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「適切な」弁護士人口というテーマ

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。

 弁護士ドットコムタイムズが昨年12月に行った法曹養成に関して行った弁護士アンケート(回答者490人)の結果が、新年早々、ネット界隈の弁護士関係者の中で話題となりました。

詳しくはご覧頂ければと思いますが、適切な司法試験合格者数について、全体の約9割は「1500人未満」(「500人以上1000人未満」51.8%、「1000人以上1500人未満」28.6%、「500人未満」10.0%)であったということです。

 この結果が、どの程度弁護士全体の見方を反映しているとみるべきかには、様々な評価があると思いますが、少なくとも「1500未満」約9割、「1500人以上」は1割を切っているという結果自体は、現実的には多くの業界関係者が驚くようなものではないようにみえます。ただそれでも、この問題を改めて捉え直すきっかけとして、こうした統計は意味があるように思えるのです。

 法曹、とりわけ弁護士の人口とつなげた司法試験合格者数の議論の話をすると、いまや「不毛」という人がいます。それは、相変わらず何人でも合格させればいい、という意味で言っている人もいますが、文字通り議論しても結論はでないということで言っている人が多くなっているようにとれます。

 確かに、上記の結果のばらつきが示すように、自らの置かれてといる状況を反映して回答は異なる面もありますし、その根拠とするところも様々です。自分の体感的な経済状況から判断する人もいれば、かかわる分野でのニーズからの必要論をもとにいう人もいる。有り体に言えば、どういう状況の、どういう立場の人にマイクを向けるかで、返って来る答えが全く違う性格のテーマなのです。

 ただ、これを「不毛」といってしまうのであれば、それは弁護士人口の激増政策の議論そのものが引きずっていながら、目をつぶってきた問題ではないのかと思えるのです。それはいってみれば、「必要」と「適切」が不透明に混在し、結び付けられた議論がなされてきたということです。

 そもそも法曹界内の弁護増員論は、社会の「必要」にこたえるためのもの、要は増やさざるを得ないという前提のものでした。日本の社会には弁護士の需要が沢山あるのに、数の不足によって、それに応えられていない。「二割司法」という言葉が言われ、8割の司法機能不全の原因もまた、それに結び付けられた。ところが、その根拠は不透明でした。

 年間3000人合格を導き出したとされる、「フランス並み」の法曹人口5万人目標(対人口比比較)という話も、いかにも諸外国に比べ、日本の法曹人口が「少ない」という印象の中で説得力を持たせようとした話でしたが、資格制度の違いも無視したものでした。

むしろ法科大学院制度導入というシナリオと、そのための「3000人」が先にあったうえでの話と言いたくなるほど、なぜ「フランス並み」か、という突っ込んだ議論がされないまま突き進んだのです。「二割司法」至っては、いまや誰もいわない、当時言われたものはあくまで「感覚的数値」という扱いです(「『合格3000人』に突き進ませたもの」 「『二割司法』の虚実」)。

さらに、この根拠不明の必要性を満たすことだけを、「改革」路線は「適切」「適正」として激増政策を正当化しました。本当の「適切」「適正」とは、本質的な必要性(どこまで、どれだけという、具体的対象に対する)を満たすためと同時に、それが現実的に成り立たつことにとってのものでなければならなかったのです。

 この「改革」のその後は、そのこと失敗が明らかになるプロセスであったようにみえます。増員必要性が、まず、勢いをもった「べき」論によって語られ、量産された弁護士によって、それを支えるだけの有償需要が生まれるのか、それが弁護士の採算性だけでは支えられず、本当になんとかしなければならない需要であるというならば、現実的にどういう経済的な支えが必要になるのか、そういったことは度外視して駒が進められた結果でした。

 今、前記アンケートで「適切」な数を問われ、少なくともそのことを度外視して回答している人はほとんどいないと思います。しかし、弁護士界内を含めて、今、「改革」の発想が完全に変わったとはいえません。それを支える弁護士の生存、需要の対価性と、前提として必要となる経済基盤。そうした前提のうえに立った、法曹人口の規模を導き出す発想に転換したようにはとても見えないのです。

 当時の司法制度改革審議会での議論でも、委員から出た需要の検証や段階的増員というニュアンスの「3000人」慎重論を振りきって、激増路線を前記した発想で推し進めたのは、弁護士委員であったという皮肉な現実があります(前出(「『合格3000人』に突き進ませたもの」)。

いまや前記アンケートでは、20年後の弁護士人口の水準について、6割以上が「4万人未満」として、規模として今よりも弁護士が必要とされ、かつ生存できる未来を描いていません。この現実を直視するのか、それとも過去の発想にしがみき、それを信じ続けるのか。それが問いかけられているように思えてなりません。

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