記事

特集:バイデン次期政権、苦難の助走

1/2

2021年の最初の1週間は、「日本は緊急事態宣言、米国は首都が非常事態」というとんでもない始まりとなりました。本号では米国政治の方を取り上げますが、1月20日に船出するはずのバイデン政権にとっては、苦渋に満ちた助走期間ということになります。いや、まさか米国議会に暴徒が乱入する場面を見ることになろうとは。死傷者も出てしまい、米国民主主義の歴史における痛恨の1ページということになりました。

問題は今後のバイデン政権の行方です。今週行われたジョージア州上院決選投票では、民主党が望外の「2勝0敗」となり、「疑似トリプルブルー」に手が届きそうです。とはいえ、「50対50」の上院運営はけっして楽なことではないでしょう。今週1週間の経緯を振り返りつつ、バイデン次期政権の前途を考えてみました。

●今年の”TheTop Risk”にされたバイデン氏(1/4)

毎年恒例、ユーラシアグループの”Top Risks 2021”は、今年は1月4日(月)に公表された1。2021年のラインナップは以下の通りである。

1.46* (第46代バイデン大統領)
2.Long Covid (長引く新型コロナ)
3.Climate: net zero meets G-Zero(排出ゼロも世界はGゼロ)
4.US-China tensions broaden (米中関係の緊張広がる)
5.Global data reckoning(グローバルデータの落日)
6.Cyber tipping point (サイバーの転換点)
7.(Out in the) cold Turkey(冷え込むトルコ)
8.Middle East: low oil takes a toll (中東:低い油価は犠牲を伴う)
9.Europe after Merkel(メルケルなき後の欧州)
10.Latin America disappoints (ラ米の失望)

リスクもどき:トランプのお友達は窮地に?米テック企業への反発、米イラン関係

冒頭の「46*」がいつもながらお見事である。「46」は合衆国第46代大統領のことを指しているのだが、それには「*」(アスタリスク)がついている。いわか「注釈つき」であって、「ホワイトハウスの新たな主は、米国民の半分近くから不法な存在と見られている」ことを指している。もちろんご当人のバイデン氏は、そんなことは百も承知であろう。

そもそもトランプ政権に対し、イアン・ブレマー氏の読みは何度も外れてきた。2016年のTop Risksでは、「米国有権者はイスラム教徒に国を閉ざすような指導者を選出しない」と言っていたし、2017年は「トランプ政権が発足しても、国内政策は議会が睨みを効かすだろう」、2018年も「中間選挙で大敗するかもしれない」などと言っていた。要するに3年連続で、トランプ氏はRed herrings(リスクもどき)扱いだった。

それが昨年のTopRisksでは、第1位がRigged!: Who governs the US?(米大統領選の不正)ということになった。トランプ人気がこれだけ続くと、メディア情報などに一切耳を傾けない支持者ができてしまい、彼らは選挙システム自体を疑うようになってしまう。これでは民主主義が機能しなくなる。その結果がどうなるかといえば、今週のワシントンではあわやクーデター寸前という姿をさらけ出してしまった。

今年の第1位「46*」は、そうなった理由として以下のような認識を示している。

民主党は日に日に大学教育を受けた都市住民の連合体となりつつあり、トランプ人気の広がりが彼らにとっての挑戦となっている。彼は2016年選挙に比して1100万票も多く獲得しており、ヒスパニックや黒人も含めて、今までより広い層に浸透している。その多くはトランプが敗北を認めないことは勇気の印であって、民主主義への冒涜ではないと見なしている。

共和党の多くの長老たちはトランプを嫌っているが、彼は最も人気と影響力がある共和党の大物として政界を去ろうとしている。選挙認証を土壇場で延期、または脱線させようとする議員たちのプッシュは、これから起こることの前兆となるだろう。トランプ支持者のかなりの部分が忠誠であり続ける限り、彼は共和党の指導者への影響力を維持するだろう。彼らにとって、バイデンは#NotMyPresidentであり、違法と見なされる。

