということころから出発していることが特徴です。
(私自身は子ども手当はどうかと思っていましたが。「子ども手当に疑問」 但し、政策そのものを否定するものではありません。)

 民主党政権になってから行われた事業仕分けは、相応の支持を受けました。

 マニフェストを決めた段階で、どこまで財源問題を考えていたのか、という問題はありますが、しかし、単に選挙目当てだったんだという批判は、あまりに悪意をもった批判であり、私は、以下の点では、やはり当時の民主党マニフェストは一定の価値を持っていたと考えます。

① 格差社会が著しく進行し、持つ者と持たざる者の間の不平等が甚だしく、これを是正することは急務であったこと。
② 事業仕分け自体は不十分だったが、目指す方向は間違っていなかったこと。

 ①についてですが、例えば、ガソリン暫定税率撤廃や高速道路無償化がありました。

 これによって一時的にガソリンの値段が下がったことにより、国民がその時期での購入に殺到したり、あるいは帰省に高速道路を使っての移動が増えました。

 これ自体は、私は本来、公共交通機関を利用した場合の交通費などを規制し、より利用しやすいものとして対処すべきと考えていますが(国鉄の解体は最悪の所業)、少なくとも、この現象から言えることは、国民生活にゆとりがなくなっているということの現れでもあるということです。

 さらには、高校授業料無償化です。

 このようなことは当然のことです。自民党は、所得制限を設けよなどと未だにこの無償化に敵意を示していますが(民主党がこのマニフェストを掲げなかったら、自民党は従来通り、カネのない家庭は高校に行くなといわんばかりの政策を継続していたことは間違いありません。)、所得制限など設ける必要はなく、累進課税を強化すれば足りることです。

 子どもの教育にかかる費用を公的に負担する、何故、このような当たり前のことに自民党などが反対するのか、教育にカネをかけたくない、受益者負担の思想丸出しなのです。

 収入の少ない家庭であろうと高校までは当然に保障しなければいけないし、格差社会の是正のためには当然の政策です。

②についての不十分さはあったとしても、無駄な公共事業を止めることは当然のことです。

 ダム建設によって潤っていたのは一部のものであって、雇用による恩恵は微々たるものにすぎません。つぎ込まれた多くの税金は、ゼネコンへカネが流れ、そのゼネコンからの献金を通じて、自民党を潤す仕組だったのですから、そのような無駄は徹底的に省くのは当然です。

 しかも、意味のないダムを造っているわけですから、出来上がったものからの経済効果もないでは、造ること自体にも意味がありません。

 ②についてのもう1つの側面は、2009年時では、さらにマニフェストが大きく財源に踏み込んだ場合には、財界が政権交代にゴーサインを出さなかっただろう、徹底的な妨害をしていたであろうということです。

 当時、阿部、福田、麻生内閣と自民党は国民の信頼を失っていました。小泉内閣による構造改革により、格差社会が社会問題となり、自民党は国民の支持を失っていました。

 本来、自民党、民主党による保守二大政党により、構造改革を断行しようとしていた財界にとっては、自民党がダメなら民主党というように交互に政権を担わせることによって、国民の批判をかわしていくことがその狙いでしたが、民主党は鳩山=小沢ラインのもと、突如として福祉政策を主張するにいたり、財界の思惑とは逆行していました。

 小沢氏が社会福祉政策を掲げたのは、選挙目的でアメをばらまくというよりも(これでいうなら、麻生内閣の定額給付金制度の方が明らかにアメをばらまくやり方であり、愚作の象徴です。)、自民党への支持が離反していった原因を十分に把握していたということでもあります

 それでもなお財界が民主党政権にゴーサインを出したのは、

 ①議員定数削減、公務員削減など従来の構造改革路線も踏襲していたこと。
 ②増税(要は法人税増税など)はしないと宣言したこと。
 ③自民党ではもはや構造改革をなしうる能力を失っていたこと。

という事情があったからです。

 2009年時のマニフェストが財源について踏み込めなかった、踏み込まなかったのは以上の事情があったからです。

 その意味では、民主党マニフェストには弱点が含まれていたことも事実です。

 無駄の削減の中に、防衛費の大幅削減が入っていなかったことも問題の1つです。防衛費よりも、庶民の生活を守る方が大切なのですから、防衛費こそ聖域にしてはいけなかったのです。

 そして、財源問題は、やはり累進課税の強化という政策こそ打ち出すべきでした。

 財源問題に行き当たったとき、マニフェストには記載されていなかったとしても、鳩山政権の元で、法人税増税などは、当然に行うべきことでした。問題提起は最低限すべきことでした。

 財界などは、脅迫的に、企業が潰れれば雇用が失われるなどと暴言を吐いていますが、その中身は、海外に生産拠点を移したり、派遣に切り替えたりで、雇用など守る意思は最初からないのですから、そのような脅しに屈する必要はないのです。

財界の描く理想って一体… 構造改革路線に未来はない

 しかも、そのような格差社会是正のための累進課税強化には多くの国民が反対するはずもありません。

 あの米国ですら、大統領選挙の結果は、カネ持ち優遇を拒否しているのです。

金権代表ロムニー氏の敗北と民主党マニフェストの全面謝罪?」

 このように見てくれば、2009年時のマニフェストが問題ということではなく、さらに発展させることこそ求められていたものです。

 マニフェスト、特に福祉政策に対して鳩山政権が固執したとき、財界、そしてその意を受けたマスコミによって鳩山政権は打倒されたのです。

 2009年時のマニフェストが根本から間違っていたとかというものではなく、その中の福祉政策を敵視された結果であって、あのマニフェスト自体を選挙目的の大風呂敷だと批判するのは誤りです。

 国民は、窮乏生活の中で、当然の要求をあのマニフェストに見出していたのです。選挙目当てだという批判は当てはまらないというべきです

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