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内容が不十分すぎる緊急事態宣言

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、菅首相は昨日、首都圏の1都3県に本日から来月7日までを期間とした緊急事態宣言を発令しました。今回の対策の柱は飲食店に対する営業時間短縮の要請で、小中高校の一斉休校や音楽・スポーツイベントなどの中止・延期は要請されていません。

緊急事態宣言の発令自体は我々が強く求めていたことなので当然と考えますが、昨日は東京都でこれまでを大幅に上回る2447人(本日は2392人)、全国では7570人が感染した事態の重大さを考えると、内容的には多くの点で不十分と考えざるを得ません。

対象地域拡大は時間の問題

まず対象地域ですが、大阪府や愛知県など20都府県で新規感染が過去最多を更新したことから首都圏だけでは不十分なのは明白です。関西圏や中京圏の府県、さらに福岡県などの大都市圏を筆頭に対象地域を拡大するのは当然です。感染が鎮静化しつつあるとの指摘がある北海道に関しても再度拡大の傾向が見られたら対象地域に入れるのは当然で、ここ数日間の全国での感染の推移を見れば、全国が対象地域になるのは時間の問題ではないかと考えます。

財政支援を躊躇するほど緊急事態宣言の効果が薄れる

次に要請を行う業種・時間・協力金なのですが、一言で言えば政府が財政支援を躊躇っている結果、中途半端になっているのは非合理的としか言いようがありません。自粛対象(関連)事業者への財政支援が少なくなれば、経済規制が緩くなる(あるいは自粛要請に従わない店が増える)ので緊急事態宣言の効果が減少するか、あるいはほとんどの飲食店が自粛に従ったとしてもやっていけなくなって多くの飲食店が倒産するケースが考えられます。

時短ではなく夜間休業が筋

では、具体的に見ていきましょう。まず、時間に関していえば、「緊急」事態宣言をしたのに午後8時までの時短要請しかしないのはおかしいと言わざるを得ません。感染防止の徹底を考えるならば、(持ち帰りやデリバリーを除く)夜の営業に関して、何故、休業ではなく時短なのでしょうか?

規模に比例した協力金支給が無いのはおかしい

協力金の金額に関しては、時短に協力した場合は一店舗当たり一日6万円となるようですが、規模に応じた上乗せが行われないのは馬鹿げています。典型的なレストランの夜の営業時間帯が夜の6時から10時、客の平均滞在時間が2時間だとすると、夜8時までの営業になった場合には1回転しかできません。

さらに、緊急事態宣言が発出されており酒類の提供も夜7時までだとしたら、6時から8時の間だとしても来客数はかなり少なくなるでしょう。単に夜の営業の利益が半分になるということはならないはずです。規模が小さく客単価も安い店ならば一日6万の協力金でしのげるでしょうが、客単価が高かったり収容規模が大きい店舗に関しては、やっていけなくなるのは目に見えています。

そして、最初にしわ寄せが来るのがアルバイト従業員で、シフトが入れられなくなって経済的に困窮するアルバイト従業員が続出するのは目に見えています。

協力金が不十分なのに店名公表は横暴

協力金が不十分なのにも関わらず、政府が時短に応じなければ店名などを公表するとしているのはアンフェア―で横暴だとしか言いようがありあません。

半年間何をやってきた?手が回らないという言い訳は成り立たない

ここで、政府が規模に応じた協力金の支給や補償を行わないのは、行政の仕事に余裕がないからだという言い訳をしている人がいます。しかし、これは全く正当化できません。

そもそも、特措法再改正や休業補償など財政支援の拡充の必要性は第一波の時から言われてきたことです。自らがまいた種であるにもかかわらずスキャンダル追及を嫌がる安倍―菅政権は一刻も早く国会を早く閉めることしか頭になく、野党や自民党内からも声が上がっていたにもかかわらず半年以上も要望を無視していました。今さら手が回らないなどとの言い訳は成り立つはずはありません。

緊急事態宣言再発令なのに持続化給付金・家賃支援給付金打ち切りはナンセンス

また、再度緊急事態宣言が発令されるのに、業績が悪化した中小企業を支援する持続化給付金や家賃支援給付金が打ち切られるのはナンセンスとしか言いようがありません。定額の協力金しか支給しないのであれば、せめてこれらは当面の間残しておくべきです。財務省や所轄官庁の経産省は失業者を増やしたいだけなのでしょうか。あえて失業を増やして産業間の労働移動を起こしたいのかもしれませんが、不況時にそのようなことをやるのは自殺行為です。

こないだまで「インバウンド」を増やすために観光業・旅行業・飲食業を煽ってきたのに、コロナ禍になったら衰退産業扱いなのでしょうか。我々は、コロナ禍の間の一時的な労働移動(つまりコロナ禍が終息したら観光業・旅行業・飲食業従事者が元の産業に戻ってこられるような形でする)を政府が支援すべきだと主張してきましたが、それを政府が行っていたらこれらの産業へのダメージも必要となる金銭支援ももっと少なく済んだはずです。

ビジネス往来継続は途上国の労働者を低賃金で労働させるためか?

最後に、緊急事態宣言とは直接関連しませんが、中国や韓国など11カ国・地域との間で合意しているビジネス関係者の往来については一転して、継続する方向だという報道を目にして驚きました。一部報道によるとこれは菅首相の強い意向だとのことで、表向きの理由は「相手国との交渉も必要なため一律に止めるのは困難」とのことです。

これは全く理由になっていません。交渉して説得することなど必要なのでしょうか?往来の一時停止は重大な衛生危機への政府としての当たり前の対応であり、それを理解できないような低レベルの政府など相手にする必要はありません。そもそもどの国がどのように反対しているのでしょうか?

自民党の佐藤正久参議院議員はツイッター上で「政府がビジネストラック等継続の理由の一つが技能実習生。ニーズ元の経産省や農水省の要求が強いようだ」と述べていますが、「ビジネス関係者往来」の目的が発展途上国の若者を低賃金労働者として酷使することであれば、社会的に許されるものでありません。

二兎を追う者は一兎をも得ず

ここまで書いてきて、菅首相(および前任者の安倍前首相)の指導者としてのモラル欠如を再確認させられました。トランプ米大統領ほどではないにしろ、彼らには「全ての国民のために」働くという姿勢・説明責任・人権意識が欠如しているのは明白で、先進民主主義国家の最高権力者としてはふさわしくないと言わざるを得ません。

菅首相には来年度予算と特措法を早く成立させて退陣してほしいというのが偽らざる気持ちですが、首相には「経済」とか「財政」を理由に金銭支援と感染抑止策を緩めるほど、事態が悪化し自らの首を絞める羽目になることだけは理解していただきたいところです。「二兎を追う者は一兎をも得ず」です。

鈴木 しんじ
博士(理学)
日本型大統領制を実現するリベラル新党、
政治団体「社会民主進歩党」代表

党公式サイト
https://sdpp.jp/

感染抑止のために政府が行うべき政策についての緊急提言」を行いました
https://sdpp.jp/news/20201229-2/

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