個人的には、今回の1月6日の混乱はこれまで続いてきた「トランプ劇場」の掉尾を飾るフィナーレであって欲しい。ただし、間もなくホワイトハウスを去る大統領としては、トランプ氏が異常なほどの熱気を維持していることも否定しがたい事実であろう。

●GA州決戦は望外の「民主2勝0敗」に(1/5)

1月5日(火)は注目のジョージア州上院決選投票であった。昨年からずっと言われ続けてきた通り、①民主党の2勝0敗、②民主党1勝&共和党1勝、③共和党の2勝0敗という3通りの可能性があった。

普通に考えれば2つの選挙の現職はいずれも共和党であり、ジョージア州は南部のレッドステーツということになっている。2020年選挙でバイデン氏が僅差でトランプ氏を破ったとはいえ、地方選挙には国政とは違う別のロジックが働く。「反トランプ票」に期待することも難しい。ゆえに確率は低いけれども、「2勝0敗なら上院が50対50になる」(上院が事実上の民主党支配となる!)ということで、民主党側は莫大な選挙資金を投入していた。

2つの選挙がいかに接戦であったかは以下の通り。どちらも1%程度の差しかない

○Georgia Senate Runoff Election Results(The New York Times)

民主党側からすれば「望外の勝利」だが、共和党側から見れば限りなく「トランプ大統領によるオウンゴール」である。

まず昨年末に追加コロナ対策が議会で可決された際に、大統領が「給付金は1人600ドルではなく、2000ドルであるべき」とサインを渋ったことである。元より民主党側は給付金の増額には賛成である。下院民主党は急きょ「2000ドルの追加配布」法案を可決する。それを財政規律を重んじる上院共和党が蹴飛ばして、元通り給付金は600ドルということになり、政府閉鎖を恐れたトランプ氏が土壇場でサインをして追加対策は成立した。

この結果、民主党側はGA州選挙において「民主党が勝てば、1人2000ドルの給付金が出ます」というアピールができるようになった。これは政党としても有権者としても、文字通り「おいしい話」であっただろう。

さらにひどかったのは、投票日の直前になってトランプ氏がGA州の選挙事務を統括する州務長官に対し、票の再集計を通じて自身の敗北を覆すよう電話で圧力をかけていたことが報じられた。約1時間の電話内容はそのままネット上で公開されており、トランプ氏は選挙で不正があったとの説を繰り返し、「私が望むのは(バイデン氏との差である)1万1780票を見つけることだけだ」と言っている。大統領の応援演説が、2人の上院議員候補にプラスに働いたかどうかは大いに疑わしい。

議会共和党としては、この結果を受けて上院における多数党の地位を失い、ミッチ・マコーネル院内総務は”Majority Leader”から”Minolity Leader”に転落してしまう。「まったく余計なことをしやがって...」というのが執行部の受け止め方であろう。

しかし今回のワシントンの騒動を見ても、大統領の動員力はいささかも衰えてはおらず、共和党が限りなく「トランプ私党」になっている現状では、個々の議員の受け止め方はやや違う。2年後の中間選挙を意識する下院議員の中には、「トランプ命」の人も少なくなさそうだ。親トランプか、脱トランプか。共和党内の亀裂は深い

あわせて読みたい

「アメリカ大統領選」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    給付金2回目求める声殺到に衝撃

    BLOGOS しらべる部

  2. 2

    トヨタ Apple車参入で下請けに?

    大関暁夫

  3. 3

    テレ東が報ステ視聴者奪う可能性

    NEWSポストセブン

  4. 4

    陽性率が低下 宣言2週間で効果か

    中村ゆきつぐ

  5. 5

    マスク拒否の男 逮捕時は大暴れ

    文春オンライン

  6. 6

    米国に課された多様性との融合

    松田公太

  7. 7

    慰安婦判決 文政権はなぜ弱腰に

    文春オンライン

  8. 8

    秋葉原メイドカフェはバブル状態

    文春オンライン

  9. 9

    若者からの感染波及説は本当か

    青山まさゆき

  10. 10

    鈴木拓300万円使うもYouTube挫折

    SmartFLASH

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。