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総選挙の争点4 安倍自民党の公約「集団的自衛権」で日本の国防軍はアメリカの戦争に参戦する

安倍自民党は2012年11月21日、衆院選の政権公約を発表しました。

その中の外交・安全保障分野では、憲法改悪によって自衛隊を「国防軍」として位置づけるほか、海外での武力行使を可能とする集団的自衛権の行使を盛り込んだ「国家安全保障基本法」の制定を明記するとしています。

また、外交では、官邸の司令塔機能を強化するとして米国にならって国家安全保障会議(NSC)を設置するほか、自衛隊の人員・予算の拡充や、領海・領土問題では、領海の警備強化と尖閣諸島への公務員の常駐で現状変更することを公約としてはっきり打ち出しました。

この中で、集団的自衛権の行使とは、日本が外国から侵略や攻撃を受けたときの「自衛」の話ではなく、軍事同盟を結んでいる相手の国=アメリカ合衆国が攻撃を受けたとして戦争をする時に、共同で戦争行為に参加することです。

集団的自衛権の行使について、公約の原案では「一部を行使可能にする」と書かれていましたが、安倍総裁が「行使を可能」とするなどさらに中身を強めました。

ところで、今の日本国憲法第9条は、

「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」

と戦争放棄を規定しています。そのため政府の内閣法制局も、国連憲章で認められている一定の限度での集団的自衛権は保有しているけれども、日本はその行使は憲法上許されないと述べてきました。

私は9条を変える必要はないと思っていますが、憲法9条についてはいろいろな意見があり、自衛隊を軍隊にすることに賛成の方も多いかもしれません。しかし、9条を変更して自衛隊を軍隊として正式に認めるということと、集団的自衛権の行使を認めるということは、質的に全く異なる事柄です。

安倍晋三自民党新総裁誕生暗黒の騎士(岸)再び

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自民党の憲法改正草案では第9条の2「国防軍」の第3項で

「国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる」

と規定しています。この「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」という部分に、、湾岸戦争やアフガニスタンのように国連安保理決議があることが要件になっていません。そうすると、日本の唯一の同盟国であるアメリカと協調して行われる軍事行動に参加することができるということになるでしょう。

自民党のトンデモ改憲原案はもはや「憲法」とは言えないこの国にはまともな政党はないのか

 

集団自衛権の行使を真正面から認めるということは、日本の防衛とは何らかかわりのない戦争に日本が参加するということを意味します。たとえば、アフガニスタンのアメリカ軍がタリバンに攻撃されても、イラクのアメリカ軍がアルカイーダに攻撃されても、アメリカが自衛のために相手を攻撃するといえば、日本は参加することになります。地域限定がないのです。

アメリカのように地球全体に軍隊を派兵している国と同盟を結んでいる日本が、集団的自衛権を行使することになったら、世界のどこの戦争に参戦するかわからないことになります。

日本の防衛と全く関係ない戦争に、しかも、地球の裏側でも参戦することになる。これが集団的自衛権の行使を認めることと、自衛隊を軍隊にするだけとはまるで違うという部分です。

イラク戦争の場合を考えてみましょう。

あれも、ブッシュ大統領は、3・11テロに対する自衛戦争だと言って、イラクへの攻撃を開始しました。2001年当時の小泉首相は、

「日米が一緒に行動していて、米軍が攻撃を受けた場合、日本がなにもしないということが果たして本当にできるのか」

と発言し、集団的自衛権の行使について検討すると表明し、問題になりました。しかし、小渕内閣が1999年に成立させたアメリカの軍事介入に自衛隊を参加させるガイドライン法でさえも、憲法9条があるため、自衛隊の活動は「後方地域支援」に限るとされていました。

そこで、小泉首相は「自衛隊のいる場所が非戦闘地域」という珍答弁のもと、自衛隊を派兵はしたもの、自衛隊をイラク戦争の戦闘行為に投入することはできませんでした。

ちなみに、この自衛隊のイラク派兵も名古屋高裁で違憲判決が出ています。

 ところが、小泉内閣で官房長官だった安倍氏は自民党の中でも最も軍事優先のタカ派ですから、改憲前に、政府の憲法解釈の変更を目指しているのです。

私はありとあらゆる戦争がそうだと思いますが、イラク戦争は特に大義なき戦争でした。3・11テロを仕掛けたタリバンどころか、アルカイーダも当時のイラクにはいませんでした。戦争後の混乱で入ってきたのです。つまり、イラク戦争は3・11テロに対する報復にさえなっていなかったのです。

