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成人式には行かないで

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美容院や呉服店にとっては年に一度の稼ぎどきなのだ。経済を回さなければいけない。そんな賢しらな大人の言葉を聞いたことがあるかもしれません。

もし、みなさんが「経済を回すこと」に関心があるのなら、とてもよい心がけです。ぜひ、じゃんじゃん回してください。美容院にいって髪をセットしてもらい、着物を新調してください。写真館に行って、記念写真をとってもよいでしょう。そうすれば経済は回せます。群れを作らないと経済が回らない、というのは想像力を失い、過去の自分の体験でしかものを語れない、ぼくのようなじーさんやばーさんの発想です。想像力豊かなみなさんなら、群れなくてもできる「経済を回す」方法をいくらでも思いつくことでしょう。

今日は1月10日だ。予定はもう立てている。もう決まったことなんだから、今更キャンセルなんてできない。そういう声も聞こえてきそうです。

でも、今からでも十分に間に合います。危機的な状況下では、瞬時の判断変更、方針転換は大事だし、必要なのです。

僕が心から敬愛するサッカー選手に、アンドレス・イニエスタというスペイン人がいます。世界最高の選手の一人です。神戸でプレーする彼の長所は山程ありますが、識者によると、特に素晴らしいのは「最後の最後で判断を変えることができる」ことなのだそうです。

普通のプレーヤーは、右にボールを蹴ろうと思ったら、そういうふうにしか体を動かせません。ところが、イニエスタ選手はギリギリの蹴る直前に、「いや、別なプレーのほうが良い判断だな」と考え直し、ドリブルをしたり、別のプレーに切り替えるのです。ギリギリのタイミングでの判断ですので、敵方の選手たちは対応できません。

ぼくは去年の2月にダイヤモンド・プリンセス号というクルーズ船に入ったことがあります。そのとき、ある厚労省の官僚に感染対策の不備を指摘したのですが、彼は不満そうな顔でぼくにこう言いました。「だってもう、決めたことだから」。

もう決めたのだから、判断は変えられない。それは危機管理の考え方としては間違っているのです。いついかなるときでも、「決めたこと」の方針転換ができる、より正しい判断で危機を回避する。本来であればこれこそが「大人」のとるべき判断だと僕は思うのですが、非常に残念なことに日本の感染対策は必ずしもそうなっていない、と申し上げざるを得ません。

ぼくがネットで調べたところによると、日本の成人式は1949年にできた比較的新しい習慣で、1月にやる必然性もとくにないのだそうです。ですから、もっと感染症が下火になり、比較的安全な状態を待ってから成人式を行うことだってできるのです。「もう決めたこと」と決めつけずに、ちょっと延期したってバチは当たりません。一生一度の成人式、是非後悔のない、何十年たっても楽しく振り返ることができる式にしていただきたいと、心の底から願っています。

最後になりましたが、成人される皆さんに心からお祝いの言葉を申し上げます。そして、皆さんの前途にある社会が、世界が、未来が、いまよりずっとましなものでありますよう、お祈り申し上げます。

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