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【読書感想】半グレ ―反社会勢力の実像

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半グレ ―反社会勢力の実像― (新潮新書)
作者:NHKスペシャル取材班
発売日: 2020/12/17
メディア: 新書




Kindle版もあります。

半グレ―反社会勢力の実像―(新潮新書)
作者:NHKスペシャル取材班
発売日: 2020/12/17
メディア: Kindle版

内容(「BOOK」データベースより)
「自分はきっちりやっていたから、絶対に捕まらない」。暴力団のように、特定の事務所を持たず、常に離合集散を繰り返し、犯罪ごとにメンバーが入れ替わる。時には一般人として普通に暮らし、必要に応じて犯罪に手を染める。暴対法を潜り抜ける“つかみどころのない悪”半グレとは何か。その正体に迫るため、成立から具体的事件まで、当事者の肉声を基に炙り出す―。「NHKスペシャル」待望の書籍化!!

 僕自身の「半グレ」に対する知識は、2010年11月に起こった「市川海老蔵さん殴打事件」から、あまりアップデートされていないような気がします。あの事件にしても、「海老蔵さんも夜の街でけっこう遊んでいたみたいだしな……」という印象もあって、夜の街を飲み歩く機会がほとんどない(なくなった)僕にとっては、半グレにはあまり縁がない存在だと思い込んでいたのです。海老蔵さんの事件も思い出すのは、「灰皿テキーラ」とか、ワイドショー的な話ばかり。

 この本を読むと、暴力団などの反社会的勢力への取り締まりが厳しくなった一方で、「半グレ」というのは、その勢力を強めてきているようなのです。
 警察などの公権力が介入しようとすると「われわれは一般人だから」とすり抜け、一般人に対しては、暴力やお金を匂わせたり、さまざまな心理的な圧力も駆使したりして、自分たちの「力」を見せつける。

 第1章では、こんな事件が紹介されています。

「女性を”モノ”としか見ていなかったですね」
 ──男子大学生は、表情を変えることなく淡々と語った。

<祇園の半グレ、通称「スパイラル」摘発>

 2019年1月、平日の夜に京都府警警察本部から逮捕事案の一報が入った。
 男子大学生らが女性たちを風俗店に斡旋したとして、職業安定法違反で摘発されたというものだった。逮捕されたのは京都の有名大学に通う学生たち。恋愛関係にあると信じ込ませた女性を、拠点にしていた祇園の会員制バーに誘い込み、高額な酒をツケで注文させ、借金を背負わせていたのである。そして、その返済のためとして、女性たちを大阪や滋賀など関西各地の風俗店に斡旋、その人数は、2018年11月までの1年あまりに、のべ262人に上り、約7300万円ものカネを得ていた。

 大学生らは20人ほどのグループで活動し、創設者の男たちによって統率されていた。
 京都府警は彼らを半グレとして捜査し、約1か月にわたってメンバーが次々と逮捕された。京都の有名大学の学生らが、うその恋愛で女性に好意を抱かせて反抗に及んでいた手口から、新聞やテレビをはじめ、週刊誌でも話題となった事件である。

 この本のもとになった番組では、「スパイラル」の元メンバーへの取材が行われ、この本にも収められています。どんなひどいヤツなのかと思いきや、清潔感のある「イケメン」だったのだとか。まあ、だからこそ女性も引っかかりやすいのでしょうけど、毎日250人近くの女性に声をかけつづけ、連絡先を聞けるのは5人くらい、というような話や、この「ビジネス」の先輩たちのリッチな生活ぶりに憧れたり、同僚と助け合ったりして頑張っていた、なんていうのを聞くと、「そんな良い大学を出て、頑張れる才能もあるのに、なんでその使い方を間違ったんだ、というか、人を傷つけるために使ってしまうんだ……」と思わずにはいられなくなるのです。
 
 こんなのに引っかかる女性にも隙があったのでは……とも、やっぱり感じたんですよ。でも、彼らが使っていた「マニュアル」の話を読むと、「大学に入ったばかりの、人生経験にも乏しい若者が、こんなふうにカッコいい男に言い寄られたら、引っかかってしまうのも無理はないよな……」とも思ったのです。

 グループには、女性を斡旋するための手口を記した、数種類のマニュアルが存在していた。

 今回、取材でいくつかを入手することができた。全部で約140ページにもなり、元メンバーAが語った、女性への声かけ方法や”お金の教育”、風俗店への誘導方法などが書かれていた。「覚えることで誰でも一定のレベルまでいく」とまであり、いかに女性を取り込んでいくか自信満々の筆致で書かれていた。

 まず、女性との距離を近づける方法が解説されていた。
 目についたのは、「ストックスピール」という言葉。調べてみると、「誰にでも当てはまることを、相手のことをあたかも言い当てたかのように提示する技術」のことで、「コールドリーディング」の一種のようだった。相手の信頼を短時間で得る話術とされていて、詐欺師の手口になっているといわれる。

 マニュアルの原文を、一部誤字を修正した上で紹介する。

「例 過去に男関係で、けっこう酷い裏切り方されたことあるんちゃうかな。それもあって、男の人と付き合うのに臆病になってるんちゃうかな」

「例 〇〇ちゃんって、しっかりしてるから、周りにだけじゃなくて自分に対しても厳しいとこあるよね」

 広い意味でとらえると、誰にでも心当たりのあることを、さも言い当てているかのように質問を投げかける手法だ。
 例えば2つ目の例文では、「自分に対して厳しい」と指摘されたことに、女性が「自分には甘い」と否定した場合、それ自体が自分に厳しいということにもなる。「ほら、厳しいやん」という流れにもっていき、言い当てたように思わせるのである。

 マニュアルには、ほかにも例文と解説が記されていて、このテクニックを駆使し、「自分のことをわかってくれている人だ」と女性に思わせる「ヒット」を重ねることで、信用させていくとあった。

 興味本位とか、しつこいナンパに断り切れずに連絡先を教えてしまったが最後、こういう「テクニック」を駆使して、彼らは女性を落としにかかってくるのです。
 この本のなかで、被害女性のひとりが、人間不信におちいり、人前に出るのが怖くなった、人生をめちゃくちゃにされてしまった、と告発しているのですが、加害側のメンバーの「罪の意識」は極めて乏しいように感じました。

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