まして、テロの攻撃が終わってから仕掛けた戦争ですから、もう「自衛」戦争として正当化できるようなものではありません。

そして、ブッシュ大統領が戦争開始の大義名分とした大量破壊兵器はイラクにはありませんでした。この戦争で10万人単位の方がなくなり、100万人単位の方が難民になりました。アメリカ軍などによる収容所などでの捕虜虐待も大問題になりました。

今回、安倍自民党が集団的自衛権を行使を盛り込んだ「国家安全保障基本法」を制定するというのは、まだ、日本国憲法9条が健在なのにそれに違反する法律を作って、先に集団的自衛権を行使できるようにして、自衛隊のまま、あんなイラク戦争にも参戦できるようにしてしまうのですから言語道断です。

自衛隊の人たちだって、PKOならともかく、地球の裏側で戦争することまで覚悟していません。

安倍氏は首相時代に集団的自衛権の行使を可能にするために有識者懇談会を立ち上げました。しかし、この懇談会はその報告書を安倍首相に提出する前に、安倍氏が辞任し、事なきを得たのが集団的自衛権の行使の問題です。

このような安倍氏のアメリカ従属ぶりは、ブッシュのポチと呼ばれた小泉氏と並んで、歴代の首相の中でも群を抜いていました。

辞め方からしてそうで、2007年9月12日、安倍首相は、政権を投げ出して、突然退陣を表明しましたが、きわめて短い会見の中で、安倍氏は「テロとの戦い」という言葉を5回も使用したのです。首相を辞任した最大の理由が、11月1日に期限の切れる「テロ対策特別措置法」の延長が不可能になったことにあったからです。

安倍総理は、9月8日にシドニーでブッシュ大統領と日米首脳会談を行い、「テロ対策特別措置法」の延長に全力を尽くすことを約束しました。そして、翌9日の記者会見で、ブッシュ大統領に対して約束したのだから、、「テロ対策特別措置法」延長は「国際的な公約」となったのであり、自分は「職を賭して」、この公約を実現する、と表明したのです。

しかし、参議院選挙に勝利し最大野党で他の野党と連携すれば過半数となる民主党の代表小沢一郎氏は、参院選直後から、「テロ対策特別措置法」の延長に反対することを、繰り返し表明していました。

民主党が協力しなければ、国会の会期から言っても、、「テロ対策特別措置法」の延長は不可能です。ですから、所信表明演説をすでに行い、代表質問がはじまるという12日に、安倍氏は突然小沢氏に党首会談を申し込み、それを断られたからと言って政権を投げ出したわけです。

今では病気だったと言っていますが、だったら所信表明演説をするべきではありませんでした。

なぜ安倍総理は辞めたのか、および、ネットウヨクによる安倍自民党総裁押しが気色悪い件

安倍首相の前回の辞め方は、国民に対する首相と責任より、アメリカのブッシュ大統領との約束を重視しての、突然の辞任騒動だったのです。そして、今回の選挙公約でも、さりげなく、民主党が2010年1月に打ち切った海上自衛隊によるインド洋での給油活動の再開も掲げています。もう気分は、日本の総理というより、アメリカによる日本という植民地支配の植民地総督です。

自民党の憲法「改正」では憲法改正の発議要件の緩和を明記して、一回だけでなく何回でも憲法を改悪する構えです。一回、改憲を許したらとめどもないことになります。

さらに国旗国歌法では足らずに、憲法に「国旗は日章旗、国歌は君が代」と記載することまで選挙公約にしている国粋ぶりなのですが、そんなこと、今の国民にとっては不要不急のことでしょう。自民党の憲法案の9条規定には軍法会議規定まであります。「国防軍」「集団的自衛権」とあわせてみれば、戦争放棄どころかもう軍国主義ですよ。

アメリカの方ばかり向いて、日本国民を戦争に巻き込む危険をかえりみない安倍氏を、本当に日本の総理にもう一回するんですか、皆さん。

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