記事

大物芸能人も続々チャンネルを開設 ユーチューブはテレビから“メディアの王様”の座を奪うか 2021年の論点100 - 中村 竜太郎

 2020年は「大物芸能人ユーチューブ開設元年」、これまでテレビを中心に活躍してきた石橋貴明や手越祐也、宮迫博之ら大物芸能人がユーチューバー・デビューし成功を収めている。

【写真】この記事の写真を見る(6枚)

 一方で、フワちゃんやHIKAKINなどの人気ユーチューバーにはテレビ番組のオファーが殺到、バラエティを中心に活躍の場を広げ認知度は飛躍的に上昇している。ユーチューブ誕生から15年、当初は棲み分けがあって交わることがなかった両者がここにきて活発にクロスオーバー。芸能界に大きな地殻変動が起きている。


とんねるず・石橋貴明もユーチューブに参戦 ©文藝春秋

「ユーチューブ黎明期は、誰でも気軽に自分の遊びや趣味を発信できるものでした。素人が生み出すコンテンツが主体で、HIKAKINやはじめしゃちょーらネットのスターに800万人以上のフォロワーがいようとも『子供だまし』と見下されていたのは事実。娯楽の王座として君臨してきたテレビのクオリティーには及ばないですし、プロと素人は相容れないというのが芸能人の本音でした」(民放プロデューサー)

 闇営業問題でテレビから干された宮迫がユーチューブを始めた際に、明石家さんまがバラエティ番組で「俺らテレビ出る人間、敵はユーチューブやねんで、いま!」と、画面を通じて後輩芸人に危機感を持つよう呼びかけをした。その発言に賛否はあろうとも、旧来の感覚では真っ当だといえる。

芸能人にとっては「都落ち」だったイメージが一変

 これまで様々な事情で芸能人がユーチューブに参入してきたが、やはり都落ちという印象は拭えなかった。テレビやCM、映画などのメインストリームで活躍するのが一流の証で、それを目指して切磋琢磨するのが業界の本道だった。しかし人気芸能人が続々とユーチューブの世界に降臨し、オセロが一気にひっくり返ったような展開になったのである。

 チャンネル登録者の多い芸能人ユーチューバーでいうと、米津玄師(555万人、10月21日現在、以下同)やONE OK ROCK、ARASHI、AKB48らミュージシャン勢が上位にいるが、好きなときにMVが楽しめるという点で同サイトは音楽ファンの動向にマッチしている。また、アーティスト側からすれば多くの宣伝費をかけずに、自分たちの活動が発表できる便利なツールである。

「もはやテレビからヒットが生まれる時代ではない。米津や瑛人、アニメソングもユーチューブから火がついてメジャーとなった。その流れは今後も加速する」(音楽プロデューサー)

 そして、やはり注目なのはテレビから流れてきたタレントだ。

 カジサック、江頭2:50、霜降り明星、ジャルジャルなどお笑い芸人は、ユーチューブと親和性が高い。お笑いのネタや軽妙なフリートークが人気だ。また芸人であっても教育系ユーチューバーとして支持を得ているオリエンタルラジオ中田敦彦やソロキャンパー芸人として再ブレイクしたヒロシなど、持ち味を生かしたコンテンツが注目されている。

人気俳優もユーチューブに参戦

 さらに特筆すべきは俳優の存在。本田翼(215万人)、と佐藤健(196万人)を男女の筆頭に、星野源、菅田将暉、市川海老蔵、川口春奈、柴咲コウ、長谷川京子など錚々たる顔ぶれ、群雄割拠の様相を呈している。

「映画スターがテレビに出演すると電気紙芝居の役者になったとバカにされる時代がありましたが、いまはそれと同じ劇的な変化の真只中にいます。俳優はそこでファンを引きつけ、マーケットを開拓している。人気が出れば、数字を持っているタレントとして新たな仕事が舞い込むし、次の展開も期待できる」(芸能プロダクション経営者)

 だが、いいことばかりではなく、ユーチューブ進出でフォロワーが少なかった場合、「人気がない」「数字を持っていない」という判断が下され、コマーシャルベースの仕事で淘汰されるリスクもある。

 ユーチューブは単純にいうと視聴回数・時間に応じて広告費が支払われる仕組みだが、トップは数億円プレーヤー、成功すれば20代でも1億円稼げる世界である。芸能人がテレビからユーチューブに流れる背景には当然、経済的な事情も。2020年発表の電通「日本の広告費」によると、2019年のインターネット広告費は2兆1048億円で、テレビメディア広告費の1兆8612億円を上回る結果となった。今年はコロナ禍の影響により、さらにインターネット広告費が上昇すると予測されている。

すでにレッドオーシャン状態のユーチューブ

「テレビの制作費は削られ、出演料も抑えられている。しかもコンプライアンス重視が過剰になり、スキャンダル一発で消滅、自由な表現もできない。スポンサーに遠慮せず自分の力でお金が稼げるのなら、ユーチューブは芸能人にとって願ってもない媒体です」(同前)

 だが、多くのファンを抱える芸能人がユーチューブを始めたことで、すでにユーチューブはレッドオーシャン状態だ。

 素人ノリが売りだったユーチューバーは、芸を持つ強者が乗り込んでくることに戦々恐々、「10年後に生き残っているのは1割」(20代ユーチューバー)という。一方で、若者のテレビ離れを憂慮するテレビ局は、フィッシャーズ(652万人)や東海オンエア(555万人)など人気ユーチューバーを番組に積極的に起用するなど、必死だ。

 彼らがテレビに登場することで個人視聴率を稼げると期待し、商品購買層の消費者にリーチするというスポンサー向けの説明も立つからだ。どんどん番組に露出させて、テレビで彼らをブレイクさせようという意図はわかるが、そのなかで芸能界でもスターと認められるユーチューバーが今後出てくるかどうかはわからない。

 2020年は芸能人タグのある新規ユーチューバーが200チャンネルを突破。ユーチューブの特性上、誰でも簡単にお金をかけずにスタートアップできるので、今後も、雪崩を打って芸能人が参加するだろう。なかなか芽が出なかった芸人がユーチューブで突然ブレイクすることもあるだろうし、可能性は広がったといえる。

 実力だけでなく運が大きく左右する、不確実性が高いエンタメの世界。SNSがもたらした大きなうねりのなかで、芸能界もまた混沌の時代に突入した。

(中村 竜太郎/文春ムック 文藝春秋オピニオン 2021年の論点100)

あわせて読みたい

「YouTube」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    清田コロナ不倫 球界も冷たい目

    WEDGE Infinity

  2. 2

    毎日が40億円超減資で中小企業に

    岸慶太

  3. 3

    議員の保身? デジタル化せぬ国会

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  4. 4

    真面目ゆえ命落とすナチス収容所

    紙屋高雪

  5. 5

    急患止めざるを得ない病院の悲鳴

    田中龍作

  6. 6

    コロナ患者受け入れ 条件で断念

    中村ゆきつぐ

  7. 7

    共通テスト 鼻マスクで1人失格に

    ABEMA TIMES

  8. 8

    Amazon書籍レビューは中身より数

    Chikirin

  9. 9

    スピルバーグ氏に見る残酷な一面

    Dain

  10. 10

    五輪判断 どう転んでも政府苦境

    内藤忍

